コンビニの“人手不足問題”、最新技術でどう向き合う? ローソン×KDDIによる「未来コンビニ」に潜入

2025年6月23日、KDDI株式会社と株式会社ローソンによる新たなコンビニ「Real×Tech LAWSON(リアルテックローソン)」の1号店として「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」がオープンした。
1号店がオープンしたのは、2025年3月に街びらきをしたばかりの注目スポット『TAKANAWA GATEWAY CITY』。最新のテクノロジー技術がふんだんに盛り込まれていると噂の本店舗だが、いったい私たちが日ごろ利用しているコンビニとは何が違うのか? その最新技術や開発の背景について、取材をした。
“近未来コンビニ”の目的
今回訪れた「リアルテックローソン」があるのは、『TAKANAWA GATEWAY CITY』のTHE LINKPILLAR 1 NORTH 6階。同じフロアには、7月1日にグランドオープンしたKDDIの新本社もある。なかなか特別感のある場所だが、本店舗は一般の方も利用可能なので安心してほしい。
さっそく店内に入ってみると、ややゆったりしたスペースに見慣れた風景が広がっている。近未来コンビニというと、ロボットが動き回り、至る所にディスプレイがあって無機質な雰囲気なのでは……と予想していたのだが、筆者が普段利用しているコンビニとそこまで変わりはないようだ。いったいどのあたりが“近未来”なのだろうか?
今回は、株式会社ローソン広報部の持丸憲さんに、「リアルテックローソン」について解説してもらった。
まず今回「リアルテックローソン」がオープンした背景のひとつに、コンビニの人手不足問題がある。持丸さんは、基本的なコンビニの体制について説明してくれた。「一般的なコンビニは、だいたい2人体制であることが多いです。店舗によって異なりますが、1店舗あたりの在籍人数は15~20人ほど。そしてレジ業務は作業全体の3分の1から2分の1程度を占めています」
持丸さんの解説の通り、コンビニ業務でもっとも人員を割かなければいけないのが、“レジ業務”だ。だが、コンビニ店員の仕事はもちろんレジだけではない。品出し、清掃だけではなく、いまや公共料金の支払いから宅配サービスの対応まで、生活のだいたいのことはコンビニに行けば解決してしまう。
最近はほとんどのコンビニにセルフレジが導入されているものの、だからといって人手不足が解決するわけではない。商品の購入以外のことはセルフレジは対応しきれないし、すべてのお客さんがセルフレジを使えるとも言い切れない。そういった課題をテクノロジーで解決しようとしているのが、今回「リアルテックローソン」が行っている取り組みなのだ。
最新テクノロジーによる“新しいコンビニ体験”
そんなレジ問題に対しての取り組みのひとつが、「3Dアバター遠隔接客」だ。筆者は最初に見たとき、AIによる接客なのかと思ったのだが、なんと画面の“向こう側”にいるのは本当の人間(店員さん)なのである。持丸さんいわく、向こうの店員さんにはこちらの姿が見えており、それによって年齢確認をすることも可能だ。
客一人ひとりに対して年齢確認が行えるため、本店舗ではタバコの販売も行われている。客は購入したいタバコを自ら手に取り、レジに向かう。これによって、コンビニ店員の鬼門である「どの銘柄が何番なのか覚える」という仕事も解決する。客側もいちいち番号を伝える必要がないため、Win-Winなシステムなのではないだろうか。
これがAI接客だったらこうはいかないだろう。生身の人間の対応が必要なところは残しつつ、テック化できるところは機械に任せて、実際に店舗に出勤している店員は品出しやほかの作業に集中できるということだ。
持丸さんはこの「3Dアバター遠隔接客」の店員さんの正体について詳しく解説してくれた。「オペレーターさんは、現在80人ほど在籍しています。店舗まで足を運ぶ必要がないため、どこにいても働くことができるというのが、オペレーターさん側のメリットですね。たとえば、海外にいてもアバターなら働くことができるんです。留学生や、日本語の仕事がしたい方、時差を利用して働きたい方、家であれば夜勤帯に出勤できる方なども働いていただける環境づくりを行っています」
アバターだからこそ、いままで獲得できなかった層からの人材を確保できるということだろう。また、実際店舗にいた店員さんは、レジの方にはほとんど来ることはなく、品出しや別業務に集中していた。従来ならレジに拘束されていたところを、同じ出勤人数で効率よく業務を進められるということだ。
そして、店内は紙の販促物はほぼなく、ほとんどがデジタルサイネージになっていた。持丸さんいわく、海外ではデジタルサイネージを活用している店舗もあるという。「本部から販促のデータを各店舗に送るだけで切り替えることができるので、店員さんにとってもメリットですよね」
たしかにデジタルサイネージであれば店員にとって付け替えの手間がかからないし、不要になった販促物を処分する必要もないため、環境にもいいのではないだろうか。
そして個人的にかなりよかったと感じたサービスが、棚の前に立つとおすすめ商品やランキングがAIサイネージに表示される、というところだ。体感だが、30秒〜1分ほど棚の前に立っていると、ランキングが表示される。筆者はコンビニを利用する際は目的もなく入ることが多い。このランキングがあれば何を買うか迷う時間を短縮できるため、かなりありがたい。

