ワーナーミュージック・ジャパン 岡田武士CEO×新R25 渡辺将基編集長 対談 デジタル/SNS時代のリーダーに求められる役割とは

2024年12月、ワーナーミュージック・ジャパンの代表取締役社長兼CEOに41歳の若さで就任した岡田武士氏が、さまざまな分野で活躍する新時代のリーダーと対談を行うシリーズ企画がスタート。第1回となる今回は、若きビジネスパーソンのバイブルとして独自の地位を確立するメディア『新R25』編集長・渡辺将基氏(CAM CCO)を迎えた。デジタル/SNS時代のコミュニケーションのあり方から、加熱するアテンション重視の傾向とどのように向かい合っていくべきかなど、同世代の両者が、リーダーとプレイヤーそれぞれの視点から組織と仕事について語り合った。(編集部)
デジタル的なセンスとリアルな“対・人”の感覚

――岡田さん、渡辺さんの交流が始まったきっかけは?
岡田武士(以下、岡田):共通の知人に紹介してもらってお会いしました。
渡辺将基(以下、渡辺):年齢の近い人が集まる場があったんです。岡田さんがワーナーミュージック・ジャパンのCEOに就任することが発表された直後ですよね?
岡田:そうです。そのときの渡辺さんの話がめちゃくちゃ面白かったんですよ。たとえば子供とスマホのこととか。
渡辺:子育ての話ですね。受験の時期になったときに、どうやってスマホ依存から抜けさせるか? という。
岡田:実践的な話で、我々世代のお子さんをお持ちの方は全員知りたいと思うであろうお話でした。渡辺さんのことはもちろん以前から存じ上げていたし、渡辺さんがやってらっしゃる『新R25』もすごく面白くて。ビジネス系のサイトのなかでも特に実用的だし、役に立つんですよね。今のWebメディアはどちらかというと尖ったコンテンツでバズを狙っているものが多い気がしますけど、『新R25』は実になるメディアという印象があります。かゆいところに手が届くと言いますか、すごい戦略だなと。
渡辺:うれしいです。『新R25』は社会を起点にしたコンテンツというよりは、個人を起点にしたものが多いんですよ。社会がどうなるか、世の中のトレンドはどうかというより、個人の悩みをもとにしたコンテンツが多かったり。そこは『新R25』のコンセプトの一つですね。
岡田:そう、“お悩み”から入るんですよね。その人が本当に悩んでいることに対して、専門家の方が答えるフォーマットって、すごく説得力がある。いきなり先生が出てきて持論を述べるよりも響きやすいと思う。
渡辺:つくるコンテンツはスタッフの興味を飛び越えないようにしているんですよね。もっと年齢を重ねれば社会に興味を持つスタッフも出てくると思うんですけど、まだ若いので、今はこれでいいのかなと。“等身大感”を大事にしています。

