「アサクリ」コラボで話題の『リバース:1999』とは? 史実モチーフのシナリオを極上の演出が彩るRPG

いま話題の『リバース:1999』とは?

 『リバース:1999』はPC、スマートフォン向けにBLUEPOCHが手がけ、2024年10月にリリース1周年を迎えたタイトルだ。ジャンルは「世紀末タイムリバースRPG」と銘打たれており、「ストーム」と呼ばれる時間の巻き戻し現象に、プレイヤーは「タイムキーパー」の少女・ヴェルティとして立ち向かっていく。以前よりコアなゲームファンを中心にクオリティの高さが囁かれていたが、ここに来て過去最大級に話題になっている。

 発端は1月3日に配信された公式番組『「ストーム情報局」#7 ~スーツケースパレード~』で、『アサシン クリード II』および『アサシン クリード オデッセイ』とのコラボレーションが告知された点にある。「アサシン クリード」は言わずと知れたユービーアイソフトのステルスアクションゲームシリーズで、『リバース:1999』にとって初のゲームコラボとして驚きをもって迎えられた。

【コラボ予告PV公開】

 予告PV内で「1476」「431BC」という文字が映されているように、『アサシン クリード II』が15世紀イタリア、『アサシン クリード オデッセイ』は紀元前430年頃の古代ギリシアが舞台。両タイトルには過去への逆行や歴史の出来事の追体験などの共通点があり、『リバース:1999』ではすでに古代ギリシアモチーフの「アペイロン教団」が登場済みの点などから考えて、シナリオ上での親和性が予想され、期待の声があがっているようだ。しかし、ファンから見ても「まさか」の作品同士のコラボであり、今回初めて本作を知った方も多いだろう。そこで1月9日にメインストーリー新章が更新されることもあわせ、『リバース:1999』最大の魅力であるシナリオにフォーカスして紹介したい。

歴史の積み重ねをモチーフにした唯一無二のシナリオ

『リバース:1999』配信記念PV「雨が来る」

 まずなによりも本作の魅力は、練り込まれたストーリーのクオリティにある。舞台はストームにより、1999年12月31日から徐々に時間が逆行している世界。主人公「ヴェルティ」は“ストームの影響を受けない”という体質を活かし、タイムキーパーとして各時代の出来事と消滅を記録し続けている。本作には人間とは“別種族”として超常現象を操ったり、異能を発揮したりする「神秘学家(アルカニスト)」が存在。ヴェルティはシナリオを通して絆を結んだ神秘学家と協力し、自らも所属する神秘学家管理機構「聖パブロフ財団」を覆う影や、人間を憎み神秘学家の世界を作ろうとする組織「マヌス・ヴェンデッタ」の陰謀に迫っていく。

 本作の序盤では1929年のニューヨークで物語が展開したが、ウォール街大暴落や禁酒法などアメリカ合衆国における「狂騒の20年代」に焦点があたった。さらに常設中のイベント「リメカップ窃盗事件」は、1966年のサッカー・FIFAワールドカップで起こった優勝トロフィー「ジュール・リメ杯」の盗難事件が題材で、オリジナル要素を交えながら展開される。実際に解決へ導いた「ピクルス」という犬が、本作のプレイアブルキャラクターとして実装されているのは驚きだ。

 作中における神秘学家たちは恐怖・嘲笑・偏見の対象であり、“人間”たちとの軋轢がしばしば描かれる。本作が史実をモチーフにしているからこそ、私たちの世界にも存在するマイノリティ/人種差別を明確に想起させ、キャラクターたちの置かれている環境について実感をもって思いを馳せることができる。そして独自設定によって浮かび上がる意外性のある展開と、現実の世界との落差が没入感を強めている。ローカライズの雰囲気も相まって、硬めの海外文学のような読み味だ。

 『リバース:1999』は、このような巧みに史実と幻想が交差する作風が特徴だ。しかし逆行した先の時代の人間からしてみれば、作中の出来事は現実と地続きのリアルな出来事であり、主人公たちも優秀な歴史の専門家のため「ここはどういう時代でどういうことが起こった」など説明をする必要がない。そのためあからさまな説明は全体的に控えめで、筆者はプレイしながら知らない用語が出てきたらその都度調べて……というサイクルでストーリーとがっぷり四つで向き合うスタイルが気に入っている。だが、それは言いかえればプレイヤーへゲーム外でのインプットを求めているとも言えるだろう。
 
 しかし、やたらと衒学的なだけのストーリーではないことはお伝えしておきたい。あくまで人間が積み上げてきた歴史そのものを問うシナリオには、それ相応の説得力の土台が必要という意味合いであって、ストーリーの元ネタがわからなければ面白くないのか、と聞かれればそうではないのだ。膨大な知識が渦巻く川の底には、差別や不寛容に満ち混沌とした社会への祈りが、軽妙なコメディに纏われて鎮座している。そのシンプルかつ真摯なメッセージは、本作が描いてきた歴史の延長線上に生きる我々の胸を貫くものだと信じている。前項でやや敷居の高さについて喧伝してしまったが、キャラクター同士の会話には笑いどころも多く用意されており、必要以上に構えずにプレイしてほしいとも思う。

 ところで少し話は逸れるが、これまで記事内で引用したスクリーンショットやムービーは、どれも美術や演出として優れていることにお気づきだろうか。本作をプレイしてまず驚くのが、豊富なスチルに迫力あるムービーなどの演出面のリッチさだろう。本編部分はビジュアルノベル形式で進行するが、買い切りタイトルを含めてもここまでこだわり抜かれた体験はそうそうないと、ノベルゲームファンとして考え込んでしまう。スマートフォンをタップしてテキストを送るたびに、画集や美術書を眺めるかのようにうっとりとしている。アドベンチャーゲーム好きは、演出を味わうためにプレイしても良いと思うほどだ。また公式YouTubeでは、本編には登場しない楽曲やシーンをふんだんに使用したキャラクターPVやEPが多数公開されているため、気になったらそちらもチェックしてほしい。

 2025年現在のタイミングで、本作を勧めるのには理由がある。それは2024年9月に実装された7章「孤独の歌」で、いわばメインストーリー「第一部」が完結済みだからだ。運営型でありながら一つながりのシナリオを一気に体験でき、新章が開幕する本編8章を最前線で味わえるのだ。1月9日のバージョン2.2アップデート後には最高レアキャラクターが獲得可能なキャンペーンがなど展開されており、バトル要素が苦手なプレイヤー向けに低難易度で本編を駆け抜けられる「メルヘンモード」も4章以降には実装済みと、初心者も始めやすいのもポイント。ひとたび本作の沼に浸かってしまえば、定期的に大ボリュームのイベントやキャラクターエピソードなどが訪れ、比喩抜きで底なし沼のように膨大なコンテンツ群があなたを待っているだろう。

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