17年の時を経て、ファン待望のリメイク発表 『ペルソナ4 リバイバル』に求められる“時流を読まない鈍感力”

アトラスは6月9日、Xbox/PCプラットフォームの新作情報番組「Xbox Games Showcase」のなかで、『ペルソナ4』のリメイク作品『ペルソナ4 リバイバル』(以下、『P4R』)を発表した。
\『ペルソナ4 リバイバル』発表📣⚡/
まぶしい青春×ミステリー×オカルトが重なり合うRPGの金字塔。
ペルソナシリーズ屈指の人気作が遂にリメイク!Xbox Game Pass、Xbox Series X|S、Windows
PlayStation®5、Steamに登場!#P4R pic.twitter.com/UX6v6ZWFcF— モルガナ_ペルソナ広報 (@p_kouhou) June 8, 2025
2000年代にリリースされたRPG作品の数少ない金字塔として、根強く愛され続けている『ペルソナ4』。ファン待望のリメイクは、どのようなタイトルとなるのだろうか。2024年2月に発売となったナンバリング前作のリメイク『ペルソナ3 リロード』(以下、『P3R』)との比較から、『P4R』に盛り込まれるであろう変更点などを予測する。
シリーズ最高傑作に推す声も多い『ペルソナ4』が17年の時を経てリメイク
『ペルソナ4』は、2008年にPlayStation 2で発売された「ペルソナ」シリーズのナンバリング第4作だ。舞台は、最寄りの都市からでも電車で3時間を要する田舎町・八十稲羽地区。両親の海外出張にともない、母方の叔父である堂島遼太郎のもとに預けられた高校生の主人公は、引っ越し早々、同地区を騒がせることになる奇妙な連続殺人事件に遭遇する。犯人は何者なのか。彼は身近な人たちが次の被害者になることを避けるため、友人たちと特別捜査隊を結成し、事件の謎へと迫っていく。
特徴となっているのは、伝奇ジュブナイルのスタイルで描かれる秀逸なシナリオと、ペルソナを使役してのバトル、スタイリッシュなグラフィック/音楽など。前作『ペルソナ3』で確立されたシリーズのオリジナリティは、同作でさらに昇華され、2016年リリースのナンバリング第5作『ペルソナ5』へと受け継がれていった。
発売から約3年後の2011年10月には、TVアニメが放送となり、こちらも好評を博した。さらに翌年の2012年には、新要素を追加した『ペルソナ4 ゴールデン』(以下、『P4G』)がPlayStation Vita向けに展開されている。『ペルソナ4』をシリーズ最高傑作に推すファンの声は少なくなく、その後も2D対戦型格闘ゲーム『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』や、リズムアクション『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』など、複数のスピンオフが同作から誕生した。
「ペルソナ」シリーズをめぐっては2024年、同様に高い人気を誇るナンバリング第3作『ペルソナ3』もリメイクとして復刻を果たしている。こちらと同じく、『ペルソナ4』もはじめてのリメイク。界隈では、『P4R』がどのようなタイトルとなるのか、『P4G』とどのような点に違いがあるのかに話題が集まっている。
発売日は現時点で未定。対応プラットフォームは、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PC(Microsoft Store/Steam)となっている。また、同タイトルは、Microsoftが提供するサブスクリプションサービス・Game Passにも対応する。
「原作の表現を貫けるか」が成否をわける重要な分岐点に
『P3R』の存在が明らかとなったときから、ファンのあいだではリメイク版の登場が既定路線だと噂されていた『ペルソナ4』。今回の発表のタイミングにあわせ、アトラスは45秒ほどのティザートレーラーも公開している。
同動画には、稲羽市の周辺と見られる自然豊かな風景、主人公が暮らす町にある辰姫神社、彼を含む特別捜査隊の面々のほとんどが通う八十神高校の教室、シャッター街となりつつある八十稲羽商店街、ストーリーにおいて重要な役割を担うマヨナカテレビなどの様子が、『P4R』の目玉のひとつであろう美しいグラフィックで収められていた。また、後半では、そうしたエリアを駆け回る主人公の姿も確認できた。気になっているフリークにとっては、期待感や購買意欲をくすぐられるものとなっていたのではないか。
