名門メーカー・オーディオテクニカから初となるイヤープラグが誕生! 生活向け『AT-ERP3』とライブ向け『AT-ERP5』の違いを評論家が徹底検証

オーテク初のイヤープラグ誕生秘話

 オーディオテクニカが、ブランド初となるイヤープラグ『AT-ERP3』と『AT-ERP5』を発売する。数多の“音を鳴らす製品”を手掛けてきたオーテクが、なぜ今“音を遮断する”イヤープラグを開発したのか? またオーディオメーカーのイヤープラグとしてどんな技術が込められているのか?

 リアルサウンドテックでは、本製品の開発担当者である株式会社オーディオテクニカ 商品戦略部グローバルプロフダクトマネジメント課ベンダープロダクトグループの柚木進吾氏と中子正也氏に直撃インタビュー。イヤープラグ比較試聴の経験もあるオーディオ評論家の野村ケンジ氏が体験を交えて話を聞いた。

イヤープラグ
『AT-ERP5』はライブ会場でもアクセントになる印象的な色として、ブラック(写真左)とゴールド(写真右)を揃える。
イヤープラグ
日常使用に向けた『AT-ERP3』は3色展開。写真左からグレー、コーラル、ブラックで、こちらは肌に馴染む色あいを選んだとか。

野村:オーディオテクニカさんから、なんとイヤープラグが発売されるとのことで、僕もびっくりしています。どうしてオーテクからこんな発想が出てきたのか、ぜひ詳しいお話を聞かせてください。

柚木:ご注目いただきありがとうございます。今回の新製品はジャストアイデアからスタートしたものになります。

中子:メインの企画は柚木の担当で、プロジェクト全体の流れも彼が見ています。僕は技術開発の経験があったので、そういった部分や測定などのフォローを主に担当しました。

野村:オーディオテクニカでは、コンシューマー向けのイヤープラグは今までラインナップしていなかったはずです。今回製品化に至ったきっかけは何だったんですか?

柚木:弊社は音楽に関わる会社なので、私生活でもライブを楽しんでいる社員も多いのです。その中で、最近はイヤープラグが人気らしいぞ、みたいな話が出て来ました。もちろん他社の情報も入ってきますから、確かにイヤープラグがトピックとしてあるなと思っていました。その時に、オーディオテクニカとしてはイヤホンも作っているし、技術的に結びつけられるんじゃないかと考えたのがきっかけです。

野村:ライブ好きの社員から始まったというのはいいですね。新製品リリースに、“Always Safe Listening”と書かれていましたが、イヤープラグとして素晴らしいキャッチコピーだと思います。

柚木:オーディオテクニカは音の会社なので、末永く耳を守って、音楽を楽しんでいただきたいという思いを込めました。

イヤープラグ
企画を担当した柚木進吾氏(左)と、技術関係を担当した中子正也氏(右)。イヤープラグへの思いを熱く語っていただいた。
イヤープラグ
左が『AT-ERP3』、右が『AT-ERP5』のイヤピース。基本的なデザインや素材は同社の従来イヤホンと同じだが、『AT-ERP3』では遮音効果を上げるために中央の穴を塞いでいる。

日常使いの『AT-ERP3』と、ライブ向け『AT-ERP5』にはどんな違いがある?

野村:日常使いの『AT-ERP3』と、ライブ向けの『AT-ERP5』が発売されますね。この2種類にするのは、早い段階で決まったんですか?

柚木:イヤープラグには様々な使い方があります。ライブもそうだし、何かに集中したいとか、寝る時などの用途がある中で、最終的にこのふたつが弊社製品として相応しいんじゃないかと考えました。

野村:先日、ある取材でイヤープラグを10数モデル試聴したんですよ。その中にはライブ向けを謳っている製品も含まれていましたが、残念ながら爆音のライブ会場で使えそうなものはほとんどありませんでした。そういう経験があったので、日常(生活)向けとライブ向けを分けていることにもすごく感心しました。特にオーディオテクニカ製品はライブの現場などでも使われることが多いと思うので、説得力があります。公表されているスペックも、『AT-ERP3』と『AT-ERP5』では遮音効果が違いますね。その辺りの作り分けについて教えていただけますか。

柚木:ライブでイヤープラグを使う時も、基本的には元の音を楽しみたいというのが大前提だと思うんです。でも、イヤープラグをつけることで迫力が抑えられてしまうのではないかという懸念がありました。ライブ用としては、音圧を落としすぎるのはユーザーにも望まれないだろうということで、あえて遮音効果は低めに設定しました。

中子:イヤープラグは構造上、高域が減衰しやすい傾向があります。そこを踏まえて、全体のバランスがよくなるようにカット・アンド・トライで追い込みました。

イヤープラグ

イヤープラグ
本体表面には柔らかいシリコン素材が使われている。耳に収まるリング上の部分には、オーディオテクニカ独自のループサポート構造を踏襲した。

 

イヤピースの形状も、様々な試作を繰り返して追い込んでいった

野村:『AT-ERP3』と『AT-ERP5』では、本体の構造にどんな違いがあるのでしょう?

