名越スタジオへの資金提供打ち切りが示す、AAAゲーム開発の“巨大資本依存”というジレンマ

AAAゲーム開発の“巨大資本依存”ジレンマ

 『龍が如く』の生みの親・名越稔洋氏が代表を務める名越スタジオが、2026年5月にNetEase Gamesからの資金提供を打ち切られるというニュースが報じられ、驚きの声が上がっている。現代のゲームクリエイターが直面する資金調達の難しさについて、あらためて議論を喚起する出来事となりそうだ。

 3月7日に「Bloomberg」が報じた内容によると、NetEaseはゲーム関連への投資を縮小する戦略を進めており、そのあおりを受ける形で名越スタジオへの資金提供打ち切りが決まったとのこと。当初は名越スタジオの第1作目となる『GANG OF DRAGON』が完成するまで猶予が与えられていたものの、追加で70億円の出資が必要だと分かり、リリース前の撤退となったのだという。

完成目前で資金打ち切り――『GANG OF DRAGON』に何が起きたのか

 『GANG OF DRAGON』は新宿・歌舞伎町を舞台としたアクションアドベンチャー。アジアを代表する映画スター、マ・ドンソクを主演に起用していることからも、リッチなゲームになることが窺える。また名越氏が元々所属していたセガから独立し、名越スタジオを設立したのは2021年11月のこと。同作の制作には、長い期間が費やされてきたことが予想される。

Gang of Dragon World Premiere Trailer from The Game Awards 2025

 とはいえ、すでにティザームービーまで発表されている段階なので、ファンからは「何とか完成にこぎつけてほしい」と願う声が多く上がっているのが実情だ。

 なおNetEaseはこれ以前にも、さまざまな投資縮小が報じられてきた。最近ではPvPチームシューティング『マーベル・ライバルズ』において、米国の開発チームがレイオフされたという騒動が記憶に新しい。

 また2024年には『聖剣伝説 VISIONS of MANA』を手掛けた桜花スタジオが閉鎖。2025年には『Destiny 2』などで有名なJerry Hook氏が率いるスタジオ・Jar of Sparksが、新作ゲームの開発中止を発表していた。

有名クリエイターが巨大資本に頼らざるを得ない理由

 そもそもNetEaseは一時期、国外の有名クリエイターが設立したスタジオに積極的な資金提供をする動きを見せていた。名越スタジオもその一環で、他にも元スクウェア・エニックスの市村龍太郎氏が設立した株式会社ピンクルや、『バイオハザード』シリーズのプロデューサー・小林裕幸氏が代表取締役社長を務める株式会社GPTRACK50なども、NetEaseの100%出資を受ける会社だ。

 昨今のコンシューマー向けゲームは「AAAタイトルかインディーゲームか」の二極化が進んでいるとまで言われており、有名スタジオは多額の資金を集めてリッチなAAAタイトルを作らなければならない状況にある。そのためNetEaseのような巨大資本の力を借りる必要があるが、今回の一件はそのリスクが如実に表れた形だ。

ゲーム業界全体を覆うコスト削減の波

 またNetEaseだけでなく、ゲーム業界全体でもコストを削減する傾向が見られる。2023年にはEpic Gamesが、約830人を対象とした大規模な人員削減を実施。また2024年にはRiot Gamesも大規模なレイオフを発表した上、『レジェンド・オブ・ルーンテラ』などを手掛ける独立スタジオ・Riot Forgeが閉鎖された。

 こうした状況の背景には、膨れ上がる制作費を一部の巨大資本に頼らざるを得ないというゲーム業界全体の構造が関わっている。今後はどれだけ才能があるゲームクリエイターでも、否応なしにこの課題と向き合うことを強いられるのではないだろうか。

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