アニメ/ゲーム界の歌姫サラ・オレインが追求する『ゼノブレイド』以降のオルタナティブとは? そして万能型イヤモニ『MA910SR DC』との出会いについて

シンガーでありヴァイオリニスト、さらには自身で作曲までこなすマルチアーティスト、サラ・オレイン。彼女が2025年6月にリリースしたアルバム『ISEKAI - Anime & Video Game Muse』は各所で話題を呼んでいる。文字通りゲームとアニメの名曲がコンパイルされた本作は稀代のディーバの足跡を再確認させ、日本のポップカルチャーにおいていかにゲーム音楽が重要なのかもあらためて感じさせる名盤に仕上がっている。
『ゼノブレイド』の「Beyond the Sky -Bilingual Vers.」や『モンスターハンターライズ:サンブレイク』の「Sunbreak -Trilingual Vers.」など、自身がこれまで歌ってきた楽曲のセルフカバーも収録されており、聴きごたえは十分だ。今回のインタビューでは、ゲーム音楽の可能性や今後の展望について話が及び、多岐にわたるトピックが展開された。
加えて、IEM(イン・イヤー・モニター)型イヤホンのブランド・Maestraudioの天然の道南杉を用いた注目モデル『MA910SR DC』、Astell&Kernのハイエンドデジタルオーディオプレーヤー・『A&ultima SP3000T(Copper)』、およびハイクオリティヘッドホンブランド・SENDY AUDIOの平面駆動型ヘッドホン『Aiva 2』に対するレビューもいただいている。(Yuki Kawasaki)
ーー『ISEKAI - Anime & Video Game Muse』を参照しても、サラさんはこれまでに様々なジャンルの楽曲を歌っています。たとえば『約束のネバーランド』の「イザベラの唄」と『サガ エメラルド ビヨンド』の「Crazy for Who?」では全く曲調が異なりますが、どのようにアプローチしているのでしょうか?
サラ・オレイン(以下、サラ):多分、芝居が好きなんだと思います。キャラクターになりきるのが好きで、演じる幅が広がれば広がるほどワクワクしますね。だからその2曲を歌えて本当に嬉しかったですし、いろいろなキャラクターを求められるようになってきているのも光栄です。キャラクターだけでなく物語や世界観ももちろん重要で、そういった部分からもヒントを得ることは多いですね。
ーーシンガーでありながらアクトレスでもあると。
サラ:まさに。ある意味毎回演じていますし、自分の経験もある程度含まれているかもしれませんが、そこにあまり自我は持たせていないつもりです。キャラクターのその瞬間、その感情を表現することが最も重要だと考えていて、それを1曲の中でやり切るのが最も楽しいところで、難しい部分だと思います。特に感情なんて言葉で論理的に説明できない側面もありますから、どう向き合うかは毎回悩むところではありますね。歌唱テクニックももちろん大事なのですが、私がより意識するのはエモーションです。むしろそこに引っ張られて、歌い方も変わるイメージですかね。
――歌い方を楽曲や作品にあわせる一方で、サラさんらしさを指摘する声もあるように感じます。「Sunbreak」のライブ動画には『タイムトラベラーズ』を引き合いに出しながら文脈的にサラさんのことを語ったコメントもあって、大変共感しました。
サラ:私にとってはどちらも嬉しいんですよ。「別人みたい!」と反応をもらうのも、「サラっぽい!」と言っていただくのも本当にありがたいと思っています。具体的に何かを意識しているわけではありませんが、どんなジャンルを歌うにしても、モノマネではなく、“サラ・オレイン”というブランドになってほしいんですね。そのうえで、いろんな面を見せていければと考えています。
――そういった考え方やスタイルは『ゼノブレイド』(2010年発売)の頃から変化したところですか?
サラ:それはそうですね。やはり『ゼノブレイド』はシンガーとして初めて関わった作品ですし、エンディングテーマの「Beyond the Sky」を担当された光田(康典)さんからもたくさんダメ出しをいただきました。振り返ってみると唯一ダメ出しされた曲かもしれません(笑)。当時はすべてが手探りで、自分の声をヘッドホンで聴いたことすらなかったんですよ。スタジオに入ったのももちろん初めてで、あらゆる点で経験したことのない環境でした。光田さんの意図も汲み取れなかったですし、やっていくうちに段々見えてきたんです。そこからキャリアを重ねていくうちに、「Crazy for Who?」みたいな楽曲にまで至ったのは感慨深いですね。
――サラさんの場合は元々ヴァイオリニストだったこともあって、出自もその変化に影響しているんでしょうか?
