京都精華大学大学院デザイン研究科 特別講義
でんぱ組.inc夢眠ねむ×もふくちゃんの大学院講義「アイドルのセルフプロデュース論」レポ
もふく:そのあたりから今のボブになるわけだけど、それはどういう意味があったの? それまではロングだったよね。
夢眠:昔から自分の顔が好きじゃなくて、髪で隠してたんです。当時のでんぱ組.incのメンバーはみんな“黒髪美少女ロング”なのに、私だけ梳いてもいないAラインのロングで、もっさりしてて。「これは私の鎧だ。これじゃだめだ、アイドルになるんだから!」と切ることにしたの。アイドルマスターの萩原雪歩のイラストを見せて「これにしてください!」って。だから最初はカットラインが甘くて、後ろが長い。で、どんどん尖ってきて、今に至る。
もふく:このグループのなかでいかに目立つか考えた結果、ということ?
夢眠:というよりは、覚悟かな。「夢眠ねむとしてやっていこう」「アイコンになろう」という漠然とした目標を作ったわけです。
もふく:アイコン?
夢眠:キティちゃんみたいな。キティちゃんは、何とコラボしていても“キティちゃん”ですよね。私は大学時代、新聞、雑誌、web……といろんな媒体について学んだけれど、自分には乗りこなせないなと思ったんです。何ならうまくできるか考えたとき、自分自身しか思いつかなかった。アイドルになれば、新聞にも雑誌にも載れる、自分が発信源になれるからアイドルを選んだんです。それで、何かの素材になることが媒体として一番広がるんじゃないかと思って。誰かが私を素材に使って何かを作りたいと思えて、そうして生まれた作品に夢眠ねむの要素が残っている、という強さを持たないといけないな、と。
もふく:その「夢眠ねむ感」はどうやって強めたんでしょうか。
夢眠:自分としては「おかっぱ」「ミントグリーン」ですね。ミントグリーンも、最近“ねむきゅん色”って呼んでくれる人が現れはじめてて。
もふく:『魔法少女☆未満』では、衣装から何から自分で作ってやったんだよね。
夢眠:「魔法少女☆未満」というのは、ざっくり言うと、一般人の女の子です(笑)。私には「何にもなれない」というコンプレックスがあったので、「なれないからこそできることがある」というセルフプロデュースです。開き直り力。ジャケットは、18禁ゲームをイメージしました(笑)。
もふく:ディアステの女の子は自分の作品を定期的に作ったり、自分でイベントをプロデュースしたりしていて、それがセルフプロデュース能力を高めている理由かなと思います。
夢眠:それから、私は餅に似ていると言われるので、年賀状で「鏡餅の擬人化」として写真を撮ったりしました。あとは、子供のころ能をやっていたので、『アイドル図鑑』という本で自分の好きなように写真を撮っていいと言われたときに、能舞台で撮らせていただいたこともあった。
もふく:要するに、ねむちゃんが写真などを通じて自分の“色”を定期的に発表することにより「夢眠ねむ感」が強まって、次第に他のアーティストさんやデザイナーさんが「夢眠ねむはこういうことがやりたいんだ」と理解し、実際にやってくれるようになった、ということだよね。「頼まれてもいないのにやっておく」のはセルフプロデュース能力の鍵になると思います。
夢眠:やりたいことを口に出しておくのは大事。自分のやりたいことを言い続けていると、周りの人が助けてくれたりするので。
もふく:そうですね。自分のやりたいことを言い続けたり、誰にもオファーされていなくても自分でコツコツ作品を作ったり、そうした活動の中で「こういう風に見られたい」という方向に持っていく。これはアイドル以外でも応用が効きますね。
夢眠:だって、オファーなんか来ないですよ。誰も知らないんだもん、自分のことなんて。