「PSOで初彼女ができた」 おミュータンツ・宮戸フィルムの青春を彩った“愛すべきゲームたち”

宮戸フィルムの青春を彩った“愛すべきゲームたち”

 ゲーム好きの著名人・文化人にインタビューし、ゲーム遍歴や、ゲームから受けた影響などを聞く連載“あの人のゲームヒストリー”。今回話を聞いたのは、お笑いコンビ「おミュータンツ」として活動する芸人・宮戸フィルムだ。

 お笑い芸人として活躍するほか、自身が運営する「宮フィのもういいチャンネル」では、“Supremeの店員モノマネ”が注目を集め、全体で約1億8000万回もの再生数を誇っている。

 サブカルチャー全般に高感度を示し、その食指はビデオゲームにも伸びている。ゲーム実況に特化したチャンネル「フィゲー」では、新作を中心に軽妙なプレイ模様を配信している。

 今回は初めて遊んだ作品や思いがけず学んだ人生の教訓まで、四半世紀に及ぶゲーム遍歴を存分に語ってもらった。(龍田優貴)

見る側からいつのまにか「遊ぶ」側へ

ーーまずは宮戸さんとビデオゲームとの出会いについて教えてください。

宮戸フィルムさん(以下、宮戸):最初に遊んだ……と言うより、友だちがゲームで遊んでいるのを後ろで見ていたんですよね。具体的に何をやっていたのかは覚えていませんが、たしか「スーパーマリオ」とか「星のカービィ」とか「スーパードンキーコング」だったと思います。僕が小学生で、ちょうどスーパーファミコンが流行っていたころでした。

ーースーパーファミコンで遊んでいるのを見たのがゲームとの出会いだったのでしょうか。

宮戸:そうですね。子どものころって、「自分がゲームで遊んでいるところを誰かに見てもらう」みたいな習性があるじゃないですか(笑)。なので友だちも多分僕に見てもらうのがうれしかったと思うんですよね。僕も遊び方がよく分かってなかったけど、「楽しそうだしとりあえず眺めるか」みたいな。

ーーその後はご自身でゲーム作品を手に入れたのでしょうか。

宮戸:はい。父親にゲームボーイ用ソフトの『ロックマンワールド』を買ってもらいました。それまでは友だちが遊んでいるところを見るだけだったので、いざゲームで遊ぶとなると難しすぎたんですよ。ロックマンって、トゲに当たったり敵に攻撃され過ぎるとすぐ死ぬじゃないですか。だからちょっと動かして死んで……「なんだこれ?」って(笑)。

ーー「スーパーマリオ」や「ドンキーコング」とはアクションの毛色も異なると思います。

宮戸:そうなんです。それでも頑張ってプレイしましたが、終盤に一度倒したボスとの再戦がいっぱいあって、そこで心が折れました。やっぱりまだゲームってものに心がふわふわしていたと言うか。だけど、その後に「NINTENDO 64」(64)が家に来てから一気に世界が変わりましたね。

ーー宮戸さんが本格的にハマるきっかけを64が与えてくれたのでしょうか。

宮戸:父親に買ってもらった『ロックマンワールド』はゲームボーイで遊んでいましたが、64はテレビの大画面で遊べるのがうれしかったんだと思います。

 あと、同時発売の『スーパーマリオ64』(マリオ64)もすごかった。それまでは2Dのアクションゲームしか知らなかったけれど、『マリオ64』はコントローラーのスティックを倒せば3D空間を走り回ることができたんです。

 ちょうど母の実家で親戚一同が揃っているなか、『マリオ64』をプレイしてました。やっぱり3Dの衝撃が大きかったのか、周りも含めて「次はあっちに行って! その扉開けて!」とか騒いでて(笑)。普段はクールだった父親も64に驚いてたし、自分だけじゃなく周りもゲームに釘付けだったのがうれしかったのかもしれません。

分からないことを聞く勇気は『パーフェクトダーク』から学んだ

ーーあらためてゲームが持つポテンシャルを実感したんですね。ちなみに64でほかにも思い出深い作品はありますか?