柚木:イヤピースの形状で、『AT-ERP3』用は先端が塞がっています。イヤホンに採用しているイヤピースと同じ素材を使っていますが、穴を塞いだ部分の厚さなどは試作時にいろいろ検証を行いました。

中子:もうひとつはフィルターです。『AT-ERP5』は2層のフィルタリングダンパーを搭載しています。といってもイヤープラグから音を出すわけではないので、外音を取り込む際にどうフィルタリングするかがポイントになります。この組み合わせを探すのは、ものすごく大変でした。

柚木:フィルターを変えて周波数特性を測っても、数値としてはあまり変化がないんです。でも人が聴く音色って数値とは別じゃないですか。なので、社内の音響エンジニアの意見を聞きながら、今の音質に近づけていきました。

野村:イヤピースもいろいろなデザインを試されたとか。

中子:イヤピースにも固有の特性があるので、それをフィルターや筐体と組み合わせた時に、どういう風に音が変わるかを評価しました。結果的に行き着いたのが、もともと弊社が使っていたイヤピースの形状と素材だったんです。

野村:本体側のノズル径はこれまでのイヤホンと同じですよね。ということは、それらのイヤピースも使えますね。

中子:基本的に従来の弊社イヤホン用と同じ設計ですから、イヤピースを交換できます。ただし、公表しているスペックは今のイヤピースを付けた場合のものですので、そこは変わってしまいます。特に『AT-ERP3』付属のイヤピースは穴が塞がった状態での遮音効果ですから、穴開きタイプに変えると効果が下がると思います。

柚木:そこをご理解いただいた上で、自分好みにアレンジしてもらうのも面白いかもしれません。

イヤープラグ
多くの人の耳に安定して収まるように、開発時には導管の角度や長さも細かく調整されたという。
イヤープラグ
3Dプリンターを使って、角度や長さの違う本体を20種類ほど試作し、社内のメンバーに装着性を確認してもらったそうです。

「世界的な標準規格に準拠した聴覚保護具」として、第三者機関の認証も取得

野村:ところで、今回の2モデルは「世界的な標準規格に準拠した聴覚保護具」とのことです。その点についても詳しく教えてください。

柚木:聴覚保護具には、EM(欧州)と、ANSI(北米)というグローバルスタンダード的な規格があります。今回はそれぞれに定められた方法で測定してもらい、パッケージに両方の測定結果を表示しています。

野村:なお、イヤープラグの企画には社内のライブ好きのメンバーの協力が大きかったとのことでした。そこではどんなアドバイスがあったんでしょう。

柚木:一番は装着感ですね。メンバーの一人が女性で耳が小さいので、どれくらい装着しやすいかはとても重要だったようです。爆音のライブになると、会場でもイヤープラグを配ったり、オフィシャルグッズで販売しているようですが、それらの装着感についての情報も教えてくれました。

中子:形状とか素材についても意見を聞いています。特に耳の小さい方は、イヤホンやイヤープラグが耳珠部分に触れて圧迫感がある場合が多いようです。そこを解決するために、形状をなだらかにしました。また、ある程度のフィット感が必要ですから、弊社のループサポート構造も踏襲しています。さらに耳道は人によって角度が違うので、導管の長さや角度を工夫して、多くの人にすっぽりと収まる形を目指しました。

柚木:試作機は形状検討用だけでも20数個作りました。そこから装着感のいいものを選んで、次にフィルターを組み合わせて音を決めていきました。

野村:音楽ジャンルによっては、求められる遮音性にも違いがあると思います。そこについてのアドバイスはありましたか?

