日本初のeスポーツ映画を通じて描かれる「現代の若者」のリアルとは? 奥平大兼&鈴鹿央士に聞く

奥平大兼&鈴鹿央士に聞く「現代の若者」のリアル

 「ここ最近、説明セリフの多い映画ばかりで、なんか物足りないな……」

 そんなあなたにオススメしたい映画がある。日本初のeスポーツ映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』が2024年3月8日に公開される。

3月8日(金)公開『Play! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』主題歌入り予告編

 「eスポーツ×青春モノ」という鳴り物入りの映画だと思い、若干油断していたが、この映画は「いまどきの高校生の空気感」をそのまま缶詰にしたような、異常なまでの「無言&表情で魅せる演技」「絶妙にコントロールされた“間”」の宝庫だった。

 今回は主演俳優の奥平大兼(郡司翔太役)&鈴鹿央士(田中達郎役)にインタビュー。その内容をお届けする。(小川翔太)

炸裂する表情で魅せる演技、自然体で演じた

ーー今回のお二人の役について、それぞれどういう解釈をしていて、どういう演技を意識したかお伺いしたく。まず奥平さんはいかがでしょうか。

奥平:監督からは「若い子たちのお話だから、若い子たちの感覚に任せたい。自由にやっていいよ」という言葉をいただきました。なので「頭で考えすぎずに、やっていくうちに見つけよう」というスタンスで臨みました。

 翔太は金髪という見た目に反して、周りへの気遣いもできて、本当に優しさが詰まってる少年なんです。演じる際は、優しさのなかにも「いまっぽさ」といいますか、現代の高校生、若者の価値観を表現することを心掛けました。しっかり役作りしたというよりも、僕が日常で生きているなかで「僕だったらこういうふうに決断するな」「こう対応するな」というのを詰め込みました。

ーー特に優しさが出ているシーンはどこでしょうか。

奥平:家族とのシーンですね。翔太は複雑な家庭環境で育って、お父さんとお母さんの関係が良好ではないなか、長男として弟たちのことも面倒見なきゃいけない状況なんです。そんな環境下で自分のやりたいことを見つけられずにいたのですが、今回は熱中できる『ロケットリーグ』に出会った。

 劇中では、彼の優しさが情けなさにつながるシーンもあって、終盤のヒロインとのやり取りについても、少し奥手な感じとか、大事なところで引いちゃう感じがいまの男の子っぽいところですね。

実は演技ではなくガチでイライラしていた?

ーー続いて鈴鹿さんはご自身の役についていかがでしょうか。

鈴鹿:監督と話したとき「(達郎は)人を人として見ていない」というキーワードが出てきました。僕としては、達郎はタイトル(勝つとか負けるとかは、どーでもよくて)と真逆の考えを持っていると思っていて、奥平くんの翔太とは真逆だと考えています。

 「勝つ」という結果だけに価値を見いだしているから、勉強もできる。それは彼の家庭環境が影響しているということも描かれていく。

 そんな結果だけを求めてきた達郎が、仲間との出会いを通して、その先にあるなにかを見つける旅をするんです。あくまで彼としては、勝つことを目標にして、仲間集めはあくまで手段として行動しているんだけど、少しずつ自分でも気づかないうちに、価値観が変わっていくんです。

ーーとても高校生らしいキャラクターといいますか、人格がまだ形成されていない少年が少しずつ変わっていく。こういった複雑な役柄は演じるのが難しいと思いますがいかがでしょうか。

鈴鹿:演じていて楽しかったです。達郎という役は「何を言っても許される」んです。

奥平:たしかに!(笑)

鈴鹿:(目的志向型のキャラクターなので)目的を達成するためならなにをやっても許されると思います。ただ、それでも心境の変化を表現する必要があるので、そこは演技としてしっかり考えるべきところであり、やりがいでもありました。

 勝ちに執着してるからこその、人を人として見てない部分とか、自分の言ってることを正解だと思っていて曲げないところとか。

 あと3人目のメンバーである亘を演じた小倉史也くんが、ふざける演技をする場面で本当にふざけた演技をしてくれるんですが、(こちらが役に入り込んでいると)演じている間にこちらも本当にイライラしてくるんです。

奥平:あれは本当に腹立つ(笑)。

鈴鹿:「あんなに試合を真剣にやらない人いるんだ」って本当にイライラしてくる(笑)。そういうのも相まって、演技には熱が入っているかもしれません。

ーーでは、鈴鹿さんとしては「演技の部分」もあったけど、実際にご自身から湧き出た部分もあったと(笑)。

鈴鹿:ちょっとはあったかもしれないです(笑)。

同世代のeスポーツプレイヤーたちの活躍について

ーーそんな鈴鹿さんの感情がこもった演技、もう一度映画館でチェックしてみます(笑)。ちなみにお二人はゲームは好きですか。

奥平:ゲームしますね。小学生のころは遊びに行かないで家でゲームをしていました。わりと夜遅くまで遊んでいました。

 友人もゲームをやる子が多くて、ちょうど僕が中学生~高校生ぐらいのときは、いろいろなオンラインゲームが流行っていたので、やる機会も多かったです。主にオンラインゲームをみんなでプレイしていました。

