イケアが新たなゲーミング家具に反映したゲーマーの“意外な本音” 3年ぶり出展のTGS会場で開発担当らを直撃

イケア担当者が語るゲーマーの“意外な本音”

 2024年9月26日から9月29日まで、計4日間にわたって国内最大級のゲーム展示会『東京ゲームショウ2024』(TGS2024)が開催された。

 同イベントは国内外から979社が出展を果たし、累計来場者数は27万4739人を記録。大手ゲームメーカーやインディーデベロッパーなど、実に多種多様な企業が自社ブースを展開していたなか、3年ぶりの出展で話題を集めた家具メーカーがあった。創業81年目を迎えたスウェーデン発祥の企業、イケアだ。

3年前のゲーミング製品と一線を画す路線「BRÄNNBOLL」コレクション

 日本でもおなじみのイケアは、2021年度の東京ゲームショウにブースを初出展した。当時は新型コロナウイルス感染症による規制を受け、オフライン会場の開催規模が縮小傾向にあったものの、ゲーム用途に特化したデスクやチェア等を精力的に展開。PCメーカー・ASUSのゲーミングブランド『Republic of Gamers(ROG)』と手を取り合い、従来製品と一線を画す“ゲーミング家具”を市場へ提案した。

 そして2024年、イケアは再び東京ゲームショウにブース出展を果たした。同社が今回の目玉ラインナップとして大々的にプッシュしたのは、全14種類(19商品)から成る「BRÄNNBOLL」(ブレンボール)コレクションだ。

BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション

 同社のこれまでのゲーミング家具と言えば、やはり黒や白を基調としたものが多く、まさしく「ユーザーのイメージ通り」といったテイストがメインだった。しかし今回のBRÄNNBOLLコレクションは、良い意味で期待を裏切る特徴的なデザインであることが分かる。赤・緑・青といったビビッドなカラーバリエーションが用意されているほか、荷重に合わせて傾くラウンジチェアなど、「ゲーミング環境はこうあるべき」という概念を払拭するようなラインナップ意図が読み取れるのだ。

 数年の時を経て、イケアは家具メーカーとしてゲーム市場にどのような価値を提供したいのか。また、BRÄNNBOLLコレクションはどのような意味合いでデザインされたのか。TGS2024のイケアブースを訪れたシニアデザイナーのDavid Wahl氏と開発担当のPhilip Dilé氏の両名に話を伺った。

「自分らしくゲームを楽しみたい」というゲーマーの声に寄り添った

――イケアは2021年に東京ゲームショウへブースを初出展されましたが、そこから時間が経った現在の”ゲーミング家具”市場はどのような変化を遂げたのでしょうか。

David Wahl(以下、David):この3年間の家具市場に限って言えば、そこまで大きな変化はないと感じています。と言うのも、従来のような黒を基調としたゲーミング家具が多かったり、バリエーション展開があってもネオンカラーやパステルカラーの色味が入るぐらいで、やはり「オーソドックスな製品が多い」という状態はほとんど変わっていません。なのでイケアとしては、そうした現状に対してチャレンジを試みたわけです。

 今回は新たな製品ラインナップ・BRÄNNBOLLを発表させていただきましたが、カラフルな色味や遊び心など、そういった部分を重視してデザインしました。

――東京ゲームショウ2024でイケアが出展した製品ラインナップ「BRÄNNBOLL/ブレンボール」について、コンセプトやターゲットユーザー層を改めて教えてください。

Philip Dilé(以下、Philip):BRÄNNBOLLのビジュアルやコンセプトを考えるにあたって、まずはゲーマーの人たちにヒアリングすることから始めました。また調査の際はただ話を伺うだけでなく、実際に彼らの住居に足を運び、どのような環境でゲームを遊んでいるのかも取材しました。

――調査を行ったことでどのような発見があったのでしょうか。

Philip:調査を進めて気付いたのが、ゲーマーのみなさんは「ただ一箇所に留まってゲームをしているわけではない」という点です。プレイするハードやタイトルはそれぞれ違うものの、「好きなところで自分らしく自由に楽しみたい」という傾向は共通していました。なのでBRÄNNBOLLも、そういった部分にマッチするよう形状をデザインしたつもりです。

 これまでもゲーミングデスクやゲーミングチェア等、ゲーマーのみなさんに興味を持ってもらえるような製品は取り扱っていました。しかし今回のBRÄNNBOLLは、あらためて「カジュアルゲーミング」という需要に焦点を当て、「自分の好きな場所でゲームを楽しんでもらいたい」というコンセプトを製品に込めました。

――イケアが掲げる「ゲーム文化と暮らしの融合」というテーマについて、ここまで“特に成功した”と感じている取り組み等があれば教えてください。

David:いろいろと考えられますが、折角ですのでBRÄNNBOLLにおける事例をご紹介させていただきます。先ほどお話したとおり、同コレクションはカジュアルゲーミングにフォーカスしており、具体的にはゲームプレイ時の姿勢といった環境に注意を払いつつデザインしています。

 たとえばTGS2024のイケアブース内に置いてある「ゲーミングイージーチェア」は、前後左右にスイングするタイプのゲーミングチェアです。ゲーマーの動きに合わせて揺れることで、より没入感を楽しんでいただける製品となっております。

 あともう一点、東京のような都市部の住環境を考えた際、屋内の自由なスペースが限られる方々も少なくありません。そういった場合でも手軽にゲーミング環境を確保していただけるよう、BRÄNNBOLLではボックス型の「ゲーミングステーション」も展開しております。

――今回のBRÄNNBOLLコレクションの発表に続き、ゲーマーに寄り添った家具の構想などがあれば可能な範囲でお伺いしたいです。

Philip:弊社が注力しているゲーミング家具というジャンルに限らず、ゲームは市場規模だけでなくあらゆる趣味の分野においても、すでに最大級のものだと感じています。製品展開について、現時点で詳しくお話することは難しいのですが、イケアは「Life at Home」(家での暮らし)に対する探究心があり、今後も家でゲームを楽しむみなさんのニーズを把握していきたいと常々考えています。

David:ありがたいことに、ゲーマーの方々がイケアに興味を持ってくださったり、お店に来ていただけるというケースはこれまでにも多く見受けられました。逆に弊社としてもゲーマーの方々にヒアリングしつつ、今後もさまざまな意見をもとに製品開発を続けていくつもりです。

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