「ペルソナ」シリーズの開発チーム・P-STUDIOで総合プロデューサーを務める和田和久氏によると、「精いっぱいの情熱と愛情をこめて制作にあたっている」「初めての方はもちろん、今までのファンの方にとっても、新鮮で驚きに満ちた作品になると確信している」「今後のペルソナシリーズの展開についてもスタジオを挙げて準備を進めている」とのこと。『P4R』のクオリティに関する部分はもちろんのこと、まだ見ぬナンバリング新作『ペルソナ6』の制作をほのめかす発言がされたことに、界隈は大いに沸いた。
『ペルソナ4 リバイバル』の発表を記念し
P-STUDIO 総合プロデューサー和田和久のコメントを公開⚡#P4R https://t.co/w1JhVck4tf pic.twitter.com/78K6m97Tce— モルガナ_ペルソナ広報 (@p_kouhou) June 8, 2025
はたして『P4R』はどのようなタイトルとなるのだろうか。そのことについて考えるとき、ひとつの指標となってくるのが、直近にリリースされている『ペルソナ3』のリメイク版『P3R』の存在だ。
同ナンバリングにおいては、原作である『ペルソナ3』(PlayStation 2)のほか、システムの改修と新要素を盛り込んだアペンド版『ペルソナ3 フェス』(同上。以下、『P3F』)、これをベースにしているものの『P3F』に含まれていた追加シナリオは収録されずに女性主人公が新たに追加された移植版『ペルソナ3 ポータブル』(PlayStation Portable)が展開されていたが、リメイクのベースとなったのは、「無印」と呼ばれるオリジナル版だった。
『P3F』のみに収録された後日談シナリオが好評だったこともあり、『P3R』の発表当初は、「なぜアペンド版をベースにしないのか」と物議を醸した経緯もある。その後、件のエピソードは、有料のダウンロードコンテンツとして『P3R』にも追加された。
一連の動向を『P4R』に当てはめると、同タイトルは2012年発売の『P4G』ではなく、原作の『ペルソナ4』をベースに復刻される可能性もある。『P4G』にも『P3R』と同様に、新たなプレイ期間など多数の追加要素が盛り込まれているが、もし『P4R』が原作準拠のリメイクとなるならば、これらはすべて削ぎ落とされてしまうことになる。そして、仮にダウンロードコンテンツとして有料販売されるようなことがあれば、ふたたびファンコミュニティに混乱が生まれることにもつながりかねないだろう。
しかしながら、『P4G』の追加要素には、『P3R』のようなわかりやすい新規シナリオがあるわけではない。ボリューム上、ゲームの進行上も、追加要素を含んでいたほうが自然であることから、あえてカットするといった対応には至らないのではないか。『P4R』は『P4G』をベースにリメイクされるというのが、私の予測だ。
また、『P3R』との比較という観点からは、ブラッシュアップされそうなポイントも見えてくる。同作には、キャラクターグラフィックやバトル演出の良化、新たなバトルシステム、コミュニティ、ペルソナの追加などが盛り込まれた。こうした変更点は、おなじく『P4R』にも受け継がれていくはずだ。特にキャラクターグラフィックに関しては、リメイク版における最大の訴求ポイントとなっていくのではないか。ともすると、『P4G』のそれには、時代の流れを感じる面もある。そうした“現状の欠点”が『P3R』のときと同様に、改良へと向かうのであれば、ファンからは大きな支持が集まるに違いない。
一方で、『ペルソナ4』は、メインキャラクターたちの尖った個性、それに付随する攻めたシナリオ表現も特徴としている。巽完二や白鐘直斗などのアイデンティティ、キャラクターエピソードは、その代表例と言えるだろう。反面、近年のゲーム業界では、自由な表現に対する向かい風が小さくない。もし『P4R』がそうした風潮の影響を大きく受けるならば、ファンが望むリメイクとはならない可能性も生まれてくる。
『ペルソナ4』のシナリオにとって、「自身が隠している内面と向き合う」という表現は、もっとも大切な部分であると言える。仮に一部にテコ入れが入り、マイルドな表現になるならば、その程度によってはオールドファンの批判の対象となるケースもあるだろう。
「外見的な部分だけでなく、内面的な部分も大切にしながら、丁寧にリメイクしてほしい」。これがファンの総意なのではないだろうか。金字塔の呼び声高い『ペルソナ4』であるだけに、リメイクは、薄氷を踏むような繊細な作業であるとも言えるのかもしれない。
『P3R』の例から考えるに、発売時期はもっとも早くて2026年春ごろだろうか。ティザートレーラーの内容、同時発表された情報などを踏まえると、さらに先となる可能性も大いにある。『P4G』をベースにしたリメイクとなるならば、『P3R』で展開されたようなダウンロードコンテンツの候補がないため、もしかすると新規の追加エピソードが配信される未来もあるのかもしれない。いずれにせよ、発売が待ち遠しい制作発表となったことだけは間違いない。






