鈴鹿:小さいころから身近にゲームがありました。ただ僕が小さいころはまだオンラインゲームの文化もなかったので、携帯ゲーム機で遊んでいました。某モンスターを捕まえて、育てて、戦うゲームですね。

ーーゲームを結構やられていたってことですね。現在はお二人と同じぐらいの年齢のeスポーツプレイヤーが活躍していますが、そういった方々に対してどのような印象を持っていますか。

奥平:僕もeスポーツの大会はよく見るのですが、最初は「ゲームでご飯を食べていけるなんて、そんな幸せなことないじゃん」と思っていました。ただ自分も年齢を重ねるにつれて、多くのことを感じるようになりました。

 ゲームが好きなだけでeスポーツプレイヤーになれるわけではなく、たくさんの努力を重ねてあの舞台に立っていること。彼らのプレイをみていると、自分の勝ち負けだけでなく、自分を応援してくれるファンのために全力で戦っているのを感じるんです。

 僕も仕事をやっているなかで、時には撮影現場だけを意識してしまうこともありますが、やはり俳優としては「画面の向こうで見てくれる方々のこと」を意識すべきなんです。そういう自分の仕事との向き合い方についても(eスポーツプレイヤーたちのプレイを見ていると)考えさせられることもあります。

 彼らの「観客を楽しませる」パフォーマンスを見ていると、最高のエンターテインメントだと感じます。これからどんどん地位を上げて、発展してほしい職業です。

ーー鈴鹿さんはいかがでしょうか。

鈴鹿:自分がよく遊ぶゲームの世界大会を見ると、自分よりも年下の方も活躍されていて驚きます。本当に才能にあふれているんだなと。ゲームではありますが、本気でやっていると楽しいことだけなく、いろいろつらいこともあると思うんです。

 どの仕事もそうだと思うのですが、eスポーツを生業にされてる方々は同じゲームを繰り返し練習して分析しているわけですし、継続する力がすごいんだろうなと感じます。

批判に晒されるeスポーツプレイヤーと俳優業の共通点

ーーeスポーツプレイヤーも多くの目に晒される職業でしていて、SNSでは厳しい声が浴びせられたりもします。俳優業にも通じる部分があるのでしょうか。

奥平:eスポーツプレイヤーにしても俳優にしても、見ている人には結果しか伝わらないんです。eスポーツプレイヤーだったら試合の勝敗、俳優だったら映画やドラマ作品が結果だと思うのですが、どちらの職業にも、その結果に至るまでの過程があるはずなんです。

 観戦者の視点ではミスに見えることであっても、何時間もゲームを練習した人たちが、その場で判断したことであり、その場にいる人にしか分からないこともきっとある。

 本来であれば、その人の努力の過程も含めて、しっかり見てもらえることが理想ではありますが、現状そうではありません。僕ら俳優も「努力の過程は見てもらえない」ということを踏まえて、しっかりと作品作りをしていかないといけないと感じますね。

鈴鹿:僕の場合は、お手紙や対面でいただいた言葉を大切にするようにしています。

 「見られるという仕事」である以上、見る人の好みもあるし、ある種の捌け口にされることもあると思うんです。それは本当はいけないことだし、最悪の結果を招くこともあるけど、仕方ないことでもある。本当はみんなが温かい言葉だけを掛け合えるのが理想ではありますが。

 僕としてはやはり、手紙や直接顔を合わせていただいた温かい言葉に耳を傾けるようにしています。

エンドロールに注目! 最もお気に入りのシーン

ーー最後に「ここを見てほしい!」という、最もお気に入りのシーンを教えてください。

奥平:実はこの作品、3人それぞれが自分の抱えている悩みや苦労を打ち明けずに話が進むんです。終盤で大会に敗退して、3人で試合を観戦するシーンがあるのですが、そこでそれぞれが抱えている悩みにお互いが少しだけ気づくんです。しかもそれが「敗退したけど、今日は3人で楽しもうよ」と前向きなシーンとして描かれる。

 大きな大会とかを目指して努力してきたメンバーなのに、大事なことは打ち明けずに進む。しかもそれが仲良くないとか、ネガティブなこととして描かれるわけではない。いまどきの高校生×eスポーツという作品の特徴が表現されているところでしょう。

ーー鈴鹿さんはいかがでしょうか。

鈴鹿:ずっとオンラインで練習をしてきた3人が、学校の屋上で初めて会うシーンがあるのですが、あのときの「知り合いなんだけど、だいぶ時間が経っているので、実際に会うと気まずい」というリアルな空気感がすごく好きです。

 あと、個人的にはエンドロールが好きですね(笑)。

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