快進撃続ける『ファンタジーライフi』 ヒットの裏にある“時代にマッチしたゲーム性”

5月22日に発売となった『ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女』(以下、『ファンタジーライフi』)に好評の声が集まっている。
ニンテンドー3DSなどで人気を博したスローライフRPG「ファンタジーライフ」シリーズの久々の新作がなぜ、ここまでのヒットを記録しているのか。本稿では、そのゲーム性に隠された支持の理由を考えていく。
3DSで人気を博したスローライフRPGシリーズから7年ぶりの新作が登場
「ファンタジーライフ」は、2012年にニンテンドー3DSで発売となった同名タイトルを初作とするRPGシリーズだ。プレイヤーは自身の分身となるアバターを作成し、それぞれに個性を持つさまざまな職業「ライフ」へと就きながら、独特のファンタジー世界で気ままな生活をおくっていく。
上述の第1作『ファンタジーライフ』のほか、同作からのキャラクターデータの引き継ぎと3人までのオンラインプレイに対応した拡張版『ファンタジーライフ LINK!』(ニンテンドー3DS・2013年7月発売)や、最大4人によるマルチプレイ機能を盛り込んだ基本プレイ無料のモバイル版『ファンタジーライフ オンライン』(Android/iOS・2018年7月サービス開始)の全3作がこれまでに展開されており、それぞれが各プラットフォームで人気を博した。今回発売となった『ファンタジーライフi』は約7年ぶりの新作となる。
今作では、伝統的なシリーズのゲーム性はそのままに、体験の幅を拡張。RPG、アドベンチャー、シミュレーションといった各ジャンルのトレンド要素を柔軟に取り込んでいる。無人島の滅亡の謎を解き明かすための冒険、資源の収集とアイテムのクラフトを駆使して島を復興する町づくりなどはその一例だ。プレイヤー次第でさまざまな遊び方を満喫できる点が同タイトル最大の特徴となっている。
対応プラットフォームはPlayStation 5/PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、PC(Steam)で、価格は、通常版が7,678円、限定のマウントや装備、コスチュームなどを収録したデジタルデラックスエディションが8,778円(ともに税込)。往年の人気シリーズから、完全版とも言える最新作が登場した。
時流にマッチした「自分で遊び方を見つけ出す」というゲーム性

かねてからコアなファンのあいだで熱狂的に支持されてきた「ファンタジーライフ」シリーズ。約7年ぶりに登場した最新作『ファンタジーライフi』には現状、好意的な声が集まっている。Steamにおけるレビューでは、全体の92%が「おすすめ」とし、上から2番目のランクである「非常に好評」へと分類されている。同プラットフォームにおいては、発売日以降、日に日に同時接続プレイヤー数が増加し、5月25日(日)には65,000を突破した。その後も高い水準で推移していることから、今週末にはさらにその数が伸びる可能性がある。
また、5月24日には、開発/発売元のレベルファイブが全世界での累計販売本数が50万本を突破したと発表。同接の動向を踏まえると、今後は加速度的に売上が伸びる可能性もある。発売時から一定の注目を集めた同タイトルだが、少しずつ勢力を拡大するという特徴的なヒットを記録している現状だ。
なぜ知る人ぞ知るRPGシリーズの久々の新作が、これほどまでに広くプレイされることとなっているのだろうか。その理由は、ゲーム性と時流の好相性にあると考える。
先にも述べたとおり、『ファンタジーライフi』は、プレイヤー次第でさまざまな遊び方ができる点を特徴としている。おそらく実際に手に取った人の多くが、シナリオの本筋とは直接関係のない要素にのめり込んでしまい、気づいたら当初の目的がそっちのけになっていたという経験をしているはずだ。どちらかといえば、物語を進めることよりも、寄り道のほうが楽しみ方のメインであり、その種類、数も豊富に用意されているため、遊び方に困ることがない。RPGでありながら、ただストーリーを追うだけではないプレイが可能であることが、同タイトルに懐の深さをもたらしている。
このようにゆるくいろいろなことに手が出せる性質は、現代のゲームカルチャーを取り巻く環境と非常に相性がいい。なぜなら、同文化はこれまで以上に、年齢や性別に関係なく親しまれるレジャーとなりつつあるからだ。ここ数年のヒット作を振り返っても、草創期に人気を博したような、目的のはっきりとしたタイトルは少なくなってきている。たとえば、『Minecraft』や『あつまれ どうぶつの森』『パルワールド』などのヒットはその好例だろう。より広い視点では、『ファイナルファンタジーXIV』に含まれる要素も同種であると言える。
昨今、ゲームはクリアを目的にするレジャーから、「自分で遊び方を見つけ出す」「ゲーム内にあるコンテンツを通じて、他のプレイヤーとつながる」レジャーへと形を変えつつある。そのような時流が「ファンタジーライフ」シリーズや『ファンタジーライフi』に含まれるゲーム性とマッチし、ヒットにつながった面があるのではないか。

他方、シリーズやタイトルの魅力が実況・配信文化を経由し、さまざまなプレイヤーへと届けられたことも、大きな追い風を生み出したと考えられる。特に上述したような特徴を持つタイトルを取り上げやすい傾向にある、にじさんじやホロライブ、ぶいすぽっ!などの著名なライバー/ストリーマーの影響は大きいだろう。発売日が過ぎてから購入したプレイヤーのなかには、彼らのコンテンツを通じて同タイトルの存在や面白さを知った層もいたに違いない。これらによる相乗効果が現在の特徴的なヒットにつながった可能性がある。
無論、そこには、クオリティに対する制作側の真摯な姿勢も影響しただろう。特にUIのブラッシュアップについては、シリーズの過去作品、似たゲーム性を持つ直近の競合作品の成功/失敗から学んだ面もあったのではないか。前作から体験の幅が拡張していることも含め、『ファンタジーライフi』が「正統進化の1作」と表現できる裏には、細部に対する制作側のたゆまぬ努力もあったはずだ。そのようにして支えられたクオリティが、ゲーム性と時流の好相性、実況・配信文化との相乗効果の前提となっているのは言うまでもない。
現状、まだまだ続きそうな『ファンタジーライフi』の快進撃。今作の成功によって、「ファンタジーライフ」はこれまで以上に、人気シリーズとしての地位を確立したと言えるだろう。






















