超絶技巧のアイシングクッキーで企業から引っ張りだこ……お菓子クリエイター・まんなたぬきが明かす“チャレンジの日々”
ーーこれまでさまざまなキャラクターの作品を作っていらっしゃいますが、どのようにテーマを決めているのでしょうか?
まんなたぬき:基本的には、自分が好きなキャラクターや作品をテーマに選んでいます。
自分がそれらを大好きな気持ちを、お菓子を通じて視聴者さんと共有したいという思いで作ってきました。
いざ作る時は、もう1度原作を読み込んだりして、どこのモチーフを切り抜いてお菓子にするかなどを考えています。
ーー「この作品がいま流行っているからそれを作ろう」という感じではなく、自分の好きなものを作る?
まんなたぬき:そうですね。あんまり流行りに乗りすぎてしまっても、気持ちがこもらないとうまく表現の幅を広げられないので…。でも流行がきっかけで『東京リベンジャーズ』が大好きになったというのはありますけどね。
最近ゲーム会社さんからお仕事のお話をいただくことが多くて、『Apex Legends』などはそれまで全くやったことがないゲームだったんです。でも、表面だけ知っているというだけだとお菓子のデザインやアイディアも湧きにくくて。ゲーム実況者さんの動画をみて研究したり、キャラクターの動きの特徴やポーズを細かく見たり、なるべく原作を知った上で、何かしら自分の気持ちが込められるように心がけています。
あとは、たまたま家にあるものが目に留まって「これをお砂糖でミニチュア化してみたら面白そう」とか、本棚を整理していて刺繍の本が見つかって「同じ要領でドット絵をアイシングクッキーでやってみたらかわいくなるかも」とか、お菓子とは全然関係ないところからアイデアが浮かぶことが多いので、すぐメモするようにはしています。
ーー下調べに長い時間がかかっていそうですね。
まんなたぬき:はい、そうしないとデザインもなかなか浮かばないです。YouTubeショートなど短い動画の場合はシンプルにキャラクターを再現することも多いですが、長尺動画の場合はじっくり作品を見返して、どこをどういう風にお菓子でアレンジするか細かく考えるのに時間をかけている気がします。
ーー日頃からアニメや漫画は頻繁にチェックしていらっしゃるんですか?
まんなたぬき:特に意識はしてないですが、アニメや漫画はどちらも大好きです。気が向いたときに見たいものを見てます。
ーー動画の撮影と編集は、どのようにされているのでしょうか?
まんなたぬき:部分部分で撮って、カット数が毎回500カットくらいになります。手が引っ込む動きなど、見ていて余計だと感じる場面を全部カットしていく感じです。私はiPhoneで全て撮影と編集をしています。
ーースマホの小さい画面で編集するのは大変な気がしますが、やっていて不便なところなどはないですか?
まんなたぬき:それに慣れちゃったので(笑)。たまにiPadで編集すると画面が大きくて、スマホで見た時にサイズ感が掴めないんです。BGM挿入のタイミングや音ハメも、iPhoneだとしやすいです。
音ハメには特にこだわっていて、BGMのテンポに合わせて動画の倍速を変えたり、効果音を加えたりしています。見ていて楽しく気分が上がるような感じに仕上げられるように心がけています。
ーー500カットぐらいとなると素材も相当な量になると思うんですが、1本の動画を作るのにどのくらいの時間がかかっているのでしょうか?
まんなたぬき:『千と千尋の神隠し』をテーマにしたお菓子ボックスは、制作、撮影、編集まで全部で10日間ほどかかりました。一番時間がかかりましたけど、自分の中でお気に入りの作品です。
ーー『千と千尋の神隠し』のお菓子ボックスを作るにあたって、どのような準備をしたのでしょうか? 思い入れなど、エピソードも教えてください。
まんなたぬき:ジブリ作品の中でも『千と千尋の神隠し』は特に大好きで。今まで何回も見てきたんですけど、お菓子作品を作ってみようって思い立ってから改めて10回以上見返しました(笑)有名なシーン以外にも、一瞬しか映らない場面や、旅館の壁の柄や建物の一部に使われているモチーフなど、ファンの方は気づいてくれるだろうなっていう場面を盛り込みたくて。
構成の下書きを画用紙に書き始めてから、いざお菓子を作りに着手するまで多分1カ月ほどかかりました。お菓子を作るのにも10日間くらいかかりました。時間かけて丁寧に作ったので、すごく思い出深いです。
ーー2週間ほどであのクオリティのものができてしまうんですね。
まんなたぬき:1回集中モードに入っちゃうと、周り見えなくなっちゃうんです。ちょっと危ないですが、飲まず食わずでも平気なくらい浸り込んで作ったというか。最近はなるべくちゃんと生活するように心がけていますけど、一気にやっちゃいたくなるタイプみたいです。
ーー設計図も動画に少しだけ映っていますが、すごく細かいですよね。普段から設計図をかく段階でしっかりイメージを膨らませて、それを形にしていくのでしょうか?
まんなたぬき:そうですね。書き出した設計図を元にクッキーの形を合わせて焼いたり、サイズ感を合わせたりしています。
ーー絵コンテは作るんでしょうか?
まんなたぬき:ストップモーションを取り入れたりするときにたまに絵コンテを作ることもありますが、普段はそこまでやらないです。最初に作品全体のイメージをふくらませて、それに合わせてどんな雰囲気のBGMを使うか決めてから、演出や動画構成を考えて、お菓子の制作に入ります。
ーーすごい。映画みたいというか、そういう映像作品のような作り方をする方は綿密に絵コンテで描き出しているのかなと思いました。先ほど音はめにこだわっているとお話しされていましたが、BGMのストックは何曲くらいあるのでしょうか?
まんなたぬき:ストックはしてないんです。その都度、出したい雰囲気に合ったBGMを新しく探しています。長い動画だと耳が飽きないように4曲、5曲は使ってますかね。去年くらいまでは先にBGMを選ぶやり方でやっていましたが、最近は1分以内のショート動画がメインなので、まずはお菓子動画を作って、それに合うBGMを探してます。TikTokだと流行りの音源に合わせて編集し直すという作り方がメインになっています。