本格クロカンから街乗りまで、個性が光るコンパクトSUVが秘めたるポテンシャルを試す

個性が光るコンパクトSUVのポテンシャル

 SUV人気は今も継続中だ。背の高いSUVはボディも大きくなる傾向だが、買い物や車庫入れといった普段使いでは取り回しがいい方が精神衛生上もいいはず。それならばコンパクトSUVといった選択肢も多いにあり。日本自動車輸入組合(以下JAIA)の大試乗会で見つけた瀟酒なモデルランドローバー『ディスカバリースポーツ』、フォルクスワーゲン『ティグアン』について語りたい。

正統派英国SUVブランドの本気度

 JAIAの大試乗会はメーカー一押しのクルマが並ぶイベント。そこで編集部がシートを獲得したのは英国の名門、ランドローバー社のディスカバリースポーツ。グレードは『ダイナミックHSE P300e』というモデル。ランドリーバー社は1948年創業。ブランド内には本格クロカン系のディフェンダーや「砂漠のロールスロイス」の異名を持つレンジローバーを抱えるなど「未舗装路」に強いブランドでもある。また2013年には同じく英国の高級車ブランド、ジャガーと統合しジャガーランドローバー(JLR)となった。2023年にはJLRのロゴを変更するなどブランドイメージの向上を図っている。また人気韓国ドラマ『愛の不時着』ではブランドでタイアップしていたので見た記憶がある方も多いと思う。

ランドローバーSUVにもPHEVモデルが登場

 さて試乗車は前述の通り『ディスカバリースポーツ ダイナミックHSE P300e(以下P300e)』で、2023年に受注が開始されたディスカバリースポーツのトップエンドモデルになる。車両価格は1016万円。特長はPHEVを採用したモデルということになろうかと思う。基本は1.5リッターの3気筒ガソリンターボにマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレーンに加えて後輪用には109PS、206Nmのスペックを持つモーターを搭載する。そのシステム最高出力は309PS、540Nmと2tを超える車重でも十分以上のもの。一充電での走行可能距離は約66km。7kWの普通充電では約2時間で満充電になる。

 走りや燃費の面でアドバンテージのあるPHEVモデルだが、3列シートの7シーターというディスカバリーのもう一つの魅力を求めるとP300eは残念ながら当てはまらなくなる。後輪のモーターやリチウム電池を載せる関係でP300eは2列シートの5人乗りになる。

シンプルで使いやすい車内空間は流石

 乗り込むと上質なウィンザーレザーシートが迎えてくれる。この見た目も座り心地も魅力的なシートはP300eには標準装備だ。インパネは極めてシンプル。2024年モデルから刷新され、操作系はほとんどがセンターの11.4インチディスプレイに集約されている。モデルライフの長いディスカバリーだがこのインパネは見た目も新しく、古さは感じさせない。しかしドライブモードや電動パワートレーンの操作画面を出すのに少しばかり慣れが必要と感じた場面もあった。

 後席は4:2:4の分割式になっており、スライドも可能。後席を一番後ろに下げた状態で身長175cmの筆者の膝まわりスペースはかなり余裕があり、運転席よりも率先して後席に陣取りたい気分にもなる。

乗りやすく快適なSUV

 走り出すと快適さが前面に感じられる。試乗車は20インチで低扁平サイズのタイヤを履いていながらも突き上げ感は少なく適度に柔らかいシートと相まって快適至極。また背の高いSUVにあってクルマの姿勢変化も少なく、同乗者にも優しい。自動車専用道への合流も前述の通り300PS以上の最高出力と540Nmの最大トルクは十分以上早く、目標速度に達する。未舗装路では未試乗だがPHEVモデルでも渡河水深限界性能600mmと本気組にも引けを取らない性能も持ち合わせるのはさすがランドローバーだ。

主力モデルがモデルチェンジ

 続いて試乗したのはドイツのフォルクスワーゲンの屋台骨を支えるSUV『ティグアン』。ブランドの世界販売台数首位はゴルフからティグアンに代わっている。そんなティグアンは2024年に3世代目にフルモデルチェンジ。先代に対して全長が30mm大きく、全高は25mm低くなっている。たった数cmと思われがちだが、クルマにとっては大きな数字でこの数値の変更は最新のティグアンをスポーツライクに低く大きく見せている。空力性能も高められ、背の高いSUVながらも0.28と低いCd値(空気抵抗係数)を実現。

フォルクスワーゲンらしさが見えるSUV

 試乗車のグレードはeTSIエレガンス。いわゆる装備充実な主力モデルになる。有事の際にベルトをかけられるVWらしいドアノブを引いて車内へ。ゴルフ8やパサート同様にインパネセンターにあるのは大型インフォテインメントディスプレイ。ティグアンのは15インチサイズで、視認性だけでなく反応も向上している。またステアリングに設置されるスイッチは物理的なものに変更され、慣れてしまえば目視せずに操作可能。この地味とも思えるような改良だが実際の使い勝手はかなり向上している。

 センターコンソールに追加されたダイヤル状のコントローラーは今のところティグアンならでは。これは音量調節やドライブモードの選択など使う頻度の高いものを直感的に操作でき便利だった。

安心感のある走り

 ID.4同様の回して操作するシフトセレクターを操作して走り出すと、どっしり感のあるドイツ車、いやフォルクスワーゲンらしいフィーリング。かといって重いか、と聞かれればNoだ。それは高速道路やワインディングを走っても同じ。早い話が乗っていて楽で安心できる。

 この乗り心地を提供してくれる要素として基本骨格の剛性の高さにある。ティグアンはゴルフをベースにしたSUVとなっている。そのプラットフォームはMQBといわれるもの。ゴルフも8世代目になりMQBがさらに進化したMQB evoに。そしてそれはフルモデルチェンジしたパサートにも使われており、今回はティグアンにも採用された。

 新型のティグアンに用意されたエンジンは1.5リッターのガソリンと2リッターのディーゼルの2種。ガソリンエンジンはターボとマイルドハイブリッド採用で、試乗車はガソリンエンジンだった。そのスペックは150PS、250Nmと十分な数値だ。事実高速への合流でも山道のコーナーを抜けた上り坂でも遅さは感じなかったどころかエンジンのフィーリングは大変気持ちの良いものだった。

快適性も高いのも持ち味

 背の高いSUVながらも高速走行中でも室内は想像以上に静かだ。後席のスペースも十分広いし、無駄なクルマの動きがないから長時間乗っていても苦にならない。さら快適装備も充実しており、エレガンス以上のグレードには前席にリラクゼーション機能付シートが備わる。これは空気圧を使ったマッサージチェア。同一車線内全速運転支援システムを使えばより長距離移動が快適。

 余談だがティグアン(Tiguan)の車名はTigerとIguanaをかけあせわた造語。後席にはそんな車名の由来を感じさせるロゴがある。若いファミリー層から子育てを卒業した大人まで派手さはないかもしれないけれど、使いやすく乗りやすい「推し」の一台だ。

■商品情報

ランドローバー
ディスカバリースポーツ
価格 708万円~

ランドローバー
https://www.landrover.co.jp/

フォルクワーゲン
ティグアン
価格 487万1000円~

フォルクスワーゲン
https://www.volkswagen.co.jp/ja/

話題のヒロミ・カスタムカーも展示! 三菱のカスタム軍団が本気すぎる

毎年恒例の東京オートサロンにおいて、三菱自動車が提供するヒロミカスタムのトライトンと「メタルギア」シリーズとのコラボレーションが…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる