オーディション企画を取り入れて成長を遂げた「めるぷち」。VAZのキーパーソンが語るコンテンツ制作の今とこれから

VAZキーパーソン語るコンテンツの今後

メディアが“事務所の養成所”の役割を担うVAZならではの価値

ーー「めるぷち」が人気コンテンツになってからは、看板クリエイターが育っていったり、所属タレントやインフルエンサーが増えてきました。その意味では「めるぷち」を含めたメディアの役割が大きく変わり、マネジメントとのシナジーも確実に高まっていると言えそうですが、その辺りの変化はどう思われていますか?

岡田:「めるぷち」は自社メディアとして、“事務所の養成所”のような役割も果たしています。YouTubeに対する世間のイメージは、まだ「楽しそうにやっているだけ」というイメージが強いと思うのですが、そうしたなかでも競争の場を提供し、努力している姿を見せることで、タレントとしての認知度を高めることができますし、その過程でメンバー自身の意識も大きく変わっていきます。

 つまり、競争環境を作ることによって、タレントのマインドセットが養われ、成長につながるんですね。また、部活動的な教育に近い感覚ですが、競争下に置かれることで社会的なコミュニケーション能力や周囲との協調、感謝の心も育まれ、タレントとして以前に人間的な成長にもつながってほしいと願っています。

 それと、「めるぷち」のオーディションでよく聞かれるのが、「どうしてYouTubeなのにダンスや歌、モデル審査をするのか?」ということです。これには明確な理由があって、まだ若い子たちには自分の可能性を狭めてほしくないという思いがありますし、私たちも彼らの可能性を制限したくないと思っているからです。

 また、求める人材の素質や評価ポイントは、オーディションを始めたころからずっと変わっていません。とくに強調しているのが“ハングリー精神”です。どんな困難な状況にあっても頑張り抜く精神力が大切で、そうしたマインドがあれば乗り越えられることが多く、最終的には成功の道が開かれると思うんです。

 「めるぷち」に加入しているメンバーは、最初は知名度を獲得する上でYouTubeやTikTokを始めるものの、将来的にはタレントや俳優になりたいという人が多いので、こうした審査を通じて挑戦してもらうことで、新たな個性が見えてきます。たとえ苦手なことでも挑戦することで、意外な才能が開花することもありますし、そうした多様な機会を提供できることが、うちのメディアの特徴になっていると思います。

ーーメディアが養成所の役割を果たすという構造は、時代の流れにもすごく合っていると感じます。

岡田:現在のインフルエンサープロダクションのトレンドとしては、TikTokでスカウトして、クリエイター本人が頑張ってフォロワーを増やし、伸びてきたら事務所がメディアキャスティングを行って価値をつけるというのが主流になっています。

 その一方でVAZの競争優位性としては、「めるぷち」や「CULDRAMA」でしっかりと成長できる環境を提供している点が大きく、メディアに出ることでフォロワー数も増えるという仕組みが、VAZにおける価値の源泉だと思いますね。

プロのアーティストやプロデューサー集団を輩出できる成長機会を作りたい

ーー今後の方向性についてはどのように考えているのでしょうか?

岡田:私たちはYouTubeを中心に展開している自社メディアに注力していますが、実はほかの方向性でも考えているところがあります。たとえば、よりプロ志向な音楽グループやアーティストを育てることに挑戦していて、選抜決定戦で選ばれた4人に特別な楽曲を作る企画など、「めるぷち」でアーティストデビューを実現するようなプロジェクトも進めています。

 とはいえ、いまはまだ企画色が強い部分があるので、もっと本格的にアイドルや俳優を目指す人たちがしっかりと活動できる場を提供したいと考えています。また、メディア面では「めるぷち」や「CULDRAMA」、「MelTV」といった規模のメディアをさらに展開していくことも考えています。とくに、ティーン向けのメディアが多くなってきているなかで、F1層向けのメディアを立ち上げたり、それらのメディアを量産できるようなプロデューサー集団を作りたいという構想もあります。

ーー業界全体としても縦型ショートドラマが人気を集めていますが、そのあたりはどのように感じていますか?

岡田:弊社でも「CULDRAMA(カルドラマ)」というショートドラマチャンネルを展開しているのですが、現在は非常に好調な状況にありますね。「CUL DRAMA」は、縦型ドラマが流行っていた時期で、多くのプレイヤーが新規参入していたタイミングでした。しかし、そのまま縦型ドラマの流れに乗るのでは面白くないと思ったので、少し逆説的に違うアプローチを取るために考えたのが“横型でドラマを制作すること”でした。

 その結果、横型ドラマがほかにあまり競合がいなかったことで“一強状態”となり、初回で200万再生という素晴らしい数字を記録できました。この成功が大きな要因となり、ほかの事務所からも「横型ドラマに出演したい」という声が上がるようになりました。

 くわえて、プロの役者さんも「CULDRAMA」に出演してくれるようになったことで、うちのタレントたちがプロの演技に刺激を受け、成長する機会が生まれています。そういう点でも、このプロジェクトは功を奏したと思っていますね。

ーー今後挑戦したいことは何かありますか?

岡田:先ほども話したように、プロ志向の音楽グループプロデュースや世代の壁を超えて認知される俳優やテレビタレントの輩出等、YouTuberとしての立ち位置を超えていくことが今後挑戦していきたいことです。どうしてもYouTuberやインフルエンサーというと、世間の認知として素人っぽく映るというか、芸能人やタレントとして見られづらいのが現実です。そのため、今後は芸能人やタレントとして認知されるようなグループを作っていきたいですね。

 星乃夢奈のようにインフルエンサーとして活動していた人が、歌手や俳優として活動できるようなコンテンツを自社で作り上げていきたいと考えています。

ーー自社の制作力を強化するとなると、社内の人材のスキルアップや育成が必要になりますし、外部から新たな人材を迎えることも視野に入れているのでしょうか?

岡田:「めるぷち」の企画やプロデュースは自社で行っていますが、オーディションや選抜決定戦など大掛かりなプロジェクトの制作は外部に委託している部分もあります。ただ、制作の部分を専門のスタッフと一緒に進めることができるようになったのは、SNSネイティブな「バズる」企画立案やマネタイズを含めたコンテンツの枠組み作りを確立できたからこそだと思っています。

 プロの制作チームと共同してコンテンツを作ることで、自分自身の成長にもつながりますし、タレントたちの成長にも貢献できると考えています。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる