連載「Studio Bump presented by SMP」(第三回)
丸谷マナブ × 中村泰輔の“音楽制作論” リトグリなど“同一アーティストへの複数曲提供”によって変化するクリエイティブ
コライトやアーティスト活動を通じて広がったクリエイティブ
――わりと機材はシンプルめでしたが、それでも最小限に良いものを使っている印象です。中村さんの歴代のワークスを改めて聞かせていただいたりすると、ここ数年でコライト以外の楽曲でも曲のスケール感が大きくなってるように聴こえます。ご自身ではどのように感じていますか?
中村:スケールの大きさは、一緒にやってるTomoLowくんと僕の共通で好きなものが映画音楽だからかもしれません。元々大げさにしちゃうのは好きなんですけど、それができる場所があまりなかったんですよね。コライトしてスケールが大きくなったというよりも、最近はそういう部分を出せる機会をいただけることが増えてきた、というほうが正しいかもしれません。印象的なものだと櫻坂46の「Buddies」のイントロなんかはまさにそうで。「これを出せてよかった」と思えるものでした。
――「Buddies」もまさにライブ映えするような曲ですもんね。乃木坂46もお2人が共通して書いてるアーティストですが、歴史のあるグループになってくると、ソロだったりアンダーだったり関わる立場や内容も都度変わるぶん、Little Glee Monsterとはまた全然違う感覚なのかなと思うのですが。
中村:アイドルさんは意外と一番自由に書けるというか。もちろんアイドル楽曲的なマナーはありますが、あんなに振り幅があっても彼女たちが歌うことでポップスにまとめてくれるという力はすごくあって。冒険しやすいので