>  >  > HUSKING BEEが見せた変わらぬ刺激的な才能

『GRIP』から20年、HUSKING BEEの才能は今なお輝いているーー新作『Suolo』レビュー

関連タグ
HUSKING BEE
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 HUSKING BEEが約2年8カ月ぶりとなるオリジナル・アルバム『Suolo』を、12月7日にリリースした。今作は、実に様々な節目や意味をはらんだ一枚になっている。イタリア語で「土」や「土壌」といった意味を持つタイトル『Suolo』。今、ハスキンの3人が踏みしめている「土」、これまで耕してきた「土壌」が詰まった、豊かな今作の成り立ちを探ってみよう。

 2005年に惜しまれながら解散した彼らが、所縁の深いイベント『DEVILOCK NIGHT』のファイナルで歓喜の再結成を果たしたのは2012年のこと。磯部正文(G、Vo)、平林一哉(G、Vo)、工藤哲也(B、Cho)、サポートにlocofrankのTatsuya(Dr)という布陣であった。そして同年の『AIR JAM 2012』で本格的に再始動すると共に、工藤の離脱と、岸野一(B、Cho)と山崎聖之(Dr、Cho)の加入が発表された。リズム隊を実力派の若手で固めた新生ハスキンは、ライブを重ねながら「懐メロ」に留まらない新鮮な魅力を発揮していき、2013年に『SOMA』、2014年に『AMU』と、アルバムもコンスタントにリリースした。このまま進んで行くのだ、と思っていた。

 しかし、2016年2月、岸野と山崎の脱退、工藤の再加入を発表。もちろん、あの3人が揃ったハスキンが再び見られるのだ、という喜びはあったのだが、ちょっぴり複雑な思いも去来した。やはり、元々のメンバーと若手が混じり合うことは難しかったのだろうか、「HUSKING BEE」という世界観は良くも悪くもガッチリと固まってしまっているのだろうか、と。

 そんな中で届いた、ニューアルバムリリースのニュース。公開されたジャケットには、1996年に発表された1stアルバム『GRIP』で自転車に乗っている少年が、父親となり、子どもと自転車に乗っている姿で再起用されていた。そうか、横山健(Hi-STANDARD)がプロデュースし、彼らの名と音を広め、今でもライブで演奏されている名曲が詰まった傑作『GRIP』から20年が経つのか……と思いを馳せてしまった。さらに、今作のリリース前には、その頃からの盟友であり、音楽性こそ違えど、共にシーンを牽引してきたBACK DROP BOMBと全国ツアー。また、今作のゲストには、Tokyo Tanaka(MAN WITH A MISSION)や下村亮介(the chef cooks me)といった、近年の繋がりが見えるアーティストと並んで、全編にわたってドラムを叩いている福田”TDC”忠章(FRONTIER BACKYARD、SCAFULL KING)を筆頭に、「Let We Go」では會田茂一がバンジョーを奏で、極め付けに「Puff」では白川貴善(BACK DROP BOMB、Noshow)とミツハシアツシ(ex.NUKEY PIKES)がボーカルとして参加している。こんなラインナップを見たら、90年代から追いかけているファン(筆者もです)は涙涙に決まっているではないか! でも、こういった一連の流れを鑑みると、やっぱり複雑な思いが去来して……彼らは「あの頃」に回帰する方向性なのだろうか?と。もちろん、それでも嬉しいのだ。嬉しいのだけれど、常に、彼らの代表曲の「新利の風」の如く、常に新しい風を吹かせてきた彼ららしくないような気がして、戸惑ってしまったのだ。

 しかし、そんな戸惑いは、実際に『Suolo』を聴き始めてすぐに吹っ飛んでしまった。「新利の風」が、今作には確かに吹いている。

 シモリョー(下村)のキーボードが後押しし、磯部の歌が艶っぽく聴こえるポップチューン「Suolo」で幕開け。ハスキンらしい疾走感あるビートが、福田“TDC”忠章らしいタイトなプレイによって違った雰囲気に聴こえる「Carry You」。アイゴン(會田)のバンジョーと、磯部と平林の掛け合いボーカルの相乗効果で楽し気な「Let We Go」……と、冒頭から新鮮な楽曲が目白押し。もちろん、あの3人が揃ったこともあって、揺るぎない核も聴こえてくるし、それがあるからこそ、こういった楽曲を生み出すことができたのだろう。そして、原点回帰という想像をいい意味で裏切ったまま、キュートなビートからの変拍子が気持ちいい「Grand Time」、ボーカリスト同士の化学反応が半端ない泣きを生んでいる名曲「Puff」など、特筆すべき楽曲ばかりが続く。

 ドキドキと聴き入りながら思った。「あの頃」の要素が揃っても原点回帰にならないということは、ハスキンの3人も含めて、「あの頃」に活躍していたアーティストが今も刺激的な才能を発揮しているからだ、と。90年代、大きなムーブメントを巻き起こした反動か、00年代になってから疲弊したバンドは多かった。ハスキンもそのひとつだ。しかし、時を経ても才能そのものの輝きが衰えることはなかった。そう考えると、これだけの才能の持ち主たちが肩を組み合ったあのムーブメントは、奇跡のような出来事だったと改めて思う。そして、果たして20年後、彼らのような存在になっている今の若手がいるだろうか?と考えてしまう。今作を聴いて、ぜひ若手には奮起して欲しい。

 みずみずしさの塊だった『GRIP』から20年。その土壌は耕され、豊かな作物(=楽曲)を生み続け、途中で休耕の時期はあったものの、再び様々な人に耕されたことで、味わい深い今作が生み出された。その喜びを噛み締めながら、今後の活躍も見続けていきたい。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

■リリース情報
『Suolo』
発売:2016年12月7日
価格:¥2,500(税抜)
〈収録曲〉
1.Suolo
2.Carry You
3.Let We Go
4.Across The Sensation
5.Invisible Friends
6.Grand Time
7.Spitfire
8.Blue Moon
9.Compass Rose
10.Nonesuch
11.Suffer
12.Puff
13.通りすがりの物語
全13曲収録

■ライブ情報
『Paleosuolo Tour』
1月20日(金) 札幌 BESSIE HALL
Guest:NOT WONK
1月28日(土) 心斎橋 Live House Pangea
Guest:bacho
1月29日(日) 名古屋 池下 CLUB UP SET
Guest:bacho
2月11日(土・祝) 渋谷 TSUTAYA O-WEST
Guest:Tokyo Tanaka(MAN WITH A MISSION)、ミツハシアツシ(ex NUKEY PIKES)、白川貴善(BACK DROP BOMB、Noshow)、下村亮介(the chef cooks me)
2月12日(日) 仙台 FLYING SON
Guest:WATER CLOSET
2月18日(土) 福岡 LIVE HOUSE CB
Guest:BACK DROP BOMB、the PRACTICE
2月19日(日)@広島 4.14
Guest:BACK DROP BOMB

■オフィシャルサイト
http://www.husking-bee.com/

「『GRIP』から20年、HUSKING BEEの才能は今なお輝いているーー新作『Suolo』レビュー」のページです。>の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版