――渡辺さんは岡田さんに対してどんな印象を持っていますか?
渡辺:デジタルマーケティングで結果を残してきた方なので当然デジタルに強いということがありつつ、人間関係を構築するのが上手だなと思っていて。岡田さん、中学受験して、あとはエスカレーター式だったんですよね?
岡田:そうですね。
渡辺:これは僕の感覚なんですけど、岡田さんのような経歴の人は社会を生き抜くうえで、いちばん強いタイプだと思うんですよ。中学で受験が終わって、あとは学校生活に集中できるという。同級生はもちろん先輩・後輩と過ごした経験が、組織のなかで上手く立ちまわることにつながっているのかなと。年上に対しても後輩に対しても、すごくフラットに接しているというか。
岡田:部活もやっていたし、確かに学生生活の中で人間関係を学んだところがあるかもしれません。
渡辺:デジタルマーケティングのスキルと人間関係構築力のハイブリッドですね。
――デジタル的なセンスとリアルな“対・人”の感覚、オンラインとオフラインのバランスはどんな分野でも大切かもしれないですね。ちなみに『新R25』のスタッフはリモートワークが多いんでしょうか?
渡辺:『新R25』はサイバーエージェント内のプロジェクトなので、会社のルールがありますが、基本的には出社とリモートが半々くらいですね。
岡田:弊社は基本、出社が前提になっています。リモート1日、出社4日くらいの割合ですね。
渡辺:いいですね。この前、「入社してからずっとオンラインで、半年で1回も出社していない」という他社の新入社員の方と話したんですが、個人的には「どうやってチーム作りするのかな」と思っていて。上手くイメージできないんですよね。
岡田:なるほど。
渡辺:以前堀江貴文さんが仰っていたんですけど、簡単に言語化できないものを“ノウハウ”と呼ぶんだと。たしかに深いノウハウは、スタッフと膝を突き合わせて、空気を共有しないと浸透していかないんですよね。それをオンラインだけで共有するのは相当難しいと思います。音楽業界はもっとフィジカルの側面が強いですよね?
岡田:そうだと思います。クリエイティブにしてもマネジメントにしても、人の温度を感じながら仕事をすることが多いし、実際に対面してコミュニケーションを取ることはとても大事だと感じています。
渡辺:僕も毎日会社に行ってるんですよ。こちらからスタッフに対して「毎日会社に来い」とは言えないですけど(笑)、多くの人が「会社に行きたい」と思える場所にしたいとは思っていて。そういう会社は空気もいいじゃないですか。「会社に行きたくない」と思っている人が多い会社で、求心力が高い会社ってあるんでしょうか。
若きリーダーが考える、プレイヤーとマネジメントのバランス

――渡辺さんは今現在もコンテンツ制作に関わっていて、岡田さんもCEOという立場でありながら、現場で活躍し続けている印象があります。プレイヤーとマネジメントのバランスについてはどう考えていますか?
渡辺:岡田さん、社長になってもプレイヤー的な部分を維持してるんですか?
岡田:本当はやらないほうがいいのかもしれないんですけど、やっちゃうんですよ(笑)。たとえばアーティストとの契約交渉の場に行ったり。もちろん現場のスタッフに任せているのですが、僕が行くことで「え、社長なんですか?」と話が進むこともあるので、ここぞというときは行くようにしてますね。
渡辺:戦略的にやっているんですね。僕も以前はスタッフに任せるのが苦手で、どうしてもプレイヤー業務をやりすぎてしまっていたんですけど、40代になって、自然とマネジメントに興味が出てきて。今は組織作りのために使う時間が少し増えたかなと思います。
岡田:そうなんですね。
渡辺:ただ、サイバーエージェントの例でいうと、代表の藤田(晋)も他の役員も、結局いまだにプレイングマネージャーなんですよ。なので僕も「いつまでもプレイヤーでいていい」という感覚があるのかもしれないです。岡田さんもおそらく、プレイヤー的な側面を持ち続けていたほうが信頼されますよね。
岡田:そうだといいですけどね。ただドーンと構えて「こうしてください」と指示するのが苦手というか、「大丈夫かな?」と気になって現場に行ってしまう(笑)。
渡辺:わかります(笑)。
――組織の若手を手を引き上げることも意識していますか?
渡辺:そうですね。今『新R25』はまさにそのテーマに取り組んでいます。最近聞いたMomentor代表・坂井風太さんの話が印象に残っているのですが、たとえば社長が代わるとき、前社長から新社長へ“影響力”を委譲できないのが良くないと。立場だけ渡して、「あいつはダメだ」などと言うのが最悪のパターン。そうじゃなくて、組織全体に見える形で「あいつはすごい」とフックアップするのが大事なんですよね。自分ができているかはわからないですけど、そこは意識しておきたいなと。
岡田:大事ですよね。僕自身も若いときから大きな仕事をさせてもらってきたのですが、ワーナーミュージックでも積極的に若い人を抜擢したり、マネジメントを任せたいですし、それが上手く回っていけば、会社の発展にもつながる。今はその土壌作りの段階ですね。


