宮戸:64のソフトだと、レア社(当時)が出した『パーフェクトダーク』はかなり遊びました。そのころはすでに『ゴールデンアイ 007』の対戦モードが流行っていて、自分は子供ながらに「後から買うのは何か違う」と思ってたんですよね(笑)。そんなときに同じレア社が『パーフェクトダーク』を発売すると知って、真っ先に友だちに広めようと思って買いました。これがもうめちゃくちゃ面白くて。

ーー『ゴールデンアイ 007』とつながりはないものの、『パーフェクトダーク』もFPSの名作として知られていますね。

宮戸:『パーフェクトダーク』は2人でストーリーモードをプレイできたんです。そこで初めてしっかり協力プレイを覚えて、そのままラスボスに挑んだりもしました。

 でも、このラスボスの倒し方が全然分からなくて。武器の弾を撃ち尽くしても倒れる気配がなくて、友だちとも「どうやって倒すんだ……」って困り果てたんです。そのときに、どうしてか任天堂に直接問い合わせたんですよね。

ーー直接ボスの倒し方を聞いてしまおうと。思い切った判断ですね。

宮戸:当時はまだインターネットも知りませんでしたから。なのでソフトの箱裏に書いてあったカスタマーサポートの番号に電話をかけました。そしたら女性の方が出てくれたんです。

 そこで僕も正直に聞くわけですよね。「ラスボスの倒し方が分からない」って。すると女性が電話の向こうで少し悩んだ後、「ボスの後ろにあるモニュメントをよく見て」って教えてくれたんですよ。それでボスの後ろにそびえ立っていたデカい柱を撃ちまくったら、あっけなくラスボスを倒すことができました。その瞬間、もう友だちと「すげえ!!」って(笑)。子どもながらに「分からないことはちゃんと聞く」大切さを学んだ気がします。

ーー20数年前だからこその体験談ですね。電話で聞いたからこそ達成感もありそうです。

宮戸:上手く言えないですけど、ゲームを通して人と人がつながった感覚ですね。その感動もあいまって『パーフェクトダーク』は対戦モードにもハマりました。パンチ縛りとかリモート爆弾縛りとかいろいろな遊び方を試して、「やっぱり任天堂はさすが遊びの会社だな」って感動した記憶があります。

ーー64にハマった後、10代を振り返った際のゲーム遍歴はいかがでしょうか。

宮戸:中学校に入ると、自分の周りは「PlayStation」(プレステ)でよく遊んでいました。「ファイナルファンタジー」の最新作や「バイオハザード」だったり。ここでもまた僕の逆張りと言うか、「いまさらプレステを買うわけにはいかない」と思っちゃって(笑)。そんなときにファミ通を読んでいると、次は「PlayStation 2(プレステ2)が出る!」っていうニュースが舞い込んできたんです。もちろんこれは手に入れるしかないと思って買いました。

ーー『パーフェクトダーク』を買った経緯に似ていますね。

宮戸:そうかもしれません。このときに「新作ゲームを発売日に買うのはゲーマー特有の性」に気づいたと言いますか、それまではわりと「ゲームってなんだ?」みたいな気持ちで追いかけていたわけですよね。だけどプレステ2を買ったぐらいから、自分が周りよりも先に最新ゲームで遊ぶようになっていたんです。当時はゲームと距離を置く友だちもいたなかで、僕は小学生から任天堂の作品で遊びつつ、中学生になって「キングダムハーツ」や「テイルズオブ」シリーズにハマり、がっつりオタクになっていきました。

