『FF7EC』はいまこそプレイすべき『FF7リバース』の“副読作”だ 本編の15年前を描く「ファーストソルジャー編」がもたらす物語の深み

『FF7EC』がもたらす『FF7』物語の深み

 スマートフォン/PC(Steam)向けに配信中の『ファイナルファンタジーVII エバークライシス(以下、FF7EC)』は、『ファイナルファンタジーVII(以下、FF7)』のスピンオフ群である「コンピレーション・オブ・ファイナルファンタジーVII」の一作で、2023年9月にサービス開始したタイトルだ。『FF7』や『クライシス コア ファイナルファンタジーVII(以下、CCFF7)』などのストーリーを、ダイジェスト形式で体験できるのが特徴だ。本記事では、PC版『ファイナルファンタジーVII リバース(以下、FF7リバース)』の発売にあわせて『FF7EC』の魅力を伝えていきたいが、なぜ3月で1.5周年を迎えるタイトルをいま紹介するのかと疑問に思う人もいるだろう。

『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS』ローンチトレーラー

 だが本作は『FF7リバース』を遊んだ、または遊ぼうと考えている人、そして『FF7リメイク』完結作を待ち望んでいる方に特におすすめしたいタイトルだ。『FF7リバース』にはウータイの使者として「グレン」という人物が登場するが、オリジナル版には存在しない新キャラクターである。そのグレンが『FF7リバース』で“なぜそうなったのか”の一端を垣間見ることができるのが、彼を主軸とした『FF7』前日譚の本作オリジナルストーリー「ファーストソルジャー」編である。ここからは「ファーストソルジャー」編を中心にストーリーを紹介しつつ、バトル要素についても触れていきたい。

新たに紡がれる『FF7』前日譚

 「ファーストソルジャー」編の舞台は『FF7』の15年前に遡り、関連作では最も時系列が古く、これまで描かれてこなかった過去が明かされる。物語は神羅カンパニーが魔晄炉建設の候補地の選定のため、パッシブ型ソルジャーの3人であるグレン・マット・ルティアを含む調査隊を「ラディオル群島」に派遣。しかし、まもなく島に到着するというときに何者かに襲撃を受けてヘリが墜落してしまい、目的地のラディオル本島ではなく、少し離れた離島「シジャド島」に不時着した場面からはじまる。

 パッシブ型ソルジャーとは、『FF7』本編でジェノバ細胞を埋め込まれ魔晄を浴びた者とは異なり、身体改造をされていない“ソルジャー計画・プロジェクト0”参加者から抜擢された精鋭部隊という意味合いだ。そのためあくまで鍛え上げられた兵士であり、グレンはセフィロス以降の身体改造を受けた超人・アクティブ型ソルジャーのことを「兵器じゃねえか」とインチキ呼ばわりするなど、当人同士の間でも軋轢がある様子がうかがえ、ソルジャーのあり方と歴史にまたひとつ深みが加わっている。

 本エピソードのオリジナルキャラクターであるグレン班の3人は、これまでのソルジャーたちのような常人離れした視点ではなく、人間臭い側面に焦点が当てられているのが特徴だ。グレンはノリが軽く賭博が趣味の軽薄な人物で、多額の借金を返済するために今回のような危険な任務に志願。マットは博識かつ好奇心旺盛でグレンからは「ハカセ」と呼ばれており、ルティアは神羅軍の指導担当官だが狙撃に没頭したいという願望でグレン班に加入した女性と、やや風変りな面々が揃っている。

 ソルジャーだったはずのグレンがどうして神羅と決裂し、ウータイに渡ったのかなど『FF7リバース』の理解が深まるような話が盛り込まれている。さらに「ファーストソルジャー」編にはグレンたちをメインで描いたエピソード1のほかに、現在展開中のエピソード2が存在。そこでは若き日のセフィロスに加え、少年時代のアンジールなども登場し、ソルジャーたちの過去という興味深い題材も合わさって興味深いものに仕上がっている。

 「ファーストソルジャー」編以外にも新規エピソードとして、クラウドたちの行間を埋める「キャラクターエピソード」が存在し、ファン必見となっている。たとえば『CCFF7』の最後にザックスと別れたクラウドが、いかなる足取りでミッドガルに辿りついてティファと出会い、『FF7』冒頭の魔晄炉爆破ミッションに参加するようになったのか。バレットが故郷であるコレル村の魔晄炉事故のあとに、どのように星命学を学びアバランチに参加するようになったのかなど、これまで明かされてこなかった背景を深掘りできるのは本作ならではだ。

 また期間イベントはクリスマスや正月など、本編では描きにくい行事イベントに切り込みつつ、『FF7リバース』では完結作に持ち越したウータイへの訪問を果たしているなど、スピンオフならではの面白みも多い。つまり『FF7EC』で“本編以前”を描くことで『FF7』関連の深掘りができるのだ。

ATBをカジュアルかつブラッシュアップした戦闘システム

 「FF」といえばバトルも忘れてはならない要素だ。『FF7リバース』はアクションとコマンドバトルを融合させたアクティブタイムバトルシステム(ATB)の最新型だったが、『FF7EC』も別方向への進化系としてやりごたえのあるものに仕上がっている。本作のATBは時間経過で最大7つストックされるゲージとして機能しており、セットした武器の固有アビリティ(Cアビリティ)やマテリアの使用時にコストとして支払う形だ。そのため回復をすれば一定時間攻撃はできず、その逆もしかり。またCアビリティも武器に応じてさまざまな性能をもつため、理想の戦略とパーティーを組み上げるビルド構築としての面白さもある。

 また、特徴的な新システムとして「コマンドシフト」が存在する。「コマンドシフト」は与ダメージを強化し攻撃性能に特化した「アタックシフト」と、被ダメージが軽減され回復倍率が増加する「ディフェンスシフト」の2種を状況に応じて切り替えるシステムだ。一気に攻撃を畳みかけたいときはアタックシフト、敵の大技の発動前にはディフェンスシフトとATBゲージを管理しながら適宜最適な行動をさせる必要があり、その緊張感がコマンドバトルとして忙しくも楽しい。本作はオート機能が優秀なため、周回時はオートに任せるプレイヤーが多いだろうし、それでも問題はないが、強敵相手にマニュアル操作をしているときは、特に「『FF』をプレイしているな」という実感が湧く瞬間だ。

『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS』|『FINAL FANTASY VII REBIRTH』コラボイベント開催!

 このように『FF7EC』は、オリジナル版・リメイクシリーズとも異なる『FF7』のあり方として位置づけられた作品だ。さらに冒頭にも書いたように、ダイジェストではあるがオリジナル版『FF7』や『CCFF7』シナリオも収録されており、予習・復習にも最適。そのため、あらゆる意味で『FF7リバース』の副読作として最適なタイトルだと言える。1月30日より作中劇「LOVELESS」を題材にした『FF7リバース』とのコラボイベントも開催中なため、本記事を読んで気になった方は触ってみると良いだろう。

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