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星野源、Shiggy Jr.、ACC、GOODWARP…「解像度の高い歌詞」を持つJ-POPたち

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柴那典
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 最近改めて思う。J-POPにおいて歌詞はやっぱりとても重要な要素だ。特にここ数年、日本の音楽シーンにおいては、キラキラしたメロディとダンサブルなビートで、聴いていてウキウキするような高揚感たっぷりのポップソングが一つのトレンドになってきている。で、そういう音楽性であればあるほど、言葉のキャッチ力がとても大事になっていると思う。

 こういう話をすると「共感」とか「わかりやすさ」みたいな尺度でそれを考える人が多いのだけれど、実はポイントはそこじゃない。僕は、歌詞において大事なのは「解像度」だと思っている。同じ符割り、同じ言葉数で、どれだけくっきりと情景や心情を浮かび上がらせることができるか。ぼんやりとした最大公約数的な「わかりやすさ」じゃなくて、ここぞと言うところで、「ああ、これ!」みたいにピンポイントで突き刺さるような表現を繰り出すことができるかがポイントだ。

 というわけで、この記事では、そういうポップソングの歌詞の中でも、「キャッチ力」や「解像度の高さ」を感じたここ最近の楽曲を紹介したい。

星野源「恋」 ――<夫婦を超えていけ>

 まずは紹介もなにも、みんなが知ってる星野源。新曲「恋」は、いろんな意味で彼の本領を発揮したキラーチューンだと思う。サウンドやアレンジについても『YELLOW DANCER』以降の新境地を発揮しているし、TBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のエンディングで披露されている“恋ダンス”がブームを広げていることを含めても、「みんなで踊る」ことがヒットのキーを担る2010年代の状況を象徴していると思う。

 そんな風にいろいろ語ることができる一曲だけれど、やっぱりこの曲のキャッチーさを象徴しているのは<夫婦を超えていけ>というパンチラインだと思うのだ。ドラマの内容にもリンクするし、そこから広がって様々な意味を読み取ることもできる。いろんな恋の関係を肯定しているように受け取れる。使っている言葉自体はとても平易なのに、すごく奥の深い一節だ。そして、その前の<指の交ざり><頬の香り>というフレーズも抜群。それぞれ、たった6文字で親密な二人の関係性を鮮やかに描き出している。

Shiggy Jr.「ホットチリソース」 ――<思い通りにしたい でもそれじゃ物足りない>

 1stアルバム『ALL ABOUT POP』をリリースしたばかりのShiggy Jr.。僕が彼らのことを好きなのは、「ポップ」というものに真っ向から向き合ってるところ。アルバムタイトルもまさにそうなんだけど、実は「ポップでポップなバンド」というバンドのキャッチフレーズが象徴的。そこにもフックがある。「ポップなバンド」というだけじゃありきたりになってしまうところを、同じ言葉を重ねることで、並々ならぬこだわりを伝えてくるわけだ。そういう風に、平易な言葉なのに深さがあることがキャッチ力の秘訣だったりする。

 メジャーデビューシングル表題曲「サマータイムラブ」にもそういうテイストを感じたのだけれど、アルバム収録曲の中では「ホットチリソース」が抜群にいい。シャッフルビートのキュートな曲調に乗せて、Aメロでは真夏のビーチの光景と、そわそわしながら奥手な“君”にモーションかける女の子の “私”の思いを歌う。そしてサビで<もう我慢できない 記録的猛暑日の到来><ホットチリソースみたい 刺激的なキスをしたい>と続ける。そして、次のサビで<思い通りにしたい でもそれじゃ物足りない>と歌う。

 このフレーズ、相当すごいと思うのだ。一見矛盾してるのがいい。恋しさと欲求があふれ出して止まらない、そんな勢いを封じ込めてるフレーズだと思う。

 ちなみに。アルバムの収録曲の中ではシングルになった「Beautiful Life」がどちらかと言うと歌詞の解像度が低く、この「ホットチリソース」と「HOME」が歌詞の解像度が高い曲だと思う。

<酷く落ち込む日には 美味しいものを食べて 少しだけ優しい気持ちになろうよ>(「Beautiful Life」)

<ランチでも行って 一時間だけ 幸せそうにサンドイッチ食べて ベンチに座って 小さく深呼吸をした>(「HOME」)

 二つの歌詞が伝えるモチーフは実は同じだし、文字数もほとんど変わらないんだけど、「HOME」の方がくっきりと情景が伝わる。僕はそういう曲のほうが好き。

Awesome City Club「Don't Think Feel」 ――<リスケばかりで フェルメール展はもう 中吊りが外れてた>

 昨年にメジャーデビューを果たしたAwesome City Clubも、作品を重ねるごとに、ポップスということに真正面から向き合うようになってきているように思う。そのことで、楽曲の描くもの、届けるものがクリアになってきているように思う。

 そのことを強く感じたのが、今年6月のアルバム『Awesome City Tracks 3』に収録された「Don’t Think, Feel」だった。この曲も歌詞に仕掛けがある。PORINはBメロで<会いたいなんて 言わないから 会えないなんて 言わないで>と歌う。誰もが知るように「会えない」「会いたい」というのはJ-POPのシーンにおける最大の紋切り型のワードだ。しかしその前にatagiが歌うAメロがあるから、その気持ちを表現する解像度がぐっと上がる。

 <Last Train 飛び乗った12時半 あくびまじり><やりかけのデスクワークは置いといて 会いに行くよ><リスケばかりで フェルメール展はもう 中吊りが外れてた>

 「やりかけのデスクワーク」「リスケばかり」というのがポイントで、この言葉が出てくることで、たぶん曲の主人公は都内のメディア企業か広告代理店かIT業界あたりで働く恋人同士なんだろうなと思わせる。毎日終電まで働いてるから「会えない」わけだ。そして「フェルメール展」がやってるのは、きっと六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリー。これらのキーワードを用いることから、彼らの曲は今の時代のシティ・ポップ(=都市のポップス)であることが浮かび上がってくる。

 作詞はマツザカタクミといしわたり淳治の共作。いしわたり淳治の巧みなディレクションは、彼らにとっても新境地を開拓する一つの助けになったのではないかと思う。

     
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