ルビコン川を渡る勇気はあるか? 『AC6』のストーリーで問われるのは一線を越える理由と覚悟

『AC6』ストーリーで問われる覚悟

選ばない奴とは、敵にも味方にもなれない

 オーバーシアとエア、どちらに付くかを選ぶミッションでエアに味方する場合、今度はオーバーシアの一員であるカーラやチャティと敵対する。ふたりは物語でたびたび出てくるため、プレイヤーからするとなじみ深いキャラクターだ。

 ふたりを倒すミッション“シンダー・カーラ排除”では、ステージの最奥でカーラとチャティを同時に相手取る。このときカーラは主人公に、「選ぶのはいいことだ。選ばない奴とは敵にも味方にもなれない」と言う。

 エアたちルビコニアンのために、ウォルターやカーラたちを敵に回す。それまでお世話になった人たちに対する明確な裏切りだが、カーラのこのせりふからは、誹謗や中傷よりは称賛のような意味合いが感じられる。決断の是非はともかくとして、プレイヤーがなにかを選んだことが、カーラにとってはうれしいのではないだろうか。第4世代強化人間である主人公は感情が乏しいため、そんな本人の選択から成長を見出したのかもしれない。

選択を尊重するキャラクターたち

 選択肢によって敵や味方が大きく変わるのが『AC6』だが、なにかを選んだプレイヤーを、周囲のキャラクターたちが尊重してくれるのは大きい。物語の分岐に関わる“選択ミッション”でも、立ちはだかる敵はいちいちプレイヤーを詰ることもなく、今の戦いに全力で臨んでくれる。

 発売前は怪しまれていたが、実際は主人公のことを最後まで大切にしてくれたハンドラー・ウォルター、味方でも敵でもこちらを激励してくれるカーラに、粗暴だが部下思いのミシガンなど、本作には優しい人が多く、ストーリーを進めていくほど誰かを切り捨てにくくなっていく。これも選択に重みを演出するための仕掛けなのかもしれない。

 やっとの思いで選んだ道についてあれこれ言われると辛いわけで、そうした面でも周囲がこちらの意志を慮ってくれたのは、プレイヤーがゲームを遊ぶうえで感じるストレス的な面から見ても大きいと言える。コーラルという資源をめぐって人が延々と戦っている退廃的な世界に対し、大人でドライなキャラクターたちは、作品自体の方向性としても噛み合っていた。

 独立傭兵としてそもそも部外者であること、感情に乏しい第4世代強化人間であることなど、本作の主人公はよそ者で意志の弱い人間として出発している。誰かの依頼を受けて任務を遂行していくという「アーマード・コア」の根幹となるシステムがそこに合わさることで、立場も意志もあいまいだった主人公が、やがて理由や覚悟をもってなにかを選択するという過程をゲームとしてうまく落とし込めていた。さらに周回を前提とした仕様や、ミッションの選択状況によって細かく変化するせりふなど、今回のストーリーは開発側の熱意を強く感じられる出来栄えだった。

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