小型・軽量化とSSD増量の「新型PS5」 市場に与える影響とその勝算は?

新型PS5が市場に与える影響と勝算は?

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は10月11日、PlayStation 5の新モデルを11月10日より発売すると発表した。

 同モデルの投入は、市場にどのような影響を与えるだろうか。概要やこれまでの経緯を踏まえ、その勝算を考える。

ストレージを増量した待望の新モデル。ディスクドライブは着脱式に

PlayStation 5 - Same Immersive Power. New Slimmer Size.

 今回発表となったPlayStation 5の新モデルは、同機でのゲーム体験を担保する基本仕様をそのままに、サイズを従来型と比較して30%以上小型化、重さをディスクドライブ搭載の通常版で18%、ディスクドライブ未搭載のデジタル・エディションで24%軽量化したもの。機能面では、CPUやGPU、RAMが現状のスペックを維持しているのに対し、内部ストレージを825GBから1TB(1,000GB)へと拡大し、本体前面のUSBポートをUSB Type-C/USB Type-Aの並立から、同性能のUSB Type-C×2へと変更した。また、通常版に搭載されていたUltra HD Blu-rayディスクドライブは着脱式となり、デジタル・エディションに後付けすることも可能となった。

 価格は、通常版が6万6,980円(税込)、デジタル・エディションが5万9,980円(税込)に設定されている。現行モデルは在庫がなくなり次第、販売終了となる。先述したUltra HD Blu-rayディスクドライブは純正のオプション品として、11,980円(税込)で別売りされることも明らかとなった。

 なお、SIEは新型PlayStation 5の発表とあわせ、2023年10月18日から一部の周辺機器を値上げすることも告知した。この価格改定により、DualSenseワイヤレスコントローラー(ホワイトおよびミッドナイト ブラック)が9,480円(税込)に、DualSenseワイヤレスコントローラー(コズミック レッド、ノヴァ ピンク、ギャラクティック パープル、スターライト ブルー、グレー カモフラージュ)が9,980円(税込)となる(※)。

 SIEは2024年3月期において、歴代のPSハードで最多となる2,500万台の年間販売を目指す。新モデルの投入には、年末商戦における販売数拡大の狙いも見え隠れする。

※このほか、PULSE 3D ワイヤレスヘッドセットが1万2,980円(税込)に、HDカメラが7,980円(税込)に、メディアリモコンが3,980円(税込)に、DualSense 充電スタンドが3,980円(税込)に値上げされる。

飛び交う「求めていたのはこれではない」という意見

 これまで幾度となく存在が噂されてきたなかで、ようやく発表となった新型PlayStation 5。しかし、SNS上では、「求めていたのはこれではない」といった意見も出ている。背景にあるのは、同モデルの価格とスペックに関する問題だ。

 先に述べたとおり、新型PlayStation 5の価格は、通常版が6万6,980円(税込)、デジタル・エディションが5万9,980円(税込)に設定されている。一方で、旧モデルは通常版が60,478円(税込)、デジタル・エディションが49,478円(税込)。つまり、前者で6,000円ほど、後者で1万円ほどの値上げとなっているわけだ。

 「それならば、スペックが向上しているのだろう」。そう思い至るのが、自然な消費者思考ではある。しかし、残念ながらスペックはほぼ据え置き。上記の値上げ分は実質的に、小型化と軽量化、200GBのストレージ容量の増加、USBポートまわりとディスクドライブまわりの仕様変更への“対価”なのだ。

 まだPlayStation 5を所持しておらず、新モデルの登場を心待ちにしていた層が“コレジャナイ”と感じているのは、単純に価格、スペックのそれぞれに対してもあるだろうが、多くはそのバランスについてだろう。値上げ分に見合うだけの性能向上が盛り込まれていないと判断されているため、「それならば旧モデルでいいのでは?」との意見が散見されている実態がある。

 2020年11月のローンチ当時、PlayStation 5の価格は、通常版が54,978円(税込)、デジタル・エディションが43,978円(税込)だった。しかし、その後の2022年9月、世界的な物価上昇、為替変動を理由として、一部の国と地域で、先述した旧モデルの価格へと約6,000円値上げされた。特に日本国内においてはその過程で、需要に対しての供給量が少なく、欲しい人が満足に手に入れられない期間が長くあった。先の価格改定のタイミングでも、批判が相次いだ過去がある。

 当初と比較すると、その価格差は1万5,000円ほどとなる。大きな仕様変更がないままに、ローンチからの3年で約3割も値上げされているというわけだ。その点を考慮すると、新モデルに集まる批判にも納得させられる部分がある。SIEからすると、円安という同社にコントロールできない要因を背景とした価格改定であるため、非常に悩ましい問題だろう。

 なお、今回発表された新モデルの価格だが、アメリカ・欧州(EU加盟国)・イギリスでは据え置きとなっている。もちろん為替状況によるところもあるため、相対的な値上げ(ドル高・ユーロ高・ポンド高が起こっているにもかかわらず、価格がそのままであれば、実質的にはその金額で得られる価値が目減りしていることになる)が行われていないわけではないが、日本からすると、国内冷遇のように映ってしまう部分もある。特にアメリカにおいてはローンチ当初から、通常版が499.99ドル、デジタル・エディションが449.99ドルと、一切価格改定が行われていない。今回発表された新モデルに対する不満は、ともすれば不平等とも感じてしまいかねない、こうした状況によるところもあるのではないだろうか。

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