『DOOM: The Dark Ages』酷暑のストレスも吹き飛ぶ爽快“テーマパーク” 己の拳から巨大ロボまでを総動員して悪魔の大軍勢を蹂躙せよ

『DOOM: The Dark Ages』レビュー

 暑い、暑すぎる。「梅雨ってあったっけ?」と考える暇もなく、早速やってきた猛暑日の連続にゴリゴリと体力を削られ、家からほとんど出ることなく週末が過ぎ去っていく。行きたいところや、やってみたいことが色々あったはずなのに、そのすべてがぼんやりとした感覚となって消えていく。

 そんな日々を過ごしている方(つまりほとんどの人)にオススメなのが、『DOOM: The Dark Ages』である。30年以上も続く老舗のFPSシリーズ「DOOM」の最新作として2025年5月にリリースされた本作だが、シリーズファンはもちろん、これまでシリーズに触れたことがない人にも安心して勧められる快作だ。

 「ただでさえ暑いのに、なぜいかにもむさくるしい「DOOM」を?」と言いたくなる方もいるかもしれないが、『DOOM: The Dark Ages』が夏にピッタリな理由はふたつある。まずは「ストレス発散に最適」ということ。そして、「まるでテーマパークのようなゲーム性」であるということだ。つまり、無理に外出せずとも、本作さえあれば日々の疲れを癒やし、明日への活力を養うことができるというわけである。本稿では、そんな『DOOM: The Dark Ages』の魅力を語っていこう。

『DOOM: The Dark Ages』 | 公式トレーラー第1弾(4K) | 2025年発売予定

抱え込んでしまったストレスを拳と銃弾に込め、大量の悪魔をなぎ倒せ

 「DOOM」といえば、「ショットガンで大量の悪魔を血祭りにあげる」ことで知られているFPSシリーズだ。その魅力は『DOOM: The Dark Ages』においても、健在どころかさらに磨き上げられている。

 本作の見どころといえば、何と言っても、目の前に広がる凄まじい量の悪魔たちを、それ以上に凄まじい火力を誇る武器で瞬く間に蹂躙していく爽快感だろう。一般的なFPSといえば、カバーアクションを前提とした「隠れながら撃つ」というスタイルが定番となっているが、「DOOM」の場合は、「相手の攻撃を待つ時間がもったいない。その間にひとりでも多くの悪魔を殺すべき」というタイパ重視の考え方が推奨される(よりタイパを求めるのであれば、オプションでゲームスピードを2倍まで加速できる)。

 主人公のドゥームスレイヤーは強く、他のFPSのように銃弾を数発浴びる程度では倒れることはない。むしろ、悪魔を倒せば倒すほどに、体力回復アイテムや弾薬がドロップされるため、とにかく積極的に戦うことが求められるのである。直近のタイトルでは「的確に一体ずつ敵を処理する」=速やかな判断力と正確性が求められるゲームデザインとなっていたが、『DOOM: The Dark Ages』では「大量の敵を一気に処理する」方向へと大きな方針転換が行われ、相棒の銃のラインナップも一新した。

 筆者のオススメは、銃弾代わりの頭蓋骨(!)をセットし、粉砕しながら広範囲に破片を撒き散らすことで広範囲を攻撃するスカルクラッシャー/パルヴェライザーだ。とりあえずこれを撃ちまくってさえいれば、目の前の景色がある程度クリアになるという優れモノで、見た目のインパクトも相まって、尋常ではない爽快感を味わうことができる。また、シリーズ伝統のスーパーショットガン(水平二連式ショットガン)もやりすぎなくらいの高火力に設定されているため、主人公の背丈の何倍もあるような敵であろうと、何発か至近距離で放てば、大抵の場合はただの肉片と化してしまう。

 さらに、本作では(FPSという概念を無視して)近接戦闘に並々ならぬ力を注いでおり、盾と近接武器による躍動感のある戦いが大きな魅力となっている。相手の攻撃を的確なタイミングで防ぎ(パリィ)、ひるんだ隙をついて、拳やフレイルでテンポ良く悪魔を殴っていく感覚は、まるでボクシングのようだ。「DOOM」ならではのグロテスクではありながらも、ユーモラスなゴア表現(個人差はある)もバッチリで、迫力のある破壊音とともに悪魔たちが次々とトマトのように潰れていく感覚は、「爽快」の二文字に尽きる。

