20代、30代、40代が触れて感じた『Xperia 1 VII』に映る“これまで”と“これから”のソニー

2025年5月15日、都内で新型フラッグシップスマートフォン『Xperia 1 VII(エクスペリア ワン マークセブン)』の関係者向け体験会が開催された。6月上旬以降に発売を予定している本機は、カメラ機能・オーディオ性能ともに従来機から大幅な進化を遂げており、価格はSIMフリーモデルで約20万5,000円前後と見込まれている。
会場では、実際に撮影や視聴体験ができる各種ブースが用意され、Xperiaシリーズの最新技術を体感できる貴重な機会となった。本記事では、その注目機能を中心にレポートする。
AIが追尾し、構図も整える。ジンバル要らずの「AIカメラワーク」

今回の注目機能のひとつが、ソニー独自の「AIカメラワーク」だ。まるでジンバルを使用しているかのようなスムーズな手ブレ補正と、自動構図調整によって、被写体を常にフレーム中央にとらえ続ける機能である。

体験会では、あらかじめ立っているモデルにカメラを向け、顔をタッチして被写体として認識させるだけで、自動的にセンタリングされるデモンストレーションが行われた。
撮影中、被写体が動いても構図を維持し続け、ユーザーは「動かしすぎるとブレてしまう」など、撮影に集中しすぎることなく自然にVlog風の映像が撮影可能。まさに「日常を切り取る」ための直感的な撮影体験が実現されている。

「登山とかキャンプとか、アウトドアが好きなんですよ。そういうときに人と風景を入れた動画を撮ろうとすると、これまではフレームアウトしないように構図を気にして、けっこう気を張ってたんですよね。でもこれは、撮る側がそんなふうに“カメラを構えなくていい”っていうのがほんとラクで。気持ち的にも余裕ができるし、自然な表情や風景をそのまま残せるのがすごくいいなって思いました。αシリーズとかZVシリーズでVlogのノウハウを積んできたソニーならではの工夫だなって感じました」と、40代編集者の小川は感想を話してくれた。
横動画から縦トリミングも可能、「オートフレーミング」も強化

もうひとつ注目のカメラ機能が「オートフレーミング」だ。これは、横向きの映像をリアルタイムで縦動画へと切り出し、SNSショート動画向けなどの素材を同時生成できるもの。自撮りや家族の記録といったシーンでも、編集の手間なく縦動画を取得できる。

『Xperia 1 VII』を腰のあたりに構えたまま、画面を注視せずに撮影できるため、子どもやペットに目線を向けたまま、その瞬間を楽しみつつ、しっかり記録に残すことができる。
切り出し時の倍率や画質にも配慮されており、一般ユーザーはもちろん、クリエイター目線でも十分に使える仕上がり。スマホ1台で複数プラットフォーム向けの素材を一度に収録できる点は、短尺コンテンツの需要が高まる中、クリエイターにとっては心強い機能だ。

ちなみに、設定を変更すれば縦動画だけでなく横動画への切り出しも可能で、よりワイドな構図でしっかり見せたい場面にも対応できる。シーンや用途に合わせて柔軟に形式を選べるのはありがたいポイントだ。

「自分にも子どもがいるんで、日常のちょっとした瞬間を自然な形で残したいなって思うんですけど、実際は撮りながらしゃべるってけっこう難しいんですよね。でもこれは、まるでジンバルを使ってるみたいに滑らかで、Vlogっぽい雰囲気もあって驚きました。先ほどのAIカメラワーク機能とも似ていますが、カメラをガッツリと構えることなく、自然な表情のまま会話しながら撮れるのがすごくいいなって思いました」と30代編集長の中村は語った。
ウォークマンの血統を継ぐ「高音質設計」──スマホで“音”を聴く体験をよりリッチに

音響設計には、ソニーのウォークマン開発チームが深く関与している。オーディオジャックには、高音質専用のはんだ(最新版では金を添加)や非磁性銅メッキの高純度抵抗を採用し、音の歪みを極限まで抑制。さらに、回路設計レベルでオーディオチューニングが施されており、スマホとは思えないほど伸びやかで艶やかな音場を実現している。
実際に『Xperia 1 VII』で音楽を再生すると、ギターの弦の余韻やピアノの鍵盤を離す瞬間の音の伸びなど、これまで聞き逃していたような微細な音までがクリアに再現される。空間系シンセが使われた楽曲では音の広がりが際立ち、特にビリー・アイリッシュ「Birds of a Feather」やAdo「新時代」などとの相性は抜群だった。

「趣味で音楽制作などもやっているんですが、自宅の制作環境に近い音がスマホでそのまま聴けるのには正直驚きました。リバーブが原音に忠実に再現されていて、ギターの録り音もリアルに伝わってくる。空間の広がりもあって、聴きたい部分に自然と意識が向くし、これまで埋もれていた低音や高域のディテールまでちゃんと聴こえるんです。高音の曲でのコーラスの上の方や息遣い、ピアノの鍵盤をリリースしたときの繊細な響きまでしっかり拾ってくれる。しかも、これで外付けのDACとか使ってないんですよ。“スマホの音ってこんなもんだよね”っていう期待値を超えてきた感じ」と音にうるさい中村も唸った。
なお、スピーカーの性能も大きく向上しており、サウンドチューニングにはニューヨークの名門・バッテリースタジオが関わっている。実際、スマホの内蔵スピーカーだけで音に包まれるような立体的な広がりを感じられたのは、強く印象に残った。
「超広角カメラ」の性能も刷新、自然な色と質感をそのまま描写

新たに搭載された超広角カメラは、センサーサイズを2.1倍に大型化。これにより、暗所でも低ノイズを保ちつつ、イルミネーションのような明暗差の大きい被写体でも白飛びを抑えて描写可能だ。

『Xperia 1 VII』と『iPhone 15 Pro』を並べて、同じ暗所環境で撮影を試してみた。比較してみてまず感じたのは、Xperiaのほうがやや寒色寄りのトーン。ただ、両機ともに暗所に強いカメラであることは間違いない。その中で「ノイズの少なさ」という一点にフォーカスすると、今回は『Xperia 1 VII』に一歩リードを感じた。
- 『Xperia 1 VII』で撮影した画像
- 『iPhone 15 Pro』で撮影した画像
また『Xperia 1 VII』で特に印象的だったのは、最近よくあるAI処理のようにテクスチャーまで作り変えてしまうような“やりすぎ感”がないところ。気になるノイズだけを的確に抑えつつ、光のニュアンスやシーンの空気感はしっかりと残してくれる。その自然な仕上がりに、「なるほど、これは確かに暗所に強いと言われるわけだ」と納得した。
というのも、ソニーはあえてAIによる過度な補正を排除し、センサー本来の実力を活かすチューニングにこだわったという。まさに“自然な解像感”と呼ぶにふさわしい仕上がりとなっている。
「ブラビア」由来のディスプレイ設計、映像制作者の意図を忠実に再現

ディスプレイには、ソニーのテレビブランド「BRAVIA(ブラビア)」のクリエイターモードが搭載されている。映像制作者が意図した色やコントラストをそのまま表現することを目的に、スマートフォン向けにAIが自動チューニング。どんな動画コンテンツも、正確な色味と階調で楽しめる。
これまで人手によって補正されてきたチューニングを、AIが学習・再現する形で引き継ぎ、エンタメだけでなく制作現場でも信頼できる表示性能を実現しているのだという。
前面と背面の2つの照度センサーが、周囲の光環境をリアルタイムで検知して、画面の明るさや色味を常に最適に調整してくれる。直射日光の下でも、逆光の中でも、ちゃんと見やすい表示にしてくれるのがありがたい。派手さはないが、使ってみると「あ、これ地味に助かるな」と実感する機能だ。
ソニーの哲学が結実した「Xperia Intelligence」──“黒子のAI”で人の感性を支える

『Xperia 1 VII』に搭載されたAI機能群は、「Xperia Intelligence」と総称されている。Googleのような自律型AIとは異なり、あくまでユーザーの感覚を“補完”するアシストAIとして設計されている点がソニーらしい。
この思想の背景には、ウォークマン、α、BRAVIAなどソニー各部門の専門家が連携し、“黒子的に人間を支えるAI”を作るという哲学があるという。たとえばホワイトバランスや視聴チューニング、構図支援など、長年培われた知見がXperiaに統合されている。
今後もXperia Intelligenceを通じて、より人に寄り添うスマートフォン体験を提供していくという。
3色の光と質感に魅せられる。純正ならではのアクセサリも充実

『Xperia 1 VII』は、スレートブラック、モスグリーン、オーキッドパープルの3色展開。モスグリーンとオーキッドパープルは、見る角度や光の当たり方によって色の印象が変わる繊細なトーンが特徴だ。一方、スレートブラックはマットな質感で、落ち着いた高級感がある。
本体右側にはシャッターボタンが備えられており、片手でも自然な操作が可能。さらに、3.5mmオーディオジャックとmicroSDカードスロットも搭載されている。近年のハイエンドスマートフォンでは省略されがちなこれらの要素を、クリエイター向けとしてあえて残している点は好感が持てる。
純正アクセサリとして『Style Cover with Stand for Xperia 1 VII(XQZ-CBFS)』も用意。本体と調和するデザイン性に加え、背面のエンボス加工や段差のないカメラ設計など、ディテールへの配慮が光る。
さらに、好評のカメラ用グリップを搭載しており、撮影時の安定感も確保されている。スタンドは縦横両対応で、動画視聴や自立撮影にも便利。リングストラップも付属し、持ち運びやすさにも配慮されている。
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同じソニーという軸で振り返ってみると、誰にとっても「自分だけの“マイ・ファースト・ソニー”」があるように思う。たとえば40代の小川はPlayStationであり、30代の中村はウォークマンであり、そして20代の林はαシリーズであり。世代ごとに、それぞれの記憶に刻まれた“ソニーの輝き”がある。
これまで、ウォークマンやプレステなど、ソニーの製品は常に時代の先端を走ってきた歴史があり、「powered by Sony」な存在だったものが、今では『Xperia 1 VII』という形でひとつの結晶にまとまっているように感じた。最新のスマートフォンがAI体験に向かっていく中で、ソニーはあくまで「人の体験」に寄り添おうとしている。その違いが、今回の体験会でははっきりと伝わってきた。
『Xperia 1 VII』は、これまでのソニーの技術や美学を凝縮した一台であると同時に、これをきっかけに“初めてのソニー”に触れる人たちの、新しい物語の始まりにもなっていく。そんな、次の世代への種を感じさせるような体験となった。
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