沈みゆく移動型要塞都市、機械を祀る信仰…重厚SF×高難易度デッキ構築ローグライト『As We Descend 深淵へ至る道』レビュー

『As We Descend 深淵へ至る道』をプレイした。
本作は重厚感のあるSF設定と、資源管理や都市探索といった要素のあるデッキ構築ローグライトだ。既視感のあるシステムの複合でありながら、それらが高いレベルで調和しており、ほど良いバランスとダークな世界観に魅せられる秀作だった。

舞台はボルトシティという街だ。ここは人類最後の砦とされ、外界には凶悪なモンスターが蔓延っている。都市の内部も中世暗黒時代のように腐敗や策略に満ちているが、プレイヤーは住民たちと取引しながら、この都市を守り抜かなければならない。
都市は移動型要塞となっていて、サイクルごとに地下へと沈む。ユニットを訓練し、資源を蓄えながら、日に日に苛烈化していくモンスターたちの攻撃を耐え凌ぐのだ。

ゲームは市街探索のフェイズから始まる。ボルトシティの各地にロケーションがあり、それぞれに手持ちのカードを置いていくことでイベントが発生する。
ゲーム開始時点ではロケーションで起きるイベントはすべて伏せられており、何が起きるかはなんとなく推察するしかない。ランを重ねていくことで徐々にわかってくる手探り感がたまらない。

カードには「仲間」「遠征隊」「資源アイテム」の3種類があり、それぞれに用途が異なる。
「仲間」は多様なイベントを起こすためのカードだ。筋力・知世・風格のパラメータがあり、イベントごとにそれらを参照して、ダイスロールを行い、結果に応じて報酬を得ることができる。このゲームの会話UIは『ディスコ・エリジウム』を参考にしていると思われ、その遊びもTRPG的だ。

「資源アイテム」もイベントを起こすトリガーだが、ほぼすべてが使い捨てであるため、効果は絶大である。たとえば「超巨虫」は老師の下に持っていけばユニットのスキルをアップグレードできるし「リアクターロッド」は新しい市街地を開くことができる。
しかしながら、それぞれに適した場所に置かなければ効果を発揮せず、思っていた効果が出なかったり、二束三文で売り飛ばすだけになってしまったりすることもあるので、何にどんな効果があるか、どこに置くべきかはしっかりと覚えていく必要がある。ここはユニークで面白いとも言えるし、単に面倒とも言えるポイントだ。

「遠征隊」はバトルを引き起こすカードだ。バトルについてはのちほど詳しく解説しよう。
彼らとともに物資を取るために街の外へと繰り出すわけだが、まずポイントを決めることになる。ポイントごとに戦闘発生時に配置できる最大ユニット数と、確定で掘れる報酬が表示されている。
バトル後は「スカベンジャー」の出番だ。彼らは遠征隊にくっついてきた宝掘り人員であり、ここから確定報酬以外の宝物をディグるミニゲームが始まる。ここでなるべく効果の高い資源アイテムを取っておくことで、次のサイクルをより有利に進めることができるし、ちょっとした通貨しか拾えなかった場合は苦戦することになる。

なお、わかりづらいが、イベントカード自体が遠征隊で、実際に戦闘をするのはユニット、報酬を掘るのはスカベンジャーである。
そんな具合で、資源管理と市街探索でも十分に面白いのだが、本作はここによく練られたバトルシステムが絡んでくる。

本作のバトルは『Slay the Spire』に代表されるようなデッキ構築ローグライトだ。デッキからカードを何枚か引き、ターンごとに決められたコストの上限まで使用し、迫りくる敵を倒していくというゲーマーなら誰もが知っているようなシステムである。だが、そこにいくつものユニークなフィーチャーが追加されている。
バトルではまずユニットを選択する。本作は体力の回復手段が絞られているため、できれば同じユニットを何度も使うのは避けたい。しかし、カードがユニットに紐づいているため、デッキが育っていないユニットで戦闘するのもリスキーであるという点が面白い。

バトルは「サポートゾーン」と「ガードゾーン」に分かれており、ユニットや敵ごとに特異な距離が決まっている。特殊な遠距離攻撃以外はガードゾーンの敵にしか攻撃が当たらないし、ゾーンごとに効果を発揮するカードなどもあるため、しっかりと距離感を測ることが大事だ。
サポートゾーンの後ろに「ランタン」を持った女神が控えており、このランタンのHPがゼロになるとゲームオーバーだ(正確には遠征隊の場合は遠征失敗になるだけだが、街の防衛では敗けることは許されない)。

バトルの開始前に敵がどういうタイプなのかの説明は入るうえに、毎ターンどういう行動を取ってくるかも自明なのだが、カード1枚1枚の強さは同ジャンルのゲームのなかでは控え目であり、そう簡単に勝たせてはくれない。何度も挑戦してパターンを覚え、針の穴に糸を通すようなシビアな体験が待っている(なお、オプションで難易度を緩和することも可能だ)。
基本的には「崩し」「感電」といった効果を持つカードで敵をよろめかせ、何もさせないことが大事だ。弱点や攻撃用の部位を露出するので総攻撃をかけたいところだが、よろめかせるためにカードを使いすぎるとそうも行かず、何もしないまま敵のターンが戻ってきてしまうこともあり、本当に難しい。筆者はデッキ構築ローグライトをかなりの数遊んでいるが、それでも安定しないバトルばかりだった。

ランタンに紐づいているカードが強いのでユニットのカードを強化する意義が薄かったり、日本語のローカライズに多少の抜けがあったりと、気になるポイントもいくつかあったが、この底なしのローグライト体験は久々に味わうレベルのものであった。手なりでクリアできるローグライトが増えてきた今こそ、1勝の重みに価値がある本作に手を出してみてはいかがだろうか。























