パソコン音楽クラブ・柴田のプライベートスタジオを訪問 “静かすぎるパソコン”の導入で起こった大きな変化とは

「電源が消えていても付いていても心の状態が一定」 超静音パソコンがもたらす意外なメリット
ーーまずは柴田さんが普段、どのような制作スタイルで楽曲を作ってきたか・作っているかを教えてほしいです。
柴田:パソコン音楽クラブを結成して最初のほうは、それぞれが曲を作ってSoundCloudなどにアップロードするところから始まりました。当時はデジタルシンセサイザーなどを使って制作していました。CDや音源を制作するようになってからは、それぞれがデモを作り、二人でそれを調整するか、どちらかが7割、8割くらいまで作り込む形が多いです。ミキシングの作業は相方の西山(真登)くんが主に担当し、彼がある程度まで形にしたものを二人で集まってディレクションし、完成に持っていくという流れですね。この割合自体は、以前から大きく変わってはいません。
ただ、使用する機材などは変わっていますね。DAWも最初はCubaseを使っていました。Cubaseはハードウェアシンセと連携を取るシステムがすごく組まれていて便利だったのですが、実際にライブパフォーマンスのようなものをやる機会が増えてきた時に、Cubaseだと現場での取り回しが難しく、Ableton Liveの方がやりやすいということで乗り換えました。楽曲制作もそちらにしようと、途中から乗り換えたんです。

ーーDAWを変えたことで制作スタイルに変化はありました?
柴田:かなり変わったと思います。DAWごとにコンセプトがあると思うのですが、Cubaseは僕が元々バンドをやっていたこともあり、MTRマルチトラックレコーダーとMIDIの打ち込みシステムが一体化したような設計思想が合ってたんですよね。一方でAbleton Liveは「最強サンプラー」という感じで、音素材を加工したり、オーディオの編集をしたりして音楽を作っていくことを得意としたDAWなので、乗り換えてからは波形編集やタイムを変えたり、サンプラーに取り込んでオーディオを複雑に処理することがすごく増えて。そこから音楽性に対する考え方が、宅録のようなものから、クラブミュージック、ダンスミュージックの方に向かっていきました。
ーーその変化を踏まえて話すと、1stアルバム『DREAM WALK』の頃はCubaseって感じの音ですよね。
柴田:まさにそうです。替えたのは2ndアルバム(『Night Flow』)を作るギリギリのタイミングですね。
ーーパソコン音楽クラブといえば様々なハードウェア音源を使うことも特徴ですが、そもそもなぜそのようなコンセプトで音楽を作り始めたのでしょう。
柴田:そういうハードウェアの音にフェティッシュを感じたことも大きいんですけど、大体こういうデジタルシンセサイザーはプリセットがものすごく搭載されていて、それだけで曲が作れるんです。僕自身は音色を選んだり加工したりするのがものすごく面倒くさいと思っていたので、こういうプリセットの音源ひとつで作る方が簡単だし楽しかったんですよね。当時は音楽で食べていくと思ってなかったので……(笑)。
ーー活動初期からだいぶ様変わりはしたと思うのですが、今も使っているものはありますか。
柴田:結構ありますね。Rolandの『JV-880』や、E-muのシンセサイザー、ヤマハのラックモジュール、KORGの『WAVESTATION』などは、時折思い出したように使って、すごく良いなと思うことが多いです。
ーー『WAVESTATION』の音はなんとなくパソコン音楽クラブっぽい、というイメージがあります。
柴田:ですよね(笑)。
ーーハードウェアとソフトウェアを使う比率は、今と昔で変わりましたか?
柴田:変わりましたね。いわゆるクライアントワークなどが増えていくにつれて、ソフトシンセの割合が増えていきました。あとは、ライブをやる会場の規模が大きくなってきたのも影響していて……。
ーーハコの大きさですか。
柴田:数年前まで小さなライブハウスでは音響面がごちゃっとしている場所も多かったのでそこまで意識していなかったのですが、いまはライブハウスのPAシステムも進化していますし、クラブでやることも多いので、低音がものすごく下の帯域まで出るようになったんです。その時に低音をちゃんと出せる機材となると、ハードよりもソフトのほうが取り回しが良いですからね。あと、低音はすごく重い音なので、ちょっと長さが変化したりフレーズが変わるだけで音楽ジャンルが変わってしまうぐらいの変化があります。そうなるとどうしてもリコールが効くものじゃないとメンバー間のコンセンサスを取るのがやはり難しいという話になり、それならやはりソフトシンセだろうと。
ーーDAWの比率が上がってきたとなると、パソコンのスペックもすごく大事な要素ですね。これまではどのようなパソコンを使っていたのでしょうか。
柴田:7年前に買ったWindowsのBTO端末をずっと使い続けていたんです。買ってから時間が経っているということもあってか、動作はかなり重くなっていて……。5thアルバム『Love Flutter』を出した時に1曲だけ自分たちでMVを作ったんですが、iPhoneで撮影してDaVinci Resolveで組み合わせただけでも、ファンがうるさく回って全然動かなくなる、なんてこともありました。Web CMの音楽などを担当するときに、Abletonへ映像を読み込んで音を当てはめようとしても、動画を読んでくれないこともありましたね。
ーーかなりギリギリの状態だったんですね。ちなみに西山さんはMacユーザーでもありますすが、このタイミングでMacへの乗り換えは考えなかったんですか?