サラ:ヴァイオリンを始めたときはむしろ“歌うように演奏しよう”と心がけていたので、両者の間にそれほど距離はなかったんです。歌うようになってから、自分の声も楽器のように認識しているところがありますね。ジャズならこういう声、バラードならこっち、ロックならこれという感じに。それも楽曲の幅が広がっている要因のひとつかもしれません。そういう意味では、私の出自も少なからず影響があると思います。でもやはり『ゼノブレイド』に参加しなければそれに気づくこともなかったかもしれませんし、さまざまな意味でターニングポイントですね。
――2024年5月にビルボードライブ東京で行われたSarah Àlainn Quartetのコンサートにお邪魔しました。「Crazy for Who?」が披露される一方、ニーナ・シモンの「Feeling Good」やYOASOBIの「アイドル」も歌われました。『ISEKAI - Anime & Video Game Muse』と同様にかなりジャンルの幅が広かったように感じましたが、その範囲は拡大し続けているようにも見えます。
サラ:そもそも得意なこととやりたいことが一致していない、というのはあると思います。だからこそ広がり続けているというか。常に新しいチャレンジをしていて、来てくださったライブではジャズを追求していました。「Crazy for Who?」のときもお話をいただいた時点では挑戦的な心境だったんですよ。それまでやったことのなかったジャンルでしたし、レコーディングもすごく楽しかったですね。今一番やりたいことは、常に“まだやったことないこと”。
――そういう新しさへの衝動って、何かきっかけやインスピレーションのようなものがあるのでしょうか?
サラ:ライブはひとつ大きなきっかけになってますね。セットリストをその都度変えるのはもちろん、1部と2部でも別なものにしようと心がけていて。お客さんの中には「あの曲が聴きたい!」と思って会場に来てくれる方もいると思うんですけど、その期待に応えつつ、たとえばヴァイオリン以外にもシンセもまぜるとか、そういった挑戦的なこともやっていきたい。フランスのExpressive E社が作っている「Osmose(オスモス)」というシンセがあるんですが、最近はそれを使って編曲をしています。タッチがすごく繊細で、今までやってきた曲でもニュアンスを変えることができるんです。何かしら新しいことを常にやっていたい。そういうことを考えているのでセットリストを出すのがいつもギリギリで、周りの人を困らせることも多いと思います。すみません。
――関係者の苦労はともかく、非常に重要な試みなのではないでしょうか。個人的に、Sarah Àlainn Quartetが最高にクールなのはまさにそういったオルタナティブなところだと感じます。アニメやゲームの楽曲とオーセンティックなジャズやソウルを、同じアーティストが同じライブでやるっていう。ゲーム音楽は市民権を得ましたが、もっと文脈的な広がりがあってもいいような気がします。
サラ:だからセットリストを考えるのにも時間がかかっちゃう(笑)。先ほどの話にも通じるんですが、私は海外でもアニメとゲームの歌い手として知られているところがあって、パリで開催される『Japan Expo』などでもそういう楽曲をやるとファンが喜んでくれるんです。ただ、やはりそこで途切れてしまう実感もあって。ゲームとアニメがこれだけ盛り上がってるので、音楽のすごさももっと広げていきたいですよね。極端な例ですけど、アイルーが出てくる横でオペラをやってもいいはず。物語が重要で、そこに必然性を持たせられれば伝わるものがあると思うんですよ。一見バラバラに感じられるかもしれないけど、クラシックでもジャズでもゲーム音楽でも、どれもがスタンダードになれる。私はそれを表現したいんです。
――さて、ここからはオーディオについてお聞きできればと思います。まずはデジタルオーディオプレーヤー『A&ultima SP3000T(Copper)』についてお聞きしたいのですが、どういった部分に特徴がありそうですか?
サラ:オールインワンなのがまずすごいですよね。これがあればアンプも必要ないので、本当に電源を入れるだけで最高の環境が作れる。そういう意味では、まず圧倒的に楽。楽曲を外部から取り込むのもそれほど億劫でなく、かなり自分好みにカスタマイズできると思います。ファイルが重くてもスムーズに入れられたのは驚きでした。DSD音源も普通に聴けますから。
――お聴きになられたDSDファイルって1曲大体どれぐらいのサイズですか?