ランキングはカップ麺からお弁当、パンなどさまざまなジャンルのものが表示される。仕事中の昼休憩など、時間が限られているときに買うものをすぐ決めることができるというのは、便利な機能なのではないだろうか。
「マチのほっとステーション」を目指して
筆者は“近未来コンビニ”というからには、ロボットが管理している無人店舗なのかと予想していたのだが、店員さんは数名働いているようだ。この“完全な無人”にあえてしていない理由について、持丸さんはこう語った。「無人にするともちろん人件費はかからないのですが、商品補充が不完全だったり清掃が行き届かなかったりして、お客様に満足していただける商品・サービスが提供できない可能性があります。なので、快適な環境を維持するには、有人でありながらもテック化をすることが重要であると考えています」

「またコンビニは、地域や利用するお客さまの層によって、求められることが大きく変わります。例えば、単なる商品購入の場ではなく、コミュニケーションを求めてご利用される方もいます」
たしかに、コンビニで常連さんらしきお客さんと店員さんが雑談をする光景は、筆者もこれまで何度か目にしたことがある。何気ない会話かもしれないが、その人にとってはかけがえのない時間なのかもしれない。とくに過疎地域などにおいては、そのつながりが人を助けることもあるだろう。「ローソンは『マチのほっとステーション』を目指しています。ものを買う場所というだけではなく、コンビニは人をつなぐ場でもあると考えています」
そういった側面での取り組みのひとつに、この「Ponta よろず相談所」がある。店舗の一角に構えている大きなボックスのなかを除くと、AIコンシェルジュが出迎えてくれた。
画面を操作していくと、「暮らし」についてや「インフラ」、「診療」など、いわゆる商品購入以外の部分でコンビニに求められていることが聞けるようになっていた。
この「Ponta よろず相談所」について、持丸さんはこう説明した。「場所によってはちょっと市役所に行くのにも、バスを使わなければいけない地域もあります。それに公共施設は対応できる時間が限られているため、思い立ったときにすぐ行けないことも多いです。まずはここに聞いてみて、解決の糸口につながればと考えています」
「地域によっては、何かちょっと困ったことがあったときに“聞ける場所”が限られています」と、持丸さんは語った。たしかに、まず最初に頼る場所が、家の近くにあるのとないのでは、安心感が全然違うのではないだろうか。
実際、ローソンは過疎地域や高齢化が進む地域等に出店をする「地域共生コンビニ」を展開している。もちろん出店については、経営の面で採算が取れるかどうかも考えられてはいると思うのだが、そういった地域における“コンビニ”という存在は、ものが買える以外の部分でも存在自体に大きな意味があるように感じる。
筆者の祖母は足が悪いのだが、「家の近くのコンビニなら」と、日々の運動の目標としてコンビニに足を運んでいる。祖母は買い物をするという目的とはまた違うところで、コンビニを必要としている人間だ。きっと、ローソンのスローガンである『マチのほっとステーション』というのは、そんな意味も込められているのではないだろうか。

最新のテクノロジー技術を取り入れながらも、コンビニに求められている“温かさ”も同時に提供している「リアルテックローソン」。改めて、現代のコンビニの課題、そしてコンビニが求められていることを考えるいい体験となった。

