柴田:少し迷いましたが、Windowsに関してはしっかり手に馴染んでいるのと、細かい階層まで色々入って設定できるのも大きくて、引き続きWindowsを使うことにしました。
ーー1日平均どれくらいの時間、パソコンの前で作業しているのでしょう?
柴田:制作をする日は一気に6〜7時間作業します。それ以外でも、外出する仕事がない限りは基本的にずっとPCの前にいて、制作だけでなくネットサーフィンをしたり、CDを聴いたり、アニメを見たりと、全てこのPCで行っています。寝る時以外は電源を切らずにほぼつけっぱなしで、たまにスリープモードにするくらいです。
ーーそして今回、『Silent-Master NEO Z890』が新たに柴田さんのメインマシンとなりました。実際に使ってみた率直な感想は?
柴田:本当に静かですよね。熱などがうまく処理できていて、ファンが音を立てて回るということがありません。「本当に電源入ってる?」と心配になるレベルですし、動作もかなりサクサクで快適です。
柴田が使用した『Silent-Master NEO Z890』の構成一覧
CPU:Intel Core Ultra 9 285 [2.5GHz/24コア(Pコア8+Eコア16)]
ケース:【黒】CoolerMaster Silencio S600+前面ファン [Noctua NF-A14 FLX]+背面ファン [Noctua NF-S12A FLX]
CPUクーラー:Noctua NH-U12A [空冷/CPUファン]
マザーボード:ASRock Z890 LiveMixer WiFi [Intel Z890chipset]
メモリ:96GB[48GB*2枚] Crucial Pro DDR5-5600 [メジャーチップ・8層基板・ヒートスプレッダー付き]
ストレージ:①Crucial T500 CT2000T500SSD8 [M.2 PCI-E Gen4 SSD 2TB]、②Crucial T500 CT2000T500SSD8 [M.2 PCI-E Gen4 SSD 2TB]
グラフィックスカード:GeForce RTX5070 12GB Sycom製Silent Master Graphics RTX5070 12GB [HDMI*1/DisplayPort*3]
電源: ASRock Steel Legend SL-750G [750W/80PLUS Gold]ATX3.1(PCIe5.1)ネイティブ対応電源
OS:Microsoft(R) Windows11 Home (64bit) DSP版
URL:https://www.sycom.co.jp/custom/model?no=001008&cd=21RMEC7I%2BxmIpEcf
ーー音楽スタジオのように音がデッドな場所だと、コンピューターのファンノイズは目立ちますよね。
柴田:そうですね。マイク、特にコンデンサーマイクだとを使って宅録するとなるとものすごく音を拾ってしまうんです。そういう時に「空調も消したのにまだ何か鳴ってる……」と思って、調べてみたらパソコンだった、みたいなことがたまにあるので、自宅スタジオで録音する人との相性はすごく良いんじゃないかなと思います。
ーー『Silent-Master NEO Z890』はCPUには最新のIntel Core Ultra 9 285、ビデオカードにサイコム、Noctua、長尾製作所、3社コラボによる究極のオリジナル静音空冷ビデオカード「Silent Master Graphics RTX5060Ti 16GB」を標準搭載していますが、その性能は実感できましたか?
柴田:DaVinci Resolveのような動画編集ソフトとDAWを同時に動かせたのは本当に素晴らしいと思いました。以前のPCではグラフィックに投資していなかったこともあり、DaVinci Resolveだけでもまともに動かせませんでしたから。 レンダリングのような処理では特に熱が発生し、待ち時間も長かったのですが、それが大幅に減りました。クリエイティブな作業におけるストレスが軽減され、最終的なアウトプットにも良い影響があると思います。
ーー『Silent-Master NEO Z890』に搭載しているファンの製造元であるNoctuaのCEOが「静音性は心のステータスにも直結する」と話していたんですよね。つまりファンが静かであることで、パソコンの電源が付いていてもリラックスできている状態になると。
柴田:なるほど。それを聞いて思い出したんですが、ファンが動いてる時に鳴っている音を聞いて「パソコンが動いてるな」という気持ちになり「何かしないと」と焦っちゃう時もあるんです。ただ、今回の『Silent-Master NEO Z890』に変わってから、電源が消えていても付いていても心の状態が一定で、たしかにリラックスしているのかもしれません。
ーー色々なハードウェアやソフトウェアと繋いでもらっていると思いますが、互換性などは問題なかったですか。
柴田:全く問題ないですね。むしろ動かなかったものが動きました。バージョンアップできなかったソフトがバージョンアップできて助かりました(笑)。






