柚木:もちろんです。ヘビーメタルとかビジュアル系ではもうちょっと低音を聴かせたいとか、あまりうるさくないジャンルの時にはどうするかといった議論もしています。

イヤープラグ
『AT-ERP5』は、導管の前後に二層のフィルタリングダンバーを搭載し、高域から低域までバランスのいい遮音効果を実現した。
イヤープラグ
鞄の中で他の荷物に紛れないようにキャリングケースも付属する。さらに、ケースの右側面にはストラップホールも準備されている。

ライブ会場にも持っていけるように、ストラップホールまで準備

野村:キャリングケースがついているのもありがたいですね。

中子:激しい音楽じゃなくても、会場によってはスピーカーの近くでうるさく感じることもあります。そういう時にイヤープラグを使ってもらえればと思って、持ち運びやすさも意識しました。サイズもコンパクトですし、ストラップホールもついていますので、カラビナなどでカバンに引っ掛けられます。実はここも開発メンバーの実体験から来ていて、ライブ会場って荷物が持ち込めなかったりするんですが、これならベルトホールにぶら下げて持っていけると。

柚木:実は蓋のホールド感も苦心した点です。最初にサンプルを作った時は、間違って開かないように硬くしすぎてしまったんです。そこで指のひっかかりを付けて、内側のフックの金型を少し調整しました。

野村:オーディオテクニカ製品としては、これまではイヤホンのような音を出す製品の企画が中心だったと思います。しかし今回は、音を抑える製品ということで、逆の発想が必要です。その点について苦労したことはありましたか?

柚木:オーディオテクニカとしてこれをやる必要があるのかといった意見も出ました(笑)。あとは、どれくらいの値段にするかも難しかったです。

野村:それぞれおいくらでしたっけ?

柚木:『AT-ERP3』が税込2,970円で、『AT-ERP5』は税込3,960円です。

野村:かなりのお手頃感だと思います。この値付けとなると、ある程度の販売数も見込まなくてはならないでしょう。

柚木:さすが、お詳しいですね(笑)。もちろん販売予測も大切ですが、今回は過去の製品での経験や、オーディオテクニカとしての物づくりの資産を使えたのも大きかったですね。

イヤープラグ

イヤープラグ
イヤープラグの効果を確認する試聴も実施した。『AT-ERP3』『AT-ERP5』を装着した上にヘッドホンを付け、爆音で音楽を鳴らした状態でどれくらいの遮音効果があるかを野村氏に確認してもらっている。

実際の遮音効果を体験。『AT-ERP5』はライブ向けと呼ぶに相応しい性能を備える!

イヤープラグ

柚木:そろそろ、『AT-ERP3』と『AT-ERP5』の効果をご体験いただきましょう。それぞれを装着して、その上からヘッドホンで爆音を再生します。音量はかなり上げていますので、ヘッドホンの装着時は気をつけてください。

野村:確かに、ライブ会場ならこれくらいの音量感がありますね。でもイヤープラグをつけるとそこまで気になりません。これは効果が分かりやすい。『AT-ERP5』は、女性ボーカルで高域がマスクされすぎることなく聴こえるのがいい。空間的な広がりもそのまま感じられます。これは素敵だと思いました。

 もうひとつ、せっかくライブに来ているんだから、低域はある程度聴こえた方がいいでしょう。その点でも、これくらいのサウンドバランスが実現できているのはいいと思いました。ライブの現場を知らないと、この音のバランスにはできないでしょう。『AT-ERP5』は、ライブ向けとして充分な品質を備えています。

 また『AT-ERP3』は、高音から低音まで、全体のレベルを上手に抑える方向ですね。女性の声や赤ちゃんの泣き声も気にならないようにしてくれます。静かに仕事をしたい、あるいは読書や趣味を楽しみたいといった使い方には重宝するんじゃないでしょうか。

イヤープラグ
株式会社オーディオテクニカ 商品戦略部グローバルプロフダクトマネジメント課ベンダープロダクトグループの柚木進吾氏(左)と中子正也氏(右)。インタビューの最後に、それぞれのお気に入りカラーを装着してもらった。

柚木&中子:ありがとうございます。その違いも分かっていただけるとありがたいです!

野村:今回、オーディオテクニカのイヤープラグは、いざという時のために鞄に常備しておくのにぴったりの、素敵なアイテムです。『AT-ERP3』は毎日使うために、『AT-ERP5』はとっておきの時、ハレの日用みたいな、そんな感じで使い分けるのもいいですね。セット買いというのもありかもしれませんね。

イヤープラグ
イヤープラグ

商品名:イヤープラグ
型名:『AT-ERP5』『AT-ERP3』
発売日:3月13日
価格:オープン価格(公式オンラインストア価格3960円・税込)、オープン価格(公式オンラインストア価格2970円・税込)

参考資料
https://www.audio-technica.co.jp/product/AT-ERP5
https://www.audio-technica.co.jp/product/AT-ERP3

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