ーーお話を聞いた限りだと、特に好きなジャンルはRPG系でしょうか。

宮戸:そうですね。対戦ゲームもいろいろハマりましたが、負けるとやっぱりめっちゃ悔しくて。対戦ゲーム自体は楽しいけど、どちらかと言えば黙々と1人で遊ぶのが好きですね。『キングダムハーツ』は特にそうで、発売前は塾に通うフリをして地元のヨドバシカメラで延々と店頭PVを眺めてました(笑)。あのときにテレビから流れてきた宇多田ヒカルさんの「光」(※1)が良すぎて。当時『キングダムハーツ』を遊んだことで、ゲームのストーリーと本気で向き合うきっかけになったのかもしれません。

ーーでは、先ほど挙げられた「テイルズオブ」シリーズはどの作品をプレイされましたか。

宮戸:なぜか分からないですけど、シリーズ未経験なのに『テイルズ オブ デスティニー2』(TOD2)を初めて買いました。これも『キングダムハーツ』と同じで、おそらくヨドバシカメラで目に入った店頭PVが良すぎて買ったんだと思います。確か『TOD2』は戦闘中に2人で遊べたんですよ。これが本当に面白かった。

ーー戦闘中のみ別々のキャラを操作できる2人同時プレイですね。

宮戸:そうです。僕は主人公を操作して、他の仲間を友だちに操作してもらって。この協力プレイで一番覚えてるのは、『TOD2』に出てくる「バルバトス」戦ですね。

 何回も出てくるボスなんですけど、特に2回目に出てきたバルバトスが強すぎて。晩ご飯が出される時間になっても家で友だちと何回も挑んで、100回以上戦ってようやく勝てたんです。あの達成感は忘れられないし、バルバトスに負けまくった経験があるからこそ、ソウルライク作品(※2)で何回死んでも「面白い」って感じられるんだと思います。

※1 PS2用ソフト『キングダムハーツ』主題歌
※2 『Demon's Souls』や『DARK SOULS』など、高難易度で知られるゲーム作品ならびにジャンルの総称

「ファンタシースターオンライン」で酸いも甘いも噛み分けた

ーーこれまでにさまざまなゲームとの出会いがあったと思われますが、「ゲームから学んだ教訓」についてはいかがでしょうか。

宮戸:なんだろう。いま思い返すと、中学生とか高校生ぐらいの頃にハマったゲームキューブ版の『ファンタシースターオンライン エピソード1&2』(PSO 1&2)は大きかったと思います。いまほどオンラインゲームは周囲で浸透していませんでしたけど、自分は死ぬほど遊んでましたね。

ーードリームキャスト版の『ファンタシースターオンライン』に新要素を追加した作品ですね。初めてのオンラインゲームはどうでしたか。

宮戸:1人っ子だったのもあり、学校が終わったらすぐ家に帰ってどっぷり浸かってましたね。インターネットにつないでチャットでほかの人と交流して……みたいな。

 『PSO 1&2』が面白かったのは、学校だと同級生と絡むのがメインじゃないですか。でもオンラインゲームはいろいろな人がいるし、しかも「いまの言い方は良くないと思う」とか、コミュニケーションについて注意を受けることもあるんです。そこが学校の先生に怒られるのとはまた違うし、僕もそこで注意される分には聞き分けが良かったと思います。自分よりもレベルが上の人に言われたらなおさらでした(笑)。

ーーオンラインゲーム特有の人間関係ですね。

宮戸:そこで協力プレイもしたり、ゲーム以外のいろいろなことも教えてもらったりしました。学校には自分の周りにゲーマーもいなかったし、サブカルチャーやネットリテラシーも含め、兄貴分みたいなフレンドから吸収しましたね。

 しかも、学校じゃなくて『PSO 1&2』で彼女ができたんですよ(笑)。

ーーゲームプレイを通して素敵な出会いがあったのでしょうか。

宮戸:ありましたね。いつも一緒に遊んでた魔法使いキャラの「アンジュ」ちゃんという子で、後に付き合いました。もともとは共通の「ギル」君という友だちがいて、彼から紹介してもらったのが最初の出会いです。

