極限まで光を減らし、シンプルなロボットの動きで“原理”を見せる 『Embodiment++』で藤本実が向き合った原点

藤本実が語る、展示を通して立ち返った“原点”

10年間活動してきたMPLUSPLUS 藤本氏が語る、これからの展開

ーーMPLUSPLUSとしても10年間やってきて、ある程度足元も固まってきたのかな、という気がしていますが10年目以降はどんな展開を考えていますか?

藤本:じつは、この1年で大きく変わったことが一つありまして。やっと壊れにくいLEDができたんです。自分たちがパフォーマンスで使っていたフラッグやリボンって、すごく壊れやすかったんですよ。どれくらいかというと、20人でパフォーマンスをしたら5人分は壊れるくらい。

――壊れやすいので、LED部分は交換しやすいような作りにしているとおっしゃっていましたね。

藤本:そうなんです。でも、やっと壊れにくいものができまして。フラッグとかを全部作り直したんです。そうしたら、リボンとかもこの1年間で1本壊れたくらいでおさまってくれて。ビジネス的な面でも良かったねという話になったんですけど、それ以上に「LEDが壊れないならもっとできることがあるんじゃないか」という話になって。そうしてできたものの第一弾がドローンを活用した『LED VISION DRONE』なんです。こんなに巨大なものを作って、いざ壊れたら毎回取り替えなくてはならないというのは大変なので、中々こうした作品は作れていなかったんですけど、今ならできるかもしれないと。僕たちの作るものは「軽いけど壊れやすい」だったのが「軽くて壊れにくい」に変わったんですよ。『LED VISION DRONE』なんて、電池、デバイス、LED、布全部入れて11キロしかないんです。

ーーもはや前提からくつがえってしまったんですね。『LED VISION DRONE』の制作は比較的スムーズに進んだんですか?

藤本:それが、LEDを制御するためのハードウェアも今まで2000個くらい制御できていたので良かったんですけど、『LED VISION DRONE』のときは17,000個とかを制御する必要が出てきてしまって(笑)。結局、リアルタイムで制御するためにはそれだけで3〜40キロの重量になってしまうので、それならいっそハードウェアから作ろうと。なのでいまは、17,000個のLEDを制御できる、軽量なハードウェアみたいなのを開発しようとしています。

――作品作りという意味では、そこが多分一番大変になってしまったんですね。

藤本:これまでは作ったデータを無線で再生するだけだったので、信号を1つ送って同期させるだけで良かったんです。けれど、リアルタイム制御になると有線接続にしなくてはいけませんし、重量が40キロになってしまうとちょっとドローンでは吊れないなという。海外からは100mの布を作ってくれと言われることもあるのですが、概算でも重量が2トンになるんですよ(笑)。それでも、僕らが本気で作れば、2トンを200キロにまで軽くすることができるかもしれない。『LED VISION DRONE』をきっかけに、突然スケールが変わってしまいましたね。

 あとは、壊れにくくなったからこそ、振動するLEDといった新しいジャンルにも挑戦できるんじゃないかと考えています。今までは壊れやすいものということが念頭にあったので、ずっと震わせ続けるというような発想には至らなかったですが、LEDを叩きつける耐久実験などもしたうえで、壊れないんだったら振動するLEDもできるんじゃないかと。

 これまでLEDで絶対考えなかったことも含めて発想が変わったのと、超軽量の大量制御を作らないといけない依頼が『LED VISION DRONE』以降増えたので、現在はその2軸を中心に開発を進めている段階ですね。今年は「開発の一年」になりそうです。

――そうすると、そのアウトプットたちが表に出てくるのは来年以降ですかね。

藤本:そうなると思います。何回かハードの試作は進めていて、この秋にもテストをやる予定なので、それが成功すれば来年の中ごろにはお見せできるかなと。

 ■MPLUSPLUS『Embodiment++』開催概要


会期:9月16日〜11月19日
※月曜休館(祝日の場合は開館、翌平日休館)
入場料:無料
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
公式WEBサイト:https://ccbt.rekibun.or.jp/events/mplusplus-embodiment

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