POPこそがBiSの直系にして本流だーーカミヤサキ活動休止発表のUNITワンマンを観た

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POP

 そもそも、カミヤサキのもとに集った新メンバー4人、という時点でどこかが面白い。まるで少年漫画のようだ。これはページをめくるのが楽しみな珍道中が始まるぞ……と思っている矢先に事件は起きた。

 8月1日、2日に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」。その初日である8月1日の夜の「FESTIVAL STAGE」で何らかの事案が発生したことによって、POPは翌日8月2日の出演が中止となった。私はその現場を見ていない。ただ、同じく8月1日の日中の「SKY STAGE」でのPOPのライブは、観客の熱気にメンバーが呼応した素晴らしいライブだった。ファンの熱狂がさらに激しかったという「FESTIVAL STAGE」では、POPがファンに呼応しすぎたのだろうか……と想像した。私が知るPOPは極めて真摯なパフォーマーだ。それはイベントの枠内では裏目に出ることもあるだろう。

 なお、初日の夜には、同じ事務所のBiSHの2日目の出演もキャンセルされた。ここでは憶測は書かない。

 それから1週間。8月3日のイヌカイマアヤ生誕祭や、8月4日のPOPのファースト・アルバム「P.O.P」のリリースを経て、代官山UNITでのワンマンライブを迎えることになった。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」でのトラブルはあったが、現場はアルバムのリリース・イベントが盛りあがり、うまく軌道に乗った印象があった。代官山UNITのチケットは見事にソールドアウト。すべてがうまくいっている、と誰もが思っていた。

 会場に入ると、POPは松隈ケンタのサウンド・プロデュースのもとEDMを基調にしているのに、ビゼーの「カルメン組曲第2番 第2曲 ハバネラ」、ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」、そして開演直前にはラヴェルの「ボレロ」と、なぜかクラシックばかりが流されていた。

 1曲目は「UNIT」。プラニメ時代の楽曲ではあるが、代官山UNITのステージに立ったPOPにもふさわしい楽曲だ。肩を組んで歌うメンバーたちに合わせて、フロアのファンたちも肩を組んで揺れていた。「who am I?」からは激しいMIXや多数のリフトが起きて一気に盛りあがる。POPの楽曲の中でも特にポップな「3rd FLOOR BOYFRIEND」では、ファンも大合唱をしていた。まるでアンセムのようだ。クラウドサーフも始まった。

 「Daydream」ではもうリフトの嵐だ。最近はEspeciaのプロデューサーとして活躍するSchtein&Longerが作編曲した「Lonely lonely lonely」では、同じくEDMのSTEREO JAPANの現場から導入された「パーティーピーポー!」という掛け声がフロアに響き、フロアの気温が確実に上昇した。「fly away」や「NEON」では熱いクラップが起き、「Letter」ではオイコールとMIXが続けて起きた。

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POP

 アルバム「P.O.P」の新曲「pretty pretty good」は、松隈ケンタ作曲、井口イチロウ編曲による、EDMとロックが絶妙にブレンドされたサウンドだ。楽曲が始まると、カミヤサキが感情を爆発させるかのように「いくよ!」と叫んだ。この楽曲のサビには、BiSの「nerve」や「primal.」の振り付けが挿入されており、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」のSKY STAGEでの初披露を見たときには、POPこそがBiSの直系にして本流だと確信したものだ。メンバーが他のメンバーをリフトするのも、ファンの行為を取り入れているアイデアがユニークだ。

 そしてプラニメ時代からの代表曲「Plastic 2 mercy」へ。ヤママチミキが不意にカミヤサキに抱きついているのを見た。この「Plastic 2 mercy」は3回繰り返されたのだが、オケがDJミックスのようにつなげられている趣向だった。つまり、絶え間なく3回繰り返されたのだ。2回目の「Plastic 2 mercy」では、プラニメを脱退したミズタマリがフロアでリフトされ、彼女のもとへとカミヤサキがダイヴした。ドラマティックすぎる光景だ。3回目の「Plastic 2 mercy」では、ユメノユアがダイヴして、ステージに戻ると「君が いない未来 見ない未来 ありえない」という歌詞の「ありえない」を叫ぶように歌った。カミヤサキは、スウェットスーツの敗れた部分を笑顔でフロアに投げた。本編はここで終了。12曲ノンストップ構成のステージだった。

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カミヤサキとミズタマリ

 アンコールが沸き起こったが、しかしなかなかメンバーが再登場しない。

 私は本編の最中、メンバーの自己紹介がないことが気になっていた。「3rd FLOOR BOYFRIEND」の間奏中に「キング・オブ・ポジティヴ、POPです」という挨拶はあったが、それだけだ。自己紹介がないことには、2014年7月8日のBiSの解散ライブを連想した。アンコールの最中、微妙な不安を胸に抱えていた。

 本編の終了から15分は経っていただろうか。長く激しいアンコールの声に応え、POPはTシャツに着替えて再登場した。

 そして、まず12月にPOPの初のシングルがリリースされることが発表されて歓声が起きた。

 それに続いたのが、冒頭に書いたカミヤサキの無期限活動休止の発表だった。彼女が明るく話しても、あまりにも突然のことにフロアは静まったままだ。カミヤサキが新メンバーを見ながら、「実際にとても辛い思いをするのはこの4人だと思うんですよね、ぜひこの4人も支えてあげてください」と言うと、彼女の心情をくんだファンから拍手が起きた。カミヤサキが「必ず戻ってきますので、みなさんこれからもPOPをよろしくお願いします!」と叫ぶように言うと、他のメンバーたちは今にも泣き崩れそうだった。ヤママチミキが涙でうまく話せないところで、ようやく会場からは笑いが起きた。彼女が「サキちゃんを一緒に待ってください」と語ると、再び拍手が起きた。

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