超広大な世界をさまよう究極の倉庫番パズル『A Monster's Expedition』&手軽なスピンオフ『The Electrifying Incident: A Monster Mini-Expedition』レビュー

『A Monster’s Expedition』というゲームについて紹介したい。
本作は2020年にDraknek & Frinedsという開発陣によって制作されたゲームだ。超広大なオープンワールドをさまよいながら、新しいエリアを開拓し続けていくことになるパズルである。
シンプルな操作性でありながら、閃きや試行錯誤を求められるストイックなゲーム性がウリの本作は、どこまで行っても終わりが見えないほどのボリューム感があり、パズルオタクにぴったりの作品だ。
このたび、4月16日に『The Electrifying Incident: A Monster Mini-Expedition』というスピンオフも発売された。こちらは数十分で終わる短編ながら、本家の味わいをちゃんと残しているので、そちらも合わせて紹介しよう。

文明崩壊後の世界をモンスターが練り歩く異常なパズルゲーム『A Monster’s Expedition』
本作の舞台はイングランドランドという土地だ。名前からしてもうちょっと面白いのだが、すでに世界は一度崩壊しており、人類は見当たらない。その代わり、人類が遺したものが展示されており、ロアを読むことができる。

ロアの種類はかなり豊富であり、向かった先の島々で必ずひとつ以上は見つかるので、パズルの報酬として機能している。
内容も、人類史を知らないモンスターの視点で書かれているので、どこかピントがずれており、いちいち笑ってしまう。あまりにジョークが高度すぎて何を言っているのかよくわからないことすらあるが、それも含めてご愛敬だ。筆者が特に好きだったのは靴下の遺物で、両手にはめると突然喋り始めるという解釈がなされていた(おそらく幼児向け番組などで作られたパペットの表現のことを言っているのだろう)。

肝心のパズルのほうは、いわゆる倉庫番の一種だ。モンスターを動かして木にぶつかると、反対方向に倒れ、丸太になる。その状態で上に乗ると橋になるが、同じポイントに別の丸太を被せることで筏に変わる。また、丸太を押すときの方向も重要で、縦方向に押すと1マス分動いてくれるものの、横方向から押すとそのままころころと転がっていってしまう。そのほかにもいくつかルールはあるが、基本的には方向キーしか使わないので、非常にのんびりしたペースの作品だ。
たったそれだけのルールでありながら、意外と思った通りに動かず、ドンピシャのところまで転がっていってくれたときの感動はなかなか深い。ボリューム感からハードコアに思われるかもしれないが、数問だけ解いて終わりという遊び方をしても楽しい一作だ。

また、本作はアップデートによって次に解くべき島が示されるオプションが追加された。それまではあまりに広大すぎて、どこが解けるパズルなのかわからなくなってしまう問題があったが、これによってリニアに遊ぶこともできるようになった。
プレイヤーによっては100時間以上をイングランドランドで過ごしている猛者もおり、程よい難易度のパズルを無限に遊んでいたいという人にはうってつけの一本だ。

お時間がない人でも良質パズルを味わえる 電気ビリビリのショートパズルアドベンチャー『The Electrifying Incident: A Monster Mini-Expedition』

とはいえ、流石にそこまでの長時間のパズルを遊ぶ暇はないという人も多いだろう。そこで、今回同じ開発者が作ったスピンオフパズル『The Electrifying Incident: A Monster Mini-Expedition』も紹介しておきたい。
本作は名前の通り、電気をモチーフにした作品だ。今回のモンスターはアームのようなものを扱い、道中に落ちている箱を掴んで動かすことができる。
箱は通電性があり、特定のスイッチの上に置くと扉を開けてくれる仕組みだ。また、箱と箱を繋ぐことで離れた場所に電気を送ることもできる。

そのうえ、アームは壁などにぶつけると90度ずつ曲げることができるので、壁の裏などにうまいこと箱を配置する必要も出てくる。
前作のように面白いロアが読めるわけではないが、あまりに難しい問題もなく、頭の体操としてちょうどいいバランスだった。特にオチはギミックを利用したまさかの展開が待っており、なかなか衝撃的だったので、ぜひ最後までプレイしてみてほしい。
