 やっぱり僕も多感な時期だし、女の子がいると気になるわけですよ。そしたらギルくんが学校の勉強が忙しくなって、アンジュちゃんと2人で遊ぶ日々が続いたんです。

ーー2人で遊び続けるうちに親密になったと。

宮戸:そうです。たしか雨が降ってる森のステージで、アンジュちゃんといつもどおり遊んでいたんですが、共通のフレンドの恋愛話で盛り上がったんですよね。「誰々と誰々が付き合ってる」みたいな。そしたら、アンジュちゃんが僕に言ったんです。「私たちもそうなる?」って。

 普通にうれしくて、僕がチャットで「いいよ」って返したら、ステージの奥にあったアイテムボックスを大剣で壊したアンジュちゃんが一言、「うれしい」って言ってくれました(笑)。

ーーオンラインゲームでドラマみたいな展開になったのですね。

宮戸:付き合って何か変わるわけでもないけど、楽しく遊んでいました。だから当然、友だちのギル君にも報告したんですよ。久しぶりにログインしたからちゃんと伝えておこうと思って。

 すると衝撃の展開と言うか、ギル君に「あれ、俺の母さんだよ」って言われちゃったんです。

ーー予想だにしていなかったと言いますか、純粋に信じてた分驚きですよね……。

宮戸:いまでこそ「オンラインゲームは姿が見えないから分からない」って理解できますけど、当時はアンジュちゃんが同年代だって完璧に思い込んでいたんですよね。とにかくショックを受けたし、「友だちのお母さんと表面上だけでも恋愛関係になった」という変な空気が流れてました(笑)。

 とは言え仲がこじれたとかは全くなく、その後もギル君を含めて良いゲーム友だちでいてくれたので良かったです。ある意味で『PSO 1&2』からはいろいろな教訓を得ましたね。

「経験を収集」するべくゲームと向き合う日々

ーー宮戸さんはYoutubeにてジャンルを問わずさまざまなゲーム作品をプレイされています。いろいろ手に取ってみようという原動力はどこからきていますか。

宮戸:自分のなかにチェックシートみたいなのがあって、「次はこのゲームで遊ぶか」という風に印をつけています。いろいろな作品に興味があるのでチェックをつけすぎちゃうんですけど(笑)。

 ゲーム以外にも映画や漫画などサブカルチャー全般が好きなので、そのあたりの情報と上手くリンクさせたいとは常に思っています。この辺はコレクション的な意味合いも含め、「経験の収集」と言い換えることができるかもしれません。

ーー本業のネタ作りにゲームプレイの経験が生かされる場面はありますか。

宮戸:ネタによって違いますけど、エッセンスはいろいろ取り入れていますね。おミュータンツはコントをよく作るので、たとえば「バイオハザード」の洋館の雰囲気やゾンビの細かい描写だったり、ボスキャラの挙動を真似てみたりとか。やっぱりゲームを遊ぶと脳みそがスラスラ動く感じがします。

ーー公私を兼ねてゲームをプレイし続ける宮戸さんですが、何か「自分だけのゲームの楽しみ方」はありますか。

宮戸:たくさんゲームを遊びたいからこそ、「どうすれば効率よく十分にゲームを楽しめるか」という部分は考えてますね。

 たとえば大作RPGがあったとして、サブクエストはあえてやらないとか。気になるゲーム作品が次々に発売されるから、最近は腹八分目でプレイを切り上げるようにしています。

 その代わりと言いますか、フィゲー(ゲーム実況チャンネル)で遊ぶためにとっておくパターンが最近は多いかもしれないです。RPGだったら動画5〜6本分ぐらいになるので、1人用とゲーム実況用でメリハリをつけて遊べるんですよね。

 本業の芸人として大成を目指すのはもちろんですが、その流れでフィゲーも視聴者が増えてほしいです。いつか何かをモノにするべく、これからも頑張ります。

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