“ラスボス”小林幸子がクラブに降臨ーー光る大蛇も登場し、心地よいカオスが繰り広げられた『ZIPANGU the Party!!』レポート

『ZIPANGU the Party!!』レポート

 松竹株式会社と株式会社TSTエンタテイメントは、2025年2月14日に新宿・歌舞伎町、国内最大級のナイトクラブZEROTOKYOにて、日本の伝統音楽である雅楽や神楽囃子から歌謡曲、最新EDMが融合する革新的音楽イベント『ZIPANGU the Party!!』を開催した。

 今回のイベントでは、時代や文化を超えた、刺激的で新感覚のカルチャーミックス体験ができるイベントとして、伝統芸能と最新音楽を融合した「ZIPANGU サクラガミ」と、国内の人気アーティストが出演するステージから構成。総勢50組のアーティストが集結し、“ラスボス”小林幸子がクラブシーンに初登場となり、会場は約1,000人以上の音楽ファンが駆け付けた。本稿ではそんな『ZIPANGU the Party!!』の模様をレポートしていきたい。

 メインホールであるZ HALLで1人目のDJを務めたSeimeiは、彼にしては珍しい緩やかなプレイから徐々にアゲていくという一番手の役割をしっかり果たすと、2番手の☆Taku Takahashi(m-flo, block.fm)は「RYDEEN」から「ETA」「アイドル」などの大ネタまでドロップし、ラストはど定番の「come again」からの「DISTANCE(m-flo Remix)」でフィニッシュ。

 そして特別ステージ「ZIPANGUサクラガミ」がスタートする。ステージには純白のワンピース姿のバレエダンサー(まさかの元NGT48本間日陽!)が登場し、クラシックバレエを優雅に踊る。そこにサラリーマン風のスーツ姿で登場した石見神楽「万雷」の三原新が彼女とペアダンスを舞ったかと思えば、MPLUSPLUSのLEDを搭載した「D-Classics」の“光るダンサー”たちが登場。AnymaやSkrillexの楽曲にあわせ、光の演出とともにHIPHOPダンスとバレエが融合したかのようなコンテンポラリーな動きに変化していく。

 三原が神楽笛を吹くと、そこに現れるのは4匹の大蛇。石見神楽が鳴らす神楽囃子に合わせて大蛇も光るダンサーも舞い踊る。クラブミュージックと神楽、ダンスと舞踊、人間と大蛇。そしてギラギラと光る大蛇とダンサー。要素を並べてみると多い気はしなくもないが、そこにはどこか心地よい混沌があった。それもそのはず、ここは新宿・歌舞伎町なのだから。

 その後も、歌舞伎の要素を取り入れた「とんぼ返り」を混ぜ込んだ立ち回りを見せたかと思えば、光る白装束の4人が三原の周りを囲んだり、RYOによるMPCパフォーマンスと神楽囃子が互いを高め合って高速でビートを刻む様は圧巻。ラストスパートが終わり、少しの静寂ののち、小林幸子が降臨。衣装の煌びやかさと彼女のスター性が、ZEROTOKYOのステージをNHKホールかのように錯覚させる。

 二度見三度見し、ZEROTOKYOの舞台であることを再認識するが、そこにあるのは「25時を過ぎたクラブで小林幸子がギラギラの衣装で歌っている」という嘘みたいな現実。刹那、小林が歌い出したのは、この日リリースされたばかりの新曲であり、本公演のために書き下ろした「サクラガミ」。途中からは三原と本間もパフォーマンスに加わり、小林幸子と神楽の舞とバレエが融合してコンテンポラリーなパフォーマンスを披露しはじめた。カオス、ここに極まれり。

 歌唱が終わると、小林がステージに「ZIPANGUサクラガミ」に参加した面々を呼び込み「サクラガミ」のリリースと次回の「ZIPANGU the Party!!」の開催が8月22日に決定したことを告知し、ステージを後にした。続くBPM15Qの出番では、地下3階のGOLD PASSチケット購入者専用フロアに小林が登場。MC中に乾杯の音頭を取り、同フロアでは鮨が振る舞われたことも記しておこう。

 Z HALLではBPM15Qがフロアをキュートに温め直したあと、TeddyLoid、kz(livetune)、KOTONOHOUSEとDJ陣のパフォーマンスが続く。TeddyLoidは自身がGigaとともに手がけたAdo「踊」「唱」といったJ-POPアンセムやアニソン、さらには「レッツゴー陰陽師」や「Daisuke」など、小林と関わりのあるニコニコ動画の文脈を紡いだDJで会場を大いに盛り上げた。

 kz(livetune)は「もうすぐ出るからね!」とモンスターハンターシリーズの代表曲「英雄の証」からスタートして会場を盛り上げると、「SEVENTH HAVEN」や「Hand in Hand」など自身の手がけたアンセムを次々にドロップ。最後は「ポーターも日本に来てるからね!」と、自身の代表曲である「Tell Your World」とポーター・ロビンソンの「Something Comforting」のマッシュアップで会場のボルテージを上昇させた。最後のKOTONOHOUSEは「PRESS START!」「Can you feel my heart」、さらに「Back to you」「U&I」などでラストにふさわしい盛り上がりを作り、イベントは無事に終了した。

 ここまで触れてこなかったが、各フロアのDJも申し分ないラインナップで、小林幸子が登場しなくとも一定の客入りはあっただろうと思われる。ただ、筆者が驚いたのはそれらの良質なDJたちを見にきた観客が、小林幸子の出番の際は入場規制がかかるほどメインホールに殺到し、思い思いの衝撃を受けていたことをSNSで発信していたことだ。レジェンドにはレジェンドたる所以があり、衝撃を受けた誰かがバトンを受け取り、パーティーは続いていく。この『ZIPANGU the Party!!』が今後も、テクノロジーを活用したパーティーでありながら、若手とレジェンド、海外と日本の音楽やアーティストの“カオスな橋渡し”であり続けることに期待したい。

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