Chat GPT搭載も視野に。音声コントロールで使い勝手が増したフォルクスワーゲン新型「GOLF」レビュー

コンパクトモデルの教科書とも言われるフォルクスワーゲン「GOLF(ゴルフ)」。2019年に発表された8代目モデルがマイナーチェンジ。通称「ゴルフ8」から「ゴルフ8.5」へと進化を遂げたモデルの試乗会の様子をお届けしたい。
「ゴルフ」はフォルクスワーゲンが誇るロングセラー車
フォルクスワーゲンは1937年に設立されたドイツの老舗ブランド。ビートルの愛称で知られる「タイプ1」はあまりにも有名。ビートルは同ブランドの主力モデルとして世界中で販売され、ギネス記録にもなった。そんなビートルの後を継ぐモデルが「ゴルフ」となる。
同車は1974年に発表され、扱いやすいボディサイズ、クルマからのわかりやすい情報伝達、ドライバーに忠実なレスポンスなどコンパクトカー作りの「指南書」ともいえるモデルだ。それは代を重ねても同じで8世代目となった現行車もコンパクトカーのベンチマーカーとなっている。

IT化を加速させている「ゴルフ8.5」
今回のマイナーチェンジした「ゴルフ8.5」の変更点はいくつもあるが、大きな特徴は新OSの採用だ。「MIB4」と呼ばれる新システムは音声アシスタント対応で「ハロー、IDA(アイーダ)」か「ハロー・フォルクスワーゲン」と呼びかけると空調やオーディオの操作が可能となっている。
またブランド発表では今後、ChatGPTを標準装備する予定と発表されたが、現在は未搭載。現状では「お腹がすいた」と曖昧な問いかけに近隣のレストランなどがセンターディスプレイに提案されるが、少し物足りない回答。
しかしながら天気予報やニュースなどは視線をそらすことなく情報を得られるので、目的地の天候などを知りたいときは便利だろう。なお地図(ナビ)は自動的にアップデートされるそうだ。このようにデジタル面でのアップデートに合わせる形でセンターディスプレイは従来の10.25インチから12.9インチへと大型化。また従来モデルでもっとも不便と評価されていた、バックライトなしのエアコンやオーディオの音量調節のタッチスライダーにバックライトが装備され、夜間の視認性が向上した。

マイルドハイブリッドで優しい走り
まず、試乗したのはガソリンエンジンの「eTSIスタイル」(443万7000円〜)。


デジタル化の一方でエクステリアデザインも手が加わっており、例えばヘッドライトが2灯式になり、ヘッドライトには「IQ.light」を採用。このライトはハイビームの照射距離が500mに拡大され、夜間時の視認性が大幅にアップしている。また「光りもの」としてはグリルに鎮座するVWのエンブレムはイルミネーション付きに。大きなデザイン変更のないインテリアだが、シフトまわりなど細部を見ると見た目の質感も向上しているのがわかる。

そして走行時のファーストインプレッションは乗り味がより快適になり、マイナーチェンジ前より柔らかな感じを受けた。

パワーユニットも見直されており、それまでのリッター3気筒エンジンはフェードアウトし、全モデルで4気筒に。「8.5」のエンジンバリエーションはマイルドハイブリッド搭載のガソリンエンジンと生粋のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの3つ。
マイルドハイブリッド採用は116PSと150PSの出力違いがあるが排気量はいずれも1.5リッター。116PSの方はエントリーグレードで、それ以外は150PSだ。またマイルドハイブリッドのモーターも出力がアップしてる。そして生粋のガソリンエンジンはスポーツグレード用の2リッターターボでマイナーチェンジ前に対して20PSアップの265PSを誇る。
試乗車は1.5リッターユニットでも高出力タイプ。組み合わされるミッションは7速DSGだ。このミッションはスムースな変速が魅力なのだが、発進時のみ若干のタイムラグが感じられる場面も。ただ、今回はそのモーターの出力アップもあり微速時の滑らかさも一段と向上している。
加えてマイルドハイブリッドは発進時にはスターターとしてエンジンを始動するだけでなくエンジンパワーを補う意味でも使われる。なので1.5リッターという排気量の響きから感じる「ここ一番の加速でももう少し!」 といった状況にはならなかった。定速巡航で少しでもアクセルを緩めるとエンジンが休止する「気筒休止システム」もよりスムースになった。ハンドルを握っていると「なるほど、これがゴルフ8.5の走りか」と実感したのは安定性で、路面状況の悪い場所でも室内はフラットに近い。しっかりとしたボディがサスペンションを迅速かつ確実に動かしてくれるので、たとえ旋回中に強くブレーキを踏む場面にあっても不安はない。切り返しの続くような道であっても「よっこらしょ」と構える必要もないし、むしろそれが楽しく感じられる。専門誌的な話ならばフロントに対してリアの追従性をほんの少しだけテンポを遅らせるセッティングが絶妙なのだ。
燃費を考えるとディーゼルもアリ?
次にステアリングを握ったのはディーゼルエンジンの「Rライン」(475万3000円〜)。Rラインは比較的、スポーティ志向なモデルになる。

ディーゼルユニットらしく微速域でも力強く、街中の巡航速度ではアクセルを踏み込む必要性はまったく感じない。エンジン回転でいえばたった1600rpmで360Nmの最大トルクを発揮し、それが2750rpmまで続くので公道上では加速に困ることはない。回転フィーリングも滑らかなのも魅力。ステアリングレスポンスもスポーティなのだけれど安心で快適。しかも高い燃料費が叫ばれる昨今、ハイオクより遥かに安い軽油で済むのも嬉しいところ。
また、ステーションワゴンの「ヴァリアント」も今回ハッチバックモデル同様にモデルチェンジ。ヴァリアントは特にホイールベースが大きく、後席の足元スペースの広さが確保されている。長距離を頻繁にこなすユーザーには魅力的に映るはずだ。

なお日本への導入は未定だが、ヨーロッパでは300PSまで出力を上げた「クラブスポーツ」やニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦を期した348PSを誇る「クラブスポーツ24h」といった魅力的なモデルも登場している。「GOLF8.5」になり、機能やバリエーションともに更に進化を遂げている。今後、予定通り「ChatGPT」が標準装備された際には、より真価を発揮するだろう。今後の展開が楽しみだ。
フォルクスワーゲン
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問 フォルクスワーゲンカスタマーセンター 0120-993-199






















