ホロライブ・天音かなたの卒業発表に揺れたVTuber業界 『VRChat』定番イベントには赤見かるびの姿も

天音かなたの卒業発表が示すもの
ホロライブ4期生のVTuber・天音かなたが卒業を発表した。12月27日、ちょうど6周年を迎える節目をもって活動にピリオドを打つ。
卒業についてのお知らせ
天音かなた6周年となる2025年12月27日をもちまして、
ホロライブを卒業します。
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。 pic.twitter.com/lvST9dWCrR— 天音かなた💫ホロライブ(12/27卒業) (@amanekanatach) December 2, 2025
これだけならスタンダードなVTuberの卒業情報だが、彼女の発表では特異な要素が見られた。それは「想定外の業務外タスクが何度も発生したこと」「結果、自分の活動が回らないほどの負荷が続いたこと」「それによる心身の負荷から活動継続が難しいと感じたこと」が、卒業理由として明言されたことだ。さらに、数年前から事務所に相談していたものの、改善ができないことも大きな要因だと発表されている。
つまり、本人の事情だけではなく、運営企業であるカバー全体のマネジメントが機能不全に陥っていることが主因であると発言したのだ。これがタレントの口から対外的に大きく発表されたことは、非常に重い事案と言えるだろう。
2025年のホロライブでは卒業の報告が相次いでおり、そのたびにファンコミュニティの間では無視できない動揺が走っている。事業拡大を優先した結果、基盤であるタレントに多大な負荷がかかっている状況は、持続性に欠けていると言わざるを得ない。根本的な解決がされない限り、似たような理由による離脱が増える懸念もあるだろう。
余談だが、天音かなたの発表では、活動復帰だけでなく「転生」、すなわち異なる名義での再始動も明確に否定されている。その事実もそうだが、現役のVTuber(それもトッププレイヤー)から「転生」という言葉が明言されることもかなりめずらしい。様々な意味で、業界全体のターニングポイントとして語り継がれそうな卒業発表だったのでは、というのが筆者の個人的な所感だ。
卒業発表の一方、“移籍”を選ぶVTuberも
非常に大きな卒業発表が界隈を騒がせた一方、4年前に卒業したにじさんじ・鈴原るるのYouTubeチャンネルが突如再公開され、当時を知る人を中心に驚きの声が上がった。
鈴原るるは冠ラジオ番組を持つほどの人気VTuberだったが、一部の人間による攻撃的行為が遠因となって引退に至っており、現在のVTuber業界が力を注ぐ誹謗中傷対策の起点の一つとなった人物だ。突然のチャンネル再公開は公式声明もなく、その上で卒業配信など一部配信は非公開のまま。謎の多い状況である。
笹木咲のケースも加味し、ファンの間では「活動復帰するのでは」との憶測も飛び交ったが、少なくとも先週時点では動きは見られない。一度活動を終えたVTuberの復帰は、前例こそあれど「当たり前」と言えるほどではないのが実情だが、期待したくなる心理も理解できる展開ではある。
では、2025年におけるVTuberが活動の転換を行いたい場合の現実的な手段はなにかと言えば、「独立」か「移籍」だろう。ちょうど先週は、ソニーの「VEE」所属の秋雪こはくが、プロeスポーツチームの「REJECT」へ移籍するニュースがあった。ゲーム実況へと大きく軸足を移すことが見て取れる転換だ。
悪戯狐、降臨!🦊🍁@Syusetu_kohaku pic.twitter.com/n0xSqGUOOX
— REJECT (@RC_REJECT) December 1, 2025
なお、「VEE」は今年の3月に安心院みさが卒業・独立し、その後に「すぺしゃりて」へ所属するというケースも起きている。タレントを縛りすぎず、時には独立という形で送り出していく姿勢が、「VEE」には以前から一定の形で見られている。
赤見かるびが「バーチャルマーケット」先行体験
『VRChat』では12月6日から、イベント『バーチャルマーケット2025 Winter』がスタートした。企業やクリエイターが様々な形式で出展する巨大展示会イベントである。昨年の冬はホロライブから火威青が電撃出展していたが、今年はCrazy Raccoonの赤見かるびが先行体験という形で招かれた。
赤見かるびは以前、『VRChat』プレイ歴は相当長く、インストール日時は7年前であることを明かしており、その一環で自身のオリジナルワールドも発表している。「バーチャルマーケット」の体験動画中でも「何年も前から通ってる」とコメントしており、実際にワールド内のギミックなどに触れる手つきは、なかなかに手慣れたプレイヤーのように見える。
そんな彼女も和気あいあいと楽しんだ今回の企業ブースは、全体的に前のめりな体験がしやすいところが多く、かつ「おみやげ」を用意しているところが多い。記念撮影コーナーが増えているし、特に焼津市は「ネギトロ丼の3Dモデル」、静岡県は「沼津港水門展望施設・びゅうおの玩具風3Dモデル」、サントリーは「ビールやチューハイの缶の3Dモデル」など、ワールドやアバターに組み込める3Dモデルが多く提供されている。
また、一般出展ワールドの中にも記念撮影コーナーを用意するなど、その場だけの体験ではなく、持ち帰るものも用意することで、訪問後の口コミ発生を狙っているような印象を受けた。一部区域はコミュニティイベント向けに開放するなど、一般的な展示会からあり方を変えようとする動きが、今年は特に印象的だ。
「にゃんたじあ!」は『VRChat』活動を本格化?
『バーチャルマーケット2025 Winter』に続き、12月11日は『VRChat』にはサンリオ公式のバーチャルテーマパーク『Virtual Sanrio Puroland』が開園する。ここで看板娘としての活動を予定しているサンリオとClaNのVTuberプロジェクト「にゃんたじあ!」は、12月6日に派生活動「にゃんたVR部」を発表した。
` ˗ˏˋ #にゃんたVR部 活動スタート🐈 ˎˊ˗ ˊ
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦サンリオ×日テレClaNプロデュース『にゃんたじあ!』から、あらたな部活動が始動✨
普段の配信だけでなく、VRでの活躍もお見逃しなく👀詳しくはこちらから.ᐟ.ᐟ
🔗https://t.co/eAxLw9g73M pic.twitter.com/Kj3bdWjoj6— にゃんたじあ!VR部 (@Nyantasia_vr) December 6, 2025
これまで「にゃんたじあ!」は、3Dモデルを獲得したタレントが『VRChat』上でも公に活動を行う動きが見られた。「にゃんたVR部」はその発展型として、「にゃんたじあ!」メンバーが配信だけでなく『VRChat』上での活動にも取り組むものになるという。12月から早速動き始めるようで、今月だけで10以上もの活動を予定しているようだ。グループ機能を活用することから、ファンの参加型企画も行われる可能性がある。
先週の本連載で伝えたように、直近のサンリオは『VRChat』を起点に、バーチャル領域の展開をより一層強めている。その中でも「にゃんたじあ!」は、「企業VTuberのVRChat活動」の先遣隊として動いている印象だ。2025年はホロライブを筆頭に少なくない企業VTuberが『VRChat』に興味を示した中、そのモデルケースになれるかどうかも注目である。





