サラ:1GBぐらいですかね。なので、いろいろな作業を行うPCだとなかなか気持ち的にも難しいんですけど、こちらは音楽を聴くためのものですからね。それと、オーディオとしての一番のすごさはノイズが全くないところだと思います。スタジオで録音した音源をそのまま再生できるのはシンガーとしてもありがたいです。DSDに限らず、ハイレゾでない音もクリアに聴かせてくれるので、クラフトマンシップを感じます。アンプ機能をいじれば自分好みのニュアンスに合わせられますし、音源側の質はほとんど問題にならなさそうだなと。私もチューニングしながら聴いてみたんですが、低域を強調すると全体がはっきり聴こえるような気がしました。
――SENDY AUDIOの『Aiva 2』との相性はいかがですか。そちらのヘッドホンはまさに低域にボリュームがある印象ですが、使用感などお聞きしたいです。
サラ:私が普段使っているヘッドホンとは真逆の印象を受けました。ダークなイメージというか、新しい発見がある聴こえ方ですね。ワインみたいな感じかもしれない(笑)。クセはあるんだけど、聴けば聴くほど“そういう聴き方もあるんだ”って感じさせてくれました。フィット感もいいですね。何時間も続けて装着していたんですが、着けているのを忘れるぐらいでした。
――得意分野がはっきりしてると。
サラ:そう、ジャズは最高でした。ピアノソロのような楽器の独奏も際立って聴こえましたし、Yosi Horikawaさんのような環境音と電子音楽を掛け合わせたアーティストの作品も迫力がありました。かなり音場が広い印象があるので、ゲーム音楽とかも合いますね。レフトとライトもはっきりしてるから、これでゲームをプレイするとだいぶ贅沢な音になると思います。もしかしたら音楽の種類を選ぶかもしれないけれど、波長が合えば素晴らしいリスニング体験になるのではないでしょうか。
――一方でモニタリングに長けているのが、そちらの『MA910SR DC』といったところでしょうか。
サラ:そうですね。こちらはすごいイヤホンだと思います。私が普段聴く、“慣れている音”をかなり正確に再現できる。値段をもっと上げて良いんじゃないかと思うぐらい(笑)。私がレコーディングで最も重視するのは音の“抜け感”で、楽器と楽器の間にあるスペースなんです。鳴っている音よりも、鳴っていない音のほうが大事。その“間(ま)”が見えるほうが自分にとっては気持ちが良くて、逆にスペースがないと息苦しくなってしまうんです。そういう音響をいい感じに表現してくれるのがこのイヤホンで、この値段でユーザーに届くのは素晴らしいことですね。
――こちらはより奏者目線のレビューですね。
サラ:特にヴァイオリニストの観点からは言えることは多いです。ヴァイオリンって、綺麗さとか丸みだけじゃないんですよ。カサカサした音とか、ワイルドなニュアンスも結構あるんです。たとえば、フラウタンドっていう弓を速く動かすテクニックがあるんですけど、松やにが見えるぐらいよく聴こえるんです。そういう打楽器的なニュアンスも間違いなくリアリティなので、奏者としては欲しいんですよ。それがクリアに聴こえるというのは、本当に嬉しいです。そしてそれをリスナーと共有できるのはアーティスト冥利に尽きますね。『ISEKAI』もぜひこのイヤホンで聴いてほしい。
――私もいま作業する時はもっぱら『MA910SR DC』を使っているのですが、フィット感も相まってオールマイティーな印象があります。
サラ:すごいですよね。私実はあまりライブ中はイヤモニを使わないんですけど、これは試してみたい。音が聴こえすぎちゃうのが嫌で、会場の音響バランスを把握しづらくなることもあるんです。でもこのイヤホンならそのあたりの調整もできるんじゃないかって感覚があります。まさにオールマイティーにさまざまな音楽ジャンルに対応できそうなので、私のやりたいことにも合ってそうですし。
――あらためて『ISEKAI』も聴いてみます! 最後に、サラさんの今後について何かお聞きできることがあれば差支えの無い範囲でお伺いしたいです。
サラ:具体的にはコンサートをいろいろ続けたいのと、もっと創り手としての時間もとりたいですね。自分が作る音に、もっともっとこだわりたいです。編曲も含めて、ステージに立っていないときのクリエイティビティも頑張りたい。同時に頑張るのは難しいので、活動の内容がややクリエイター寄りになるかもしれないですね。いい音をもっと追求していきたいです。
<商品Info>
●SENDY AUDIO『Aiva 2』とAstell&Kern『A&ultima SP3000T(Copper)』
●Maestraudio『MA910SR DC』とAstell&Kern『A&ultima SP3000T(Copper)』
■製品情報
Astell&Kern『A&ultima SP3000T(Copper)』:https://www.iriver.jp/products/product_245.php
SENDY AUDIO『Aiva 2』:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_5543.php
Maestraudio『MA910SR DC』:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_5269.php●ご購入はコチラ
<取扱販売店(価格.com)>
Astell&Kern『A&ultima SP3000T(Copper)』:https://kakaku.com/item/K0001649438/
SENDY AUDIO『Aiva 2』:https://kakaku.com/item/K0001678677/
Maestraudio『MA910SR DC』:https://kakaku.com/item/K0001664521/<Amazon>
SENDY AUDIO『Aiva 2』:https://amzn.asia/d/gzjl6Uz
Maestraudio『MA910SR DC』:https://amzn.asia/d/3hbr3kO
<サラ・オレインInfo>
●Sarah Àlainn 〜 ISEKAI 〜
9月23日(火・祝)16:00開演
Jazz Club Billie(下関)
https://www.billie.jp/●Sarah Àlainn 〜 ISEKAI 〜
9月27日(土)16:30開演
住友生命いずみホール(大阪)●サラ・オレイン 天上の音楽 ~チェンバロが灯す、冬の祈り~
12月6日(土)15:00開演
八ヶ岳高原音楽堂●Sarah Àlainn Celestial Christmas Concert 2025 ~天使と天上の音楽〜
12月17日(水)18:30開演
キリスト品川教会グローリア・チャペル
https://www.sarahalainn.net/schedule
▼サラ・オレインさんのサイン入りMaestraudio『MA910SR DC』をプレゼント
外装にサラ・オレインさんのサインが入ったMaestraudio『MA910SR DC』を1名さまにプレゼント。応募要項は以下のとおり。
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