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村尾泰郎の新譜キュレーション 第9回

レナード・コーエン、ニック・ケイヴ、あがた森魚……強烈な個性発するベテラン勢の新作5選

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村尾泰郎
海外
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 ボブ・ディランのノーベル賞受賞が話題を呼ぶなか、今月は強烈な個性を発しながら、独自の世界を生み出してきたベテラン・ミュージシャン達のディープな新作を紹介していこう。

 まずは詩人/作家としての顔も持つカナダのシンガー・ソングライター、レナード・コーエン。ディランより7つ歳上、現在82歳にして現役だ。新作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』は、背中や腰を痛めて一時はレコーディングを中断しながらも、コーエンは医療用のイスに座って歌を吹き込んだ。ストリングスやコーラスに彩られた繊細なメロディーがノワールな雰囲気を醸し出すなか、官能的な歌声は低くしわがれて歌うというより呻くようだ。アルバムからは、今なお苦悩しながら愛を求めて彷徨う男の心象風景が浮かび上がってくる。この宗教的ともいえる深遠な歌の世界は唯一無二だ。

 そんなコーエンの精神性を受け継ぐように、心の闇に向き合ってきたのがニック・ケイヴ。ポスト・パンク・シーンから登場したニックは、時に暴力的なまでに感情を爆発させながら歌ってきた。ニックが率いるニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズの新作『スケルトン・ツリー』は、レコーディング中に息子が事故死するという痛ましい出来事があったことが影響しているのか、全編に渡って静けさが漂っていて内省的。バンドの演奏は抑制されていて、美しいメロディーとニックの深い歌声に引き込まれていく。まるで鎮魂歌のようなアルバムで、本作を作り上げることがニックにとって悲しみと向き合うことだったのかもしれない。痛ましいほどにソウルフルな歌声が胸を打つ。

 4畳半フォークなんて言われていた60年代にデビューしたあがた森魚は、テクノ、タンゴ、ライなど様々な音楽を独自に昇華しながら、時空を超えた“あがた節”を聴かせてきた。新作『近代ロック』では、ワールドスタンダードの鈴木惣一朗がサウンド・プロデュースを担当して15年ぶりに共演。ワールドスタンダードの力強いバンド・サウンドに乗って、あがたのエモーショナルな歌声が力強く飛び出してくる。宮沢賢治へのオマージュがちりばめられた、詩情溢れる歌詞もあがたらしさが全開。鈴木のジェントルで繊細なサウンドとあがたのイノセントな少年性が融合して、ノスタルジックでありながらも、みずみずしい歌を生み出している。

     
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