 また、本作のドゥームスレイヤーは「敵の位置に盾を合わせると、猛スピードで突進できる」という謎の能力の持ち主であるため、広大な戦場をビュンビュン飛び回りながら亡骸を量産できる。さらに、盾自体も丸ノコのようになっているため、ひと度投げれば、雑魚は豆腐のように鮮やかに切れていくし、強めの悪魔には食い込ませることでスタンさせることができる。気分はまるで血塗れのキャプテン・アメリカだ。

 このように、暴れまわる環境自体は十分に用意されているため、あとは自分自身が抱えるストレスを燃料にして戦場へと赴けばいい。最初こそ壮大な世界観や大量の敵に圧倒されるかもしれないが、自分自身の圧倒的な強さを知れば、そのすべてが広大な遊び場に見えてくるはずだ。

 さらに、後半では、悪魔がクトゥルフ神話直系の神話生物と、まさしく悪魔合体するという恐ろしい展開が待ち受けている。一般的な人類であれば、その未知なる圧倒的な恐怖に対して、なすすべもなく逃げ惑うしかないだろうが、あなたは最強の戦士・ドゥームスレイヤーであり、相手がコズミック・ホラーであろうが何だろうが、「致死量のダメージを与えれば死ぬ」ことさえ分かっていれば十分だ。「クトゥルフ神話とは、人類が理解できない存在に圧倒されるという構図が大事で...…」という原理主義者の声が聞こえてくるような気がしなくもないが、そんな声は「知るか、こっちはドゥームスレイヤーだぞ!」と無視を決めこみ、悪魔だろうと神話生物だろうとひとり残さずボコボコにしてやろう。

 ところで、「30年以上続くシリーズ」と聞くと、「ここから始めたら、話の内容が理解できないのでは?」と不安を感じる方もいるかもしれない。だが、心配は無用だ。そもそも当のドゥームスレイヤー自身が現状をあまり把握していないし、「悪魔を殺したい」以外のモチベーションをほとんど持っていない。その前提の上でフォローをしておくと、本作は2016年の『DOOM』を起点とした、通称「新生3部作」の最後を飾る作品でありつつ、時系列的には最初の物語を描いている。つまり、「DOOM」入門にもピッタリというわけだ。

ドラゴンとともに舞い、巨大ロボですべてを破壊する。FPSの枠を越えるテーマパーク的な楽しさが満載

 もともと、「DOOM」自体が最初期から広大なマップを探索して隠されたシークレットを発見したり、前作『DOOM Eternal』では「マリオ」さながらにピョンピョン飛び回るプラットフォームアクションが取り入れられたりと、テーマパーク的な楽しさを内包していたシリーズだったが、そうしたサービス精神は『DOOM: The Dark Ages』でいよいよピークに到達している。本作において、ドゥームスレイヤーはただ銃を撃つだけではなく、ドラゴンに乗って空を飛び回ったり、巨大ロボに搭乗して暴れまわることができるようになったのだ。しかも、単にカットシーンの一つや、イベント戦として処理されるのではなく、それぞれがちゃんとゲームとして作り込まれている。

 まず、ドラゴン騎乗パートに関しては、いかにも「DOOM」らしい(どう見ても人に懐かなそうな)荒くれ者のドラゴンの背に乗り、あるときは巨大戦艦を撃墜し、またあるときは謎の巨大な古代遺跡へと侵入するために、空を華麗に駆け抜けていく。見た目こそ勇ましいが、操作性としては「スターフォックス」に近く、シンプルな操作で簡単にアクロバティックな空中戦を実現することができる。次々と戦艦のガードを破壊し、内部へ直接乗り込んで乗員を一掃し、再び空へと舞い戻るのは、とにかく楽しい。

 さらに、巨大ロボについては、本作ならびに『DOOM』(2016年)以降のシリーズをメインで手掛けてきたゲーム・ディレクターのヒューゴ・マーティン氏のこだわりが細部まで詰まったメカデザインを堪能することができる。かつて映画『パシフィック・リム』のコンセプト・アートを手掛けてきたヒューゴ氏だけあって、ゴツゴツとした質感や圧倒的な迫力、何より良い意味での「オモチャらしさ」が詰まった巨大ロボたちの姿は、それだけで一見の価値があると言えるだろう。

 しかも、それに実際に乗って、操縦することができるのだ! 本編のメカニクスを応用した、シンプルでありながらも確かな手触りのある近接戦闘では、「巨大ロボが巨大モンスターをボコボコにする」という怪獣映画さながらの体験が味わえるし、(誰がどうやって製造しているのかは不明だが)特注のガトリングガンを撃ちまくって戦場を蹂躙することだって可能だ。歩くだけで大量の建築物が凄まじい勢いで壊れていくのも相まって、「私は強い、強いぞ!!」という感覚をこれ以上ないほどに味わうことができるだろう。

 こうした空中戦や巨大ロボ戦といったパートは、他のゲームであれば簡易的なイベント戦であったり、最悪の場合はカットシーンのみで片付けられてしまいがちだ。だが、『DOOM: The Dark Ages』では「全部ちゃんとやる(なぜならその方が楽しいから)」というこだわりが貫かれており、いくつかのステージでこうしたパートが用意されている。そのため、テーマパーク的な楽しさはもちろん、ゲームプレイ全体にもメリハリを与えており、最後まで飽きることなく悪魔狩りを楽しみ尽くすことができるのである。

この夏、君もドゥームスレイヤーになろう

 最後に、主人公であるドゥームスレイヤーというキャラクター自体の魅力についても語っておきたい。見た目こそ、いかにも「脳筋」という言葉が似合いそうな、筋骨隆々でなりふり構わず力で圧倒するだけの人物であるように感じられるかもしれないが、実はとても誠実で優しい心を持つヒーローである。

 そもそもドゥームスレイヤーが悪魔と戦うことになったきっかけは、当時は無名の海兵隊員の一人だった人物(通称「ドゥームガイ」)が、上官からの民間人への発砲命令に対して、殴って拒否したことによる左遷である。左遷先で見事な活躍を発揮して、無事に自宅へと帰還したドゥームガイだったが、そこで最愛のペットであるウサギのデイジーが悪魔に惨殺されているのを発見したことで、その怒りは限界へと到達してしまった(1993年の『DOOM』にて)。言わば、20年早いジョン・ウィックだ。

 この姿勢は、あれから30年以上が経った今でも変わることはない。(どう見ても大規模な犠牲が生まれているように見えるシーンがあるとはいえ)ドゥームスレイヤーが直接民間人に危害を加えるようなことはなく、理屈は通っているがやりたくはないことを話す上司に対しては、暴力ではなく「無視」を決め込むことで自分らしさを貫く。また、物語中では、王の娘でもあるシア司令官が敵軍にさらわれ、それを追うドゥームスレイヤーという構図が展開されるが、その理由は「悪魔に腹が立つ」からである。シアに対する下心は皆無であり、使命感や周りからのプレッシャーもない。行きたいから行くし、殺りたいから殺るのだ(実際、本作におけるドゥームスレイヤーとシアの関係は、マリオとピーチ姫というよりは、むしろバディものの構図に近い)。また、地獄の悪魔を敵視しているとはいえ、道理に反しているのであれば、たとえ天国側だろうと躊躇うことなく血祭りにあげるのもポイントだ。

 道理に反するような行為は全力で拒み、心から動物を愛し、お決まりのプロットに当てはめられることなく、組織や派閥も無視して、ただひたすらに自分らしい生き方を貫く。これがドゥームスレイヤーという人物であり、まさしく現代に必要なヒーローだ。

 この夏、君もドゥームスレイヤーになって、日頃のストレスを銃弾や拳に込めて、ありったけの強さを楽しもう。

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