今やクルマは走るガジェットとして進化。エンターテインメントも重視する時代に

今やクルマは走るガジェットとして進化

 これまで速度や積載量、デザインなど、移動手段や機能だけに目がいきがちだったクルマだが、現在、新たに注目されているキーワードがある。それが「エンターテインメント」だ。EVの特性を活かした車内のエンターテインメント化が急速に進んでいきた現在地を『東京オートサロン 2025』で実際に確認してきた。

CASEというビッグウェーブ

 100年に一度の大変革期と言われる自動車業界。その変化の波のことを頭文字からCASEと呼ばれる。Connected(ネットワークに常時接続し車両や周囲の状況などのデータを活用する)、Autonomous(システムが人に変わって運転する自動運転技術)、Shared&Service(カーシェアリングなどの所有から利用への変化)、Electric(電動化)。それらの鍵になるのがソフトウェア技術になる。ここではそのConnected(以下、コネクテッド)に焦点を当てる。

 それらのバックボーンとして「クルマのスマホ化」があった。2010年代にアップルカープレイやアンドロイドオートがきっかけで、インターネット通信技術を搭載した、IoT(Internet of Things)化のクルマをコネクテッドカーと呼び、様々なサービスを受けられるようになった。今までの外部から一方向に送られてくる情報とは違い、クルマからも発信する双方向のやりとりだ。

 例えば万が一の時の緊急通報システムや自分のスマホと連動してあらかじめ空調の操作をしたり、鍵の開錠施錠などを可能としている。

 そういった高度なシステムの採用でクルマに搭載されるECUの数も30個くらいから、多いクルマで100を超えるものも。それに呼応するようにソースコードの行数も増えており、1億桁を超えるのもあるという。なおこの1億桁というのはF-35戦闘機の2400万桁と比較しても相当に多い。

 このようにもはやクルマは動くスーパーコンピューターになってきていると言っても過言でもない。コネクテッドモデルの代表としてアメリカのテスラ社があげられ、最新のモデル3は前後どちらのディスプレイもインターネット利用もでき、アプリなどで動画サイトの視聴も可能になっている。

異業種の参入が増える変革期

 現在のクルマはIT化著しい。そして前出CASEのE、すなわち電動化もかつてない速度で増えている。オートサロンでは未出展だがソニー・ホンダモビリティのクルマ、AFEELA1(以下アフィーラ)も大きな変革期の象徴のひとつだろう。BEVの生産は生粋の自動車メーカーだけではなく間接的にクルマづくりに携わってきた、いわゆる異業種が自動車産業に参入するきっかけにもなっている。アフィーラは先進のソフトウェアと高性能なハードウェアをベースにモビリティの知能化を融合。従来のクルマの概念とは異なる新しいモビリティを目指した4ドアクーペ。2025年のCES(世界最大規模のテクノロジー見本市)では年内の発売を公表した。

静粛性を活かした室内空間の創出

 そしてBEVの普及によるもうひとつの潮流はエンジンと違ってモーターで進むため、メカニカルサウンドが少ない。その高い静粛性を持つにいたった室内空間をどう過ごすか、つまり車内のエンタメ化といったカスタマイズも増えている。

 昨年のオートサロンで初出展を果たしたパナソニック オートモティブシステムズが今年はブース面積を5倍にして再出展。同社はクルマを単なる移動手段としてではなく、生活に潤いのある豊かな空間として可能性を追求する。居ごこちや着ごこち、寝ごこちのように移動時の心地よさ、「移」ごこちを感じられる「世界一の『移ごこちデザイン』カンパニー」というビジョンのもと車両を展示していた。特にハイエースをベースにしたGranLuxeはエクステリアをイタリアの名門カロッツッェリア、イタルデザインとコラボするなど室内だけでなく第一印象にもこだわった。

 インテリアは55インチの大画面ディスプレイが特長。ハイレゾリューション3D音響システムを採用しヘッドレストやルーフに設置された15個のスピーカーはまさに乗員を音楽で包んでくれる。ルーフの照明は映像とリンクし、輝度や色調が変化。加えてシートには同様に映像とリンクした振動機能も備わる、まさに移動する4D映画館なのだ。このキャビン全体をシステム開発することで観光やスポーツ観戦などのワクワク感を刺激し、質の高いおもてなしはもちろん、ビジネスシーンでも快適な第2のオフィスとして仕事の効率化とくつろぎの空間のためのコンセプトモデルとなっていた。

 100年前、馬車からクルマに変わった時はその動力だけだったが、現代の変革期は異業種も参入する業界再編的な要素も持っている。このエンターテインメント化は今後、より加速していくことが予測されるので注目していきたいポイントだ。

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