「秘密結社鷹の爪」の吉田くん、なぜAIVTuber化? 仕掛け人に聞く、AI×IPが生み出す“新たなエンタメのカタチ”

「秘密結社鷹の爪」吉田くん、なぜAIVTuber化?

AIキャラクター同士による討論番組も可能に。DLEが見据える次世代エンタメとは

ーーAIキャラクター同士が討論する番組ができれば、既存のバラエティ番組とはまた違った楽しみ方もできるかもしれませんね。

川本:今回の取り組みのなかで、とくに面白いと感じたのがAIキャラクターによる会話劇が中心になっている点です。やはり、“会話のやりとりの妙”こそがコンテンツの面白さを左右する大きな要素だと考えていました。もちろん、映像のクオリティを高めるというアプローチも重要ですが、今回の動画のように会話が主役になるケースでは、必ずしも高精細なアニメーションでなくてもキャラクター同士の会話内容や個性がしっかり伝われば、魅力的なコンテンツになるなと。

 だからこそ、DLEさんとご一緒することで、キャラクターの魅力を活かしつつ、会話中心でも成立するコンテンツを作っていきたいという思いがありました。

FROGMAN:AIが本当に変えていくのは「表現の文法」だと思っていて。つまり、いまあるアニメやキャラクターの作り方にAIを当てはめるのではなく、AIを前提にしたまったく新しいエンタメのかたちが出てくるということです。

 もちろん、AIによって作業が楽になる部分はあると思います。でも、それ以上に大きいのは、「いままでアニメを作れなかった人たちが、作れるようになる」ことなんですよ。

 最近流行っているショートドラマも、AIの活用によって1本あたり10万〜20万円程度の低予算で作ることも可能になっています。さらに、実写ドラマを作ったことがない人でも、スタッフを集めたり俳優を手配したり、カメラを回したりしなくても、ちょっとAIの使い方を学べばショートドラマを作れてしまうんですね。

 私自身も、数分のフルアニメーションをAIで作りましたが、これを従来通り真面目に作ろうとしたら、数百万円はかかりますし、少なく見積もっても40〜50人のスタッフが必要です。でも、AIの力を使えばたったひとりで、しかも30時間ほどで完成させました。絵は1枚も描いてないんですよ。このように、AIを活用することで気軽にエンタメを生み出せる時代が来つつあるんです。

ーーいまのお話を聞いて、どういう判断軸で技術を選定し、エンタメに実装しているのかが気になりました。とくにAI VTuberというジャンルでは、各社それぞれ取り組みはされているものの、正解がないと感じています。この辺りはどのように捉えているのでしょうか?

椎木秀樹(以下、椎木):現在のバーチャルインフルエンサー市場を見てみると、VTuberとノンヒューマン型インフルエンサーの割合が7:3になっていると認識しています。後者はYouTubeではなくInstagramなどを中心に活動し、イラスト調のビジュアルやアパレルモデルのような形式で登場するキャラクターが、市場全体の約3割を占めていると言われています。ここに、いわゆるAIキャラクターという文脈も入ってくるわけですが、現時点では市場全体に対してインパクトを与えるまでには至っていないのが現状です。

 とはいえ、VTuberの著しい成長や、ノンヒューマン型インフルエンサーの台頭を見ればわかるように、AIキャラクターも今後確実に存在感を増し、関連市場は大きく広がっていくと見込んでいます。それぞれのタイプに明確な違いはありますが、共通して言えるのは“なかの人”が表に出てこない、あるいはそもそも存在しないという点だと思います。

 弊社のキャラクターにはなかの人がいますが、あくまで裏方として機能しており、表に姿を現すことはありません。我々が目指しているのは、AIキャラクター自身が自立して動けるようなかたちへと進化させることです。AIとキャラクターを掛け合わせることで、これまでにない新しいエンターテインメントのカタチが生まれると考えています。その実現に向けて、AIキャラクターをどう設計し、どう育てていくかについて試行錯誤を重ねているところですね。

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