『テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター』発売 いまこそリマスターが待ち望まれる「テイルズ オブ」作品たち

リマスター待望の「テイルズ オブ」作品たち

 『テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター』(1月16日発売予定)は、2010年にリリースされた『テイルズ オブ グレイセス エフ』のリマスター作品だ。幼年期編、青年期編、未来への系譜編という3つの時代をまたぐストーリー構成が特徴的で、キャラクターが2通りのスタイルを切り替えながら戦うバトルシステムとあわせてシリーズでも人気が高いタイトルのため、現行機へのリマスターはファン待望といったところだ。

「テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター」アナウンスメントトレイラー

 さらに2024年末に配信された公式放送「『テイルズ オブ』シリーズ 30周年プロジェクト スペシャル生配信」内で、シリーズ総合プロデューサーの富澤祐介氏が『テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター』以降もコンスタントにできるかぎりリマスタータイトルを提供していくために、開発チームも専用にラインを整えたと言及。そのためこれまで現行機でのプレイが難しかった作品も、将来的に遊べるかもしれないという希望があらためて持てるようになった。そこで本記事では、あくまでシリーズファンの筆者が選ぶという視点になってしまうが、今後のリマスターに期待したい「テイルズ オブ」タイトルとその理由を挙げていきたい。

 なお、現行の家庭用ゲーム機やPCでプレイ可能な『テイルズ オブ シンフォニア』、『テイルズ オブ ヴェスペリア』、『テイルズ オブ ゼスティリア』、『テイルズ オブ ベルセリア』、『テイルズ オブ アライズ』は対象に含めないことは最初に留意いただきたい。

『テイルズ オブ ジ アビス』

テイルズ オブ ジ アビス 【Memoria Movie】

 『テイルズ オブ ジ アビス(以下、ジ アビス)』は、「テイルズ オブ」シリーズ10周年を記念して制作されたタイトルだ。音素(フォニム)と呼ばれる元素で構成され、未来の出来事を記した預言(スコア)に支配された「オールドラント」が舞台。「生まれた意味を知るRPG」というジャンル名どおり、主人公のルークが冒険を通して成長し、自らの出生の秘密や運命と向き合う姿が描かれている。人気バンドBUMP OF CHICKENによる主題歌「カルマ」が話題を呼び、ゲームをプレイしていなくても曲だけ知っているという人も多いのではないか。

 本作のオリジナル版は2005年PS2でリリースされ、その後に北米版をベースにしたNintendo 3DSへの移植が行われた。しかしPS2版は不完全な部分が多くロード時間が長いこと、3DS版はシステム改善されつつも携帯機ということでPS2版より劣るグラフィックという一長一短な展開しか、現在はされていない。そして評判が良いと分かりつつもいまでは手が出しにくいハード展開のため、完全版のような形でリマスターがリリースされ、手が届きやすくなるのはファン待望とも言えるだろう。

『テイルズ オブ レジェンディア』

テイルズ オブ レジェンディア 【Memoria Movie】

 『テイルズ オブ レジェンディア』は、『ジ アビス』と同年の2005年に発売されたタイトル。本作は従来のテイルズスタジオではなく、新たに「鉄拳」や「ソウル」シリーズなどのスタッフが集まったチーム・メルフェスによって開発され、これまでのシリーズとは異なる雰囲気をもつ。キャラクターデザインをいのまたむつみ氏や藤島康介氏ではなく、アニメーターとして活躍する中澤一登氏が手がけ、椎名豪氏が担当した楽曲はシリーズとしては珍しいボーカル付きBGMとして高い評価を得ている。

 巨大な船「遺跡船」を舞台に「爪術」の使い手である主人公・セネルがヒロインのシャーリィとともに種族同士の因縁に挑むメインストーリーと、エンディング後に展開されるパーティーメンバーにフォーカスしたキャラクタークエストの2部構成のシナリオが特徴。「絆」をテーマにした物語はファンからの支持も厚く、ストーリーが良い「テイルズ オブ」作品として話題にあがることも。これまで一回もリマスター・移植されたことがないタイトルであり、シンプルすぎて賛否両論となったバトルシステムを改良してリマスターしてほしいという声も多い。

『テイルズ オブ ハーツ』

テイルズ オブ ハーツ 【Memoria Movie】

 『テイルズ オブ ハーツ』は2008年にNintendo DSにて発売されたタイトルで、2013年にはPS Vita向け3Dリメイク『テイルズ オブ ハーツ R』がリリースされている。「心と出会うRPG」というように「心(本作ではスピリア)」がテーマで、漁村に住む主人公・シングが誤って砕いてしまい、世界中に散らばったヒロイン・コハクのスピリアを探す物語が描かれる。心を失ってしまったコハクが冒険を通して感情を取り戻す様子や、結晶界と原界という2つの世界の因縁など感動的かつシリアスなシナリオで、隠れた名作という呼び声も大きい。

 戦闘システムが踏襲されているなど『テイルズ オブ デスティニー』をリスペクトしており、主題歌もDEENが再び担当しているのが特徴。リメイク版は洗練されたシステムやフルボイス化など遊びやすく進化しているが、DS版のシナリオやキャラクター同士のやり取りなどのイベントが大幅にカットされているため、もしリマスターされるのであればDS版から削られたストーリーを補完してくれたらうれしい。

『テイルズ オブ エクシリア』

PS3「テイルズ オブ エクシリア」PV第3弾

 『テイルズ オブ エクシリア』は「テイルズ オブ」シリーズ15周年を記念して制作されたタイトルで、お人好しな医学生ジュードと四大精霊を従える女性ミラのダブル主人公が特徴。ゲーム開始時に選んだ主人公の視点で物語が進み、片方の視点でしか見られないイベントや同じイベントでも描き方が違う場面が存在、終盤は大きく展開が異なるため両方のルートをプレイしてはじめて、本作の全容が明らかになる構成である。

 人種の違いや人間と精霊の差異など多様な背景をもつ人々の交流がコアとして据えられており、最初は人間をあなどっていた精霊のミラがジュードたちと冒険をともにすることで認識を改めていく過程は王道ながらも熱いものがある。また主題歌に浜崎あゆみを起用し、ufotableが手がけたオープニングムービーは、選択した主人公によって一部シーンが異なり、見ごたえのある映像に仕上がっていた。

『テイルズ オブ エクシリア2』

「テイルズ オブ エクシリア2」第4弾PV

 『テイルズ オブ エクシリア2』は『テイルズ オブ エクシリア』の1年後が舞台で、『テイルズ オブ デスティニー2』以来となる続編展開となる。前作とはガラリと作風が変化し、新たな主人公・ルドガーたちが住む正史世界から枝分かれした分史世界が存在し、元の世界では亡くなった人が生きているなどの違いがあるが、正史世界に悪影響を及ぼすために分史世界を破壊していく物語が描かれる。地続きの続編ということで未熟だったジュードが頼れる先輩になった姿など、前作の冒険を通して成長したメンバーの様子が見られる感慨深さもある。

 ルドガーが「骸殻」と呼ばれる特撮ヒーローのようなスタイルに変身する熱い展開も多いが、「世界の破壊」という行為から想像できるように本作はシリアスさが特徴。選択肢によって分岐するマルチエンディングシステムだったり、プレイヤーとの同一化のために主人公が喋らなかったりと、RPGでありながらアドベンチャーゲームの文法も取り入れた物語が魅力である。作中で重要なファクターの主人公一族に伝わる「証の歌」や主題歌が要所で登場する音楽演出の良さも際立つなど完成度が高く、『テイルズ オブ エクシリア2』が最も好きなシリーズ作品だと言う人が多いのも納得である。

 以上、5作の「テイルズ オブ」シリーズタイトルを挙げたが、あえて今回は3D化作品に絞らせていただいた。当然シリーズファンとして、元祖『テイルズ オブ ファンタジア』や、筆者が一番好きな『テイルズ オブ エターニア』などが現行機で復活してほしい気持ちも強い。しかし往年の2D「テイルズ オブ」作品は、リメイクという新たな形で見てみたいという気持ちも強いのだ。以前と比べ「テイルズ オブ」シリーズのリリースペースは落ちているが、リマスターと並行して完全新作やリメイクにも期待したい。

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