TOKIOが20年間貫いたDIY精神 「自作自演の限界」を超え続けたグループ史を辿る

 それにしても圧巻なのは、TOKIOが依然として、いや、ここに来てますます「アーティスト」然としていることである。「アイドル冬の時代」どころか「アイドル戦国時代」(岡島紳士・岡田康宏)と言われる現在、堂々と「アーティスト」でいることはなかなか難しいと感じられる。自己表現すること自体のハードルが下がった一億総「アーティスト」時代は、「アーティスト」の価値を相対的に下げる。お笑い芸人でありミュージシャンでもあるマキタスポーツは、「自作自演の限界」を唱えていたが(TBSラジオ系『東京ポッド許可局』2014年10月18日放送)、このような気分は共感できる。

 そんな現在にあって、TOKIOは堂々と“自作自演”を続ける。メンバーによる作詞作曲も増え、演奏技術も着実に進歩し、本格派ロックバンドとしての存在感を強く示している。そのひとつの到達点が、『SUMMER SONIC 2014』への出演だろう。『サマソニ』でのTOKIOのパフォーマンスは、並居るバンド/アーティストを差し置いて話題をさらった。TOKIOの20周年とは、なによりロックバンドとして迎えられたものだった。20周年を記念して、ファンによる楽曲の人気投票がおこなわれた。「LOVE YOU ONLY」を押さえて1位になったのは、長瀬智也が作詞作曲した「リリック」である。「リリック」は、長いTOKIOのキャリアのなかで、初めて“自作自演”曲がシングルになった記念すべき曲である。ファンもまた、自らの演奏で自らの音楽を奏でるTOKIOを望んでいるのだ。

 家も作るし、畑も作るし、曲も作る。DIY精神に徹底的に貫かれたTOKIOが、“自作自演”というありかたに強い説得力を持たせている。まったくもって、頼もしい存在だ。いつかTOKIOが、手製の楽器を手にすることを夢想してしまう。

(注)「リリック」は初の自作シングル曲ではないのではないか、というご指摘をいただきました。A面シングルとしては、「リリック」以前に「明日を目指して!」がありますが、こちらは編曲に船山基紀氏が大きく関わっているため除外しておりました。補足させていただきます。

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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