26年の時を経ても壮大なストーリーは色褪せない 現代に蘇った傑作RPG『サガ フロンティア2 リマスター』レビュー

3月28日、『サガ フロンティア2 リマスター』が発売された。
こちらは1999年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたRPGのリマスタータイトルだ。ふたりの青年の運命が次第に交錯し、三代以上にも渡る壮大な物語が紡がれる本作は、26年の時を経ても決して変わらぬ感動があった。
一方で、サガシリーズ全体からしてみると、戦闘の醍醐味やシナリオ選択の自由度について考えさせられる点もあった。ひとつずつレビューさせていただく。

王族にして術不能者ギュスターヴと、両親の死の真相を調べる男ウィル・ナイツの物語
本作はサガシリーズにしては珍しく、用意された長大なストーリーをひとつずつ追っていくゲームだ。ヒストリーチョイスと銘打たれたシステムであり、プレイヤーは世界地図の脇に置かれた年表を一行ずつ追っていくことになる。
長いことシナリオ面について高く評価され続けてきたタイトルだけあって、本作はのっけから滂沱の涙を流すこと間違いなしである。

王族でありながら、世界中の誰もが持つアニマを体に宿していなかったせいで、王妃ともども国を追われたギュスターヴは、荒れた子ども時代を送る。彼が母や周囲の人物に支えられながら少しずつ人間性を獲得していく過程はただただ感動的であり「これはたしかに傑作かもしれない……」と目頭がどんどん熱くなっていった。

ギュスターヴの人生を追いかけるシナリオと並行して用意されているのが、両親の死の真相を追いかけるディガー(遺跡などで金目のものを探す冒険者のこと)であるウィル・ナイツの物語だ。プレイヤーは彼らのシナリオのどちらから読んでもいいが、結果としてすべてのシナリオを読むことになるのは変わらない。
貴族の権謀術数や戦争のシーンが多いギュスターヴ編と比べて、ナイツの物語は冒険者らしく、一般的なRPGに近い味わいがする。「エッグ」という凶悪な力を持つ卵に振り回され、生涯を賭けてエッグと戦うナイツの物語もまた、ギュスターヴとは異なった感動を提供してくれる。特にウィル・ナイツが老年に差し掛かってからの怒涛の展開は必見だ。

登場人物が山ほどいるうえに、キャラクター相関図といったものもないので、一読しただけではすべての関係性を理解するのが難しいのは問題だが、それを差し置いてもこれだけ重厚長大な物語はゲーム史においても珍しいものだろう。RPGにシナリオの完成度を求めるプレイヤーは、一度は遊んでおきたいタイトルである。

一方で、ゲームプレイに関しては、サガらしくないほど一本道であり、シリーズファンにとって好みが分かれる点だ。
サガといえば『ロマンシング サ・ガ』以降、フリーシナリオが導入され、好きな場所に出向いて気の向くままにイベントをこなしていくのが鉄板の遊びだったが、本作ではそうは行かない。ギュスターヴ編かナイツ編を選び、ある程度まで進めるともうひとつのシナリオしか選べなくなる。
ストーリー展開は他のシリーズ作に比べてずっと面白くはなったものの、行き先が固定されることで、パーティー編成もいちいち見直さなければならなくなったうえに、どこへ行ったらシナリオが進むのかわかりづらいシーンも多かった。ダンジョン内のアイテムの回収もいつまでならできるのかも謎であり、昔ながらのRPGにありがちなシナリオ進行の制約を強く感じる作品であった。

とはいえ、今回「成長能力の継承」というシステムが追加されたことにより、キャラクターを育てやすくなったのは素晴らしい変更点だ。フレーバー的に補完されているわけではないが、これによってキャラクターを成長させることが無駄ではなくなったのが大きく、また新キャラクターがいきなり活躍できるようにもなった。
なお、昨今のスクウェア・エニックスが発売したリマスター作品に共通して言えるものなので細かくは拾わないが、追加要素はどれも素晴らしいものだった。オートセーブや倉庫、倍速機能やマップアイコンなどなど、ゲーム体験を向上させる小さな変化はどれも縁の下の力持ちであり、邪魔に感じるものは一切なかった。これでわざわざオリジナル版を買う必要はなくなったと断言できる。

続いて、戦闘についてだが、こちらもシリーズ恒例の癖のあるシステムではあるが、他作品に比べると少し味気ないように感じてしまった。
本作は「パーティー」「デュエル」「コンバット」という三種類の戦闘システムに分かれている。パーティーはいわゆる王道の多対多のバトルであり、デュエルは一対一の攻防で、コンバットはパーティーバトルの上にSRPGの陣取り合戦が乗っているものである。
パーティーバトルは皆が想像するわかりやすい戦闘システムだ。シリーズの要であるひらめきや連携もあり、基本的にはいつも通り遊んでいけば問題ない部分である。

気になったのはデュエルとコンバットである。デュエルではコマンドが「斬る」「払う」などのシンプルなものに統一され、それらを四つ組み合わせることで大技をひらめくことができる。
たしかに適当に技を組み合わせて大技になった瞬間は喜びがあるが、結局のところこのデュエルで技を入手しなければ後半に苦労するだけなので、閃かなければ閃かないほど損なのだ。また、一対一という戦闘自体、そこまで工夫の余地もなく、交互に殴り合う以上の醍醐味が感じられなかった。

そしてコンバットに関しても、悪名高い「サウスマウンドトップの戦い」以外はほとんど苦戦することはなく、ただ単に複数回のショボい戦闘をやらされるだけで、感動はなかった。一回一回の戦闘の処理がもっとシンプルだったらテンポが良かったように思う。

そもそもキャラクターが多すぎて入れ替わりが激しすぎるがゆえに、ラスボスを除けばパーティーを構築したり、ひとりひとりをじっくり育てたりする楽しみはあまりなく、目の前の戦闘を消化する瞬間が多かったように感じられた。長いスパンの物語を描くために犠牲になってしまった部分だろう。シリーズ恒例のLPについても、回復手段が豊富すぎてほとんど無意味だったのも気になった。
ラスボス戦は最高の盛り上がりを見せるものの、リメイク前の『ロマンシング サ・ガ2』同様にラストダンジョンが隔離されているために、相手の出方を見てから装備を整えることに限界があるため、構成を考える楽しみがスポイルされているのも残念だった。どうせ回復ポイントが追加されているのだから、倉庫も解放されていてもよかったのではないか?
これらの問題点については、あくまで現代のRPGや、昨今のサガシリーズに慣れてしまった筆者が考えるものなので、当時のゲーム環境と比較していないという意味ではフェアではないかもしれない。しかしながら、戦闘やゲームプレイにおいてはまず間違いなく昨今のサガシリーズのほうが進化しており、本作はあくまで90年代に作られたシナリオドリブンなRPGなのだ。そこを念頭に置いてプレイしていただきたい。

戦闘やゲームプレイについては26年前のRPGであるという以上の感想は抱かなかったが、シナリオに関しては群を抜いて素晴らしかった。時代を駆け抜けていった者たちが紡ぐ壮大なサーガは、流し読みで済ませるにはあまりにももったいない。カウチにでも腰掛けて、ゆっくりと楽しんでもらいたい。

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