坂本龍一『スコラ』で日本の伝統音楽を語る「あえて不自由な音にするのは他の国にはない」

 世界的音楽家・坂本龍一を講師に迎え、音楽の真実を時に学究的に、時に体感的に伝えようという『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』(NHK Eテレ)のシーズン4・第5回が、2014年2月6日に放送された。

 「電子音楽」について講義した1学期を終えて、今回から始まる2月期のテーマは「日本の伝統音楽」。ゲスト講師には前回も登場した小沼純一に加え、国立歴史民俗博物館の名誉教授である小島美子、坂本の知人であり音楽プロデューサーの星川京児を含む3名が登場。今回は「日本の伝統音楽の多様性」について講義することに。坂本が「小さな国土だが、音楽としての歴史は長い。日本の文化と音楽は非常に多様化しており、複雑で難しい」と語ると、小沼が「日本は小さいが、北から南まで縦に長い国だ。昔は日本海がなく、アジア大陸と地続きで繋がっていたとされているので、色んな国の文化が入ってきた。それが地域によって独自の発展をしている」と補足した。

 日本の伝統音楽の歴史は、国家成立以前である先史時代、飛鳥~平安時代、鎌倉~安土・桃山の時代、江戸時代に切り分けて考えることが出来る。今回の放送では、旧石器時代など、「先史時代」という分類で分けられる太古の時代の音楽について掘り下げられた。

 様々な地域毎に、長い年月をかけて育んできた音楽が残っており、学者である小泉文夫は、アジアの音楽と日本の音楽の関係性について研究をしていたそうだ。小島はその例として、「北の方だとモンゴルの『オルティンドー(長い歌という意味のモンゴルの民謡)』が北海道の江差追分追分に似たリズムをしており、文化的に接点があったのではないか。南の方だと照葉樹林帯(カシ・クスノキなどの照葉樹林が分布する東アジアの地域)に根付いている、典型的なリズムや旋律に、求愛の歌詞を載せて、男女の掛け合いで歌う文化がある。これは平安時代に行われていた『歌垣』という求愛の儀式に近いものだ」と語った。

 続いて、楽器に関しての話題になったが、先史時代の楽器については、恐らく存在していただろうが、木や皮、竹を使ったものは腐りやすいため、資料として現存するものは少なく、現段階ではそこまで発掘されていないという。ただ、石や土で出来たものなど、考古学的に発掘された楽器らしきものはいくつかあるそうだ。代表的なものとして岩笛(自然に穴の開いた笛)や土笛(縄文、弥生時代に発掘)などが挙げられ、それらは自然的にできたものだという。自然的にできた楽器は、神事や民族の祭事に使われており、「自然によって作られた=神の手によって作られた」というとらえ方をする民族が少なくない。日本における楽器の発祥はそのようなものではないか、と同番組では推測した。

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