なぜプリントシール機は25年間、若者文化の中心であり続ける? ユーザーと作ってきた“変化”の裏側に迫る
“プリ”ことプリントシール機が、誕生から25周年を迎えた。1995年の誕生から一大ムーブメントを起こしたプリントシール機は、常に若いユーザーを獲得し、代替わりを繰り返しながら、いまだにティーンの遊びには欠かせないものとなっている。
では、プリントシール機はどのようにして、時代の変化に対応してきたのだろうか。姫ギャルやage嬢の流行やアイドルグループ隆盛の時代、スマートフォンの普及など、社会の変化や流行にあわせたアップデートについて、フリュー株式会社管理本部広報部の門脇彩氏に話を聞いた。(編集部)
プリ機は時代の“映し鏡”
ーーフリューのサイトに掲載されている、2015年に作成された「プリントシール機 生誕20周年」ページ(https://www.puri.furyu.jp/pribirth_20anniv/)を拝見すると、フリューがプリントシール機に参入したのは、1997年の『似テランジェロ』とあります。
門脇:アトラスさま(※)の『プリント倶楽部』が1995年。大ブームとなり、様々な企業がプリントシール機事業に参入しました。その中でもフリューは最後発なんです。弊社は元々、電気機器メーカー・オムロンの子会社だったのですが、自社の技術力を使ってこのブームに乗れないかと考え、『似テランジェロ』を開発しました。単に撮影した写真が出てくるのではなく、顔認識ソフトウェアを用いて、写真から似顔絵シールを作成するという機種なんです。
(※現在はセガサミーグループ内の企業であり、「プリクラ」は同社の登録商標)
ーープリントシール機の中でも変わり種だったんですね。ちなみに、オムロンは体温計や体重計など、医療機器のイメージがあります。なにか技術を転用したのですか?
門脇:当時、オムロンでは顔認証技術の研究が進んでおり、これまで培った技術を応用すれば、似顔絵のプリ機が作れるのではないかと、技術職の男性たちの、技術の粋を集めたものでした……が、不発でした(苦笑)。
ーー私は90年代なかば、学生真っ盛りだったのですが、たしかに『似テランジェロ』のことは、記憶になかったです。
門脇:原因はわかっているんです。女の子たちがプリントシール機に求めているものは、「楽しい思い出を写真に残すこと」。そこに「写真じゃなくて似顔絵ってすごいでしょ」と、技術を売りにしていたところで、女の子たちは別に似顔絵が欲しいわけではなかったのですから。
ーーつまり、技術は優れていたものの、ユーザーの需要に応えられていなかったと。
門脇:あまりにもヒットしなかったので、会社に女子高生数名を呼んで、グループインタビューを行うようになりました。これは現在でも続いています。今は新型コロナウイルスの影響もあり、なかなか難しいですが、それまでは、週に1度くらいの頻度でインタビューをしていました。
ーーその後、どんな変化が起きたのでしょうか。
門脇:2000年前後に、浜崎あゆみさんブームによって、ストロボの光で肌を白く飛ばす『ハイキーショット』という機種が生まれました。ストロボは、その後発売されたほとんどの機種に付いています。そして、プリントシール機も多様化し、筐体の中から風が吹くものや、ジャングルジムに乗って撮影できるものなど、「遊び」を重視した機種が増えました。フレーム合成のある機種が盛り上がった時期でもありました。
ーー若い女性のブームをダイレクトに取り入れるようになったんですね。
門脇:そうです。女の子たちのトレンドと一緒にプリントシール機の機能は移り変わっています。
その後、2000年代中盤になると、雑誌『小悪魔ageha』などのヒットで、「盛り」や「デカ目」が重要視されるようになります。
(※『小悪魔ageha』:主にキャバクラ嬢を専属モデルに登用し、そのファッションやヘアメイク、生き様をフィーチャーすることで「キャバ嬢の教科書」と呼ばれたギャル系ファッション誌。ゴージャスな巻き髪や濃いアイメイクの「盛り」が特徴)
ーーお姫様のようにキラキラした「姫ギャル」や、『小悪魔ageha』から生まれた「age嬢」ブームの時代、いわゆるギャル以外の若い女性も、長いつけまつげをつけていた時期です。フリューには、そのものズバリ『姫流』や『姫と小悪魔』という名前の機種もありました。
門脇:この時代は、いかに目を大きく見せるかということが求められていましたね、弊社の機種もこの時期が1番、目が大きいかもしれません。まさにデカ目戦争。益若つばささんのブームもあって、「盛り」に特化した時代でした。
(※益若つばさ:当時の益若つばさは「Popteen」人気モデルで、彼女の紹介するアイテムは若い女性に飛ぶように売れることから、100億の経済効果があるとされ、ギャル層以外からも注目を集めた)
ーーまた2010年代に入ると、流れが変わってきますね。ギャルの時代から、AKB48などのアイドルブームがやってきます。
門脇:そこでまた、プリントシール機もガラッと変わり、アイドルブームを受けて、女の子のメイクのトレンドも「ナチュラルだけど盛れている」ものが良しとされるようになり、目の大きさなどのプリの加工もナチュラルになりました。また、『Heroine Face』という機種では、全国のプリントシール機からオーディションに応募できる、「ヒロインフェイスコンテスト」という企画もありました。
ーー本当に時代の変化が反映されるんですね。
門脇:かつては、ひとりのカリスマや時代のアイコンがいて、「その子になりたい」という願望を反映するような機能を搭載していました。今は、インスタグラマーやユーチューバー、韓国のモデルなど、ひとりのカリスマが求められるというよりは、好みが多様化しているので、プリ機の写りや機能もバリエーションを増やしてますね。
また、その一方で、「盛れる」ことが求められるのは、ずっと変わりません。プリントシール機って、大人が撮ると違和感があるくらいが丁度いいんです。