シンプルさに秘めたハイパワー フラッグシップスマホ『ASUS Zenfone 12 Ultra』レビュー

フラッグシップスマホ『ASUS Zenfone 12 Ultra』

 2025年5月、ASUS Japanから同社の新しいスマホ『Zenfone 12 Ultra』が発表された。毎年恒例、Zenfoneシリーズのアップデートだ。

 Zenfoneシリーズは、ひとつ前のモデル『Zenfone 11 Ultra』にて大胆なデザイン変更があった。『Zenfone 10』までは手のひらに収まるコンパクトサイズが特徴だったが、『Zenfone 11 Ultra』では一気に大型化。大画面とハイスペックが持ち味となった。

 今回の『Zenfone 12 Ultra』もまた、大画面を引き継いだデザインとなっている。コンパクトサイズが好きだった人にとっては今年も思惑が外れた結果となってしまったが、大画面だからこその良さがあるのも事実。改めて『Zenfone 12 Ultra』のレビューをお届けしよう

より静謐さを突き詰めたシンプルデザイン

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 『Zenfone 12 Ultra』のパッケージは環境負荷を抑えたエコ仕様だが、デザインのおかげか意外にも迫力がある。近年、多くのメーカーが紙のパッケージを採用しているが、せっかくの高級プロダクトなのにパッケージが簡素だと寂しくなるのも事実。そこをカバーするのはデザインの力なのだろう。

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 同梱物は、スマホ本体、半透明のスマホケース、充電ケーブル、SIMピン。アダプターは付属していない。

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 ディスプレイは6.78インチのOLEDで、解像度は2,400×1,080ピクセル。今回のモデルは去年の『Zenfone 11 Ultra』と多くの部分でスペックが共通しており、ディスプレイもそのひとつ。最大144Hzの滑らかなリフレッシュレートも継続で、相変わらずスマホゲーム適正も高い。

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 背面デザインは製品名を刻印したとてもシンプルなもの。シルクのような滑らかな手触りで光沢感は控えめだ。

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 底面は左端に充電のためのUSB-C端子が、右端に3.5mmヘッドホンジャックが搭載されている。有線イヤホンやヘッドホンが使えるのもZenfoneシリーズの持ち味であったため、この続投は嬉しい。ハイレゾ音源もお任せ。

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 同梱のケースを装着すると、このような見た目となる。このケースは曇りガラスのような半透明デザインで、背面の色や刻印がうっすらと見える。

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 側面は半透明ではなく全透明。ケース無しではかなりサラサラとして滑り落ちそうになるので、ホールド感が向上する透明ケースはぜひ装着したい。本体デザインもそれほど損なわないので、セットとして捉えると良さげだ。

 CPUにはハイエンド向けのSnapdragon 8 Eliteを採用。メモリは12GBと16GBが、ストレージは256GBと512GBが用意されている。バッテリー容量は5,500mAhで、ワイヤレス充電にも対応。

重いゲームも安心して任せられる

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 『Zenfone 12 Ultra』が搭載するSnapdragon 8 Eliteは非常にパワフルで、スマホゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』の画質設定を全項目最大値にしても難なく動作する。実際、『Zenfone 12 Ultra』のCPUやディスプレイ性能はASUSが昨年末に発表したゲーミングスマホ『ROG Phone 9』と同等のもので、もはやゲーミングとしても扱えるレベル。背面の発熱もわずかで、ケースを装着すればほとんど気にならなかった。

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 スマホの処理性能を最適化できるアプリ『Game Genie』もインストールされているため、一段とゲーミングスマホらしくみえる。『Game Genie』を使えばゲームごとにスマホの性能を変更でき、たとえば『ゼンレスゾーンゼロ』では消費電力と引き換えに処理性能を向上させるXモードを利用し、平時は省エネモードで過ごす、といった設定も可能。

 『Game Genie』の設定でどれほど処理性能が変わってくるのか、Geekbench 6にてベンチマークを計測してみた。まずは通常時として設定されているダイナミックモード時のスコア結果からみていこう。

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 結果は、シングルスコア1,693、マルチスコア6,372、GPUスコアが11,532。Snapdragon  8 Gen 2搭載をやや上回るシングルスコアで、GPUスコアもほどほど。実際、ダイナミックモードで『ゼンレスゾーンゼロ』をプレイ中は、エフェクトが増加するとカクつくこともあった。

 次は処理性能を引き上げるXモードで計測してみよう。なお、非ゲームプレイ時にシステムモードを変更するには、クイック設定からアクセスできる。

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 結果は、シングルスコア3,034、マルチスコア9,509、GPUスコアが20,202。いずれの数値も大幅アップしており、GPUスコアにいたってはゲーミングスマホである『ROG Phone 9』に匹敵する数値を叩き出している! 「スマホゲームを快適に遊びたいけど、ゲーミングスマホはちょっと…」という人は、シンプルながらパワフルな『Zenfone 12 Ultra』を選べば満足できるに違いない。

自然派スタイルのカメラは継続

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 ここからはカメラ機能を見ていこう。目に見える違いとして、レンズ周辺のデザインが変更されている。シルバーのベゼルとガラストップの天面は、いかにも高級な印象だ。

 カメラの構成はトリプルカメラ(広角レンズ+望遠レンズ+超広角レンズ)。採用されているセンサーやレンズの明るさなどは『Zenfone 11 Ultra』から変わっていない。ただし手ぶれ補正は進化しており、電子式と光学式を組み合わせた6軸ハイブリッド手ぶれ補正が、3.0→4.0へとバージョンアップしている。補正レベルは『Zenfone 11 Ultra』と比べて約66%アップしているとのこと。

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見たままの絵を残す自然派な仕上がりは、前モデルゆずり。ズームの違いも比較していこう。
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こちらは超広角(0.7倍)での撮影。解像度は1300万画素。
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続いて、広角(1倍、メインのカメラ)での撮影。解像度は3200万画素。
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広角レンズでのデジタル2倍ズーム。
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望遠による光学3倍ズーム。解像度は3200万画素で、こちらにも光学手ブレ補正が入っている。
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望遠での撮影は10〜30倍までのデジタルズームに対応している。こちらは10倍ズームで撮影したもの。

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 最大の30倍までズームするとここまで寄れる。HyperClarity機能によりズームしても鮮明さを保てるが、実用面では10倍までだろう。筆者は望遠での撮影が好きで、3倍〜5倍での撮影をよく使っていた。

ローカルで使える、ASUS流の消しゴムマジック

 『Zenfone 12 Ultra』は、AI機能についても力を入れている。それ体現する機能のひとつが、ローカルで使える『AI消しゴム(AI Magic Fill Beta)』機能だ。Googleの消しゴムマジックのようなAIレタッチ機能なのだが、ネットワークに繋がっていなくとも使えるのが大きな特徴。ただし、初回起動時に1.8GBほどのデータダウンロードが必要となる。

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 『AI消しゴム』を使うには、ギャラリーを起動。編集をタップすると、左下にAI機能のアイコンが表示されるのでこれをタップ。あとは消したい対象をタップor指で丸く囲んで、「消去して生成」を選択。一連の流れは消しゴムマジックと同様だ。

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 上記の写真では映り込んだ人の足を消してみた。精度についてはほどほどといったところではあるが、ローカルでこれだけ動くなら実用圏内。待ち時間も10秒ほどで、この手軽さなら電車などの移動時に「さっき撮影した写真を修正しておこう」といった、ながらレタッチもできそうだ。

 試しに、Googleの『フォト』アプリで使える消しゴムとの精度の違いを見比べてみよう。こちらはネットワーク環境が必須となる。

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 写真左が『Zenfone 12 Ultra』のAI消しゴムで修正したもの、写真右がGoogleの消しゴムマジックを使ったもの。意外にも大きな違いがなく、ローカルでこれだけ消せるならむしろそっちの方が良いのでは? 通信料や場所を気にせず何度も再生成できるのがローカル強みでもある。

まだまだあるぞ、独自のAI機能!

 『Zenfone 12 Ultra』で使えるAI機能はこれだけではない。主な6つの機能としては以下が紹介されている。

AI Transcript 2.0(Beta)…レコーダーアプリでのリアルタイム文字起こし、要約機能
AI Article Summary(Beta)…Webサイトの内容を要約
AI Document Summary(Beta)…PDF、ワードなどの文書を要約
AI Call Translator 2.0(Beta)…通話時のリアルタイム翻訳機能。WeChatなどサードパーティの通話にも対応
AI Noise Cancellation…通話時のノイズを除去
かこって検索…ホームボタンを長押しするだけで、Googleのかこって検索が可能

 さすが「AISnapinStylepic.」をハッシュタグとするだけあり、AI機能がてんこ盛りだ。実際に、レコーダーアプリでのリアルタイム文字起こしを試してみよう。

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 精度も申し分なさそうだ。また、要約を使うとクラウドにアップロードして最適な結果を求めるか、プライバシー重視のためローカルでの処理を求めるか、それぞれ選ぶことができた。こうした配慮もありがたい。

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 閲覧中のWebサイトの内容を要約する「AI Article Summary(Beta)」機能は、専用アプリ「AI記事への要約」へと記事をシェアすることでサイトの内容を箇条書きにまとめてくれる。論文のような膨大な文字数のサイトを見る際は、この機能が便利だろう。

 また、動画撮影の場面でもAIが活躍している。被写体を自動で認識し追従する「AI Tracking」、ボケ感のあるシネマチックな映像を残せる「AI Portrait Video 2.0」、動画収録の音声をクリアに記録する「AI Voice Clarity」などが新たに登場した。先述の進化した手ブレ補正も相まって、『Zenfone 12 Ultra』では動画機能がより一層楽しめそうだ。

パワフルが叶える。ゲームも、AIも

 本機が採用しているSnapdragon 8 Eliteは、独自のNPU『Hexagon NPU』を搭載している。実際、リアルタイム文字起こしやWebサイトの要約などにはNPUが利用されており、スマホローカルで「実用レベル」で使えるNPU性能が手の届くところまで来たことを実感した。

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 加えてCPU性能もゲーミングスマホに匹敵するほどパワフルで、先述したROG Phoneシリーズとの境界は曖昧になっていく一方だ。ここまで来ると、カジュアル〜快適なスマホゲーム体験を求めるなら『Zenfone 12 Ultra』でも十分。対人戦や物理トリガーなど、さらなるゲーミング特化を求める人はROG Phoneシリーズ、といった棲み分けでも良いだろう。

 デザインこそシリーズでもっとも「禅らしさ」を感じさせる仕上がりだが、『Zenfone 12 Ultra』の中身はとてもパワフル。そのパワフルさがあるからこそ、最新ゲームもAIも難なく動かせるのだろう。シンプルさの中に秘めたハイパワーというギャップは、いかにもASUSらしいテックスタイルではないか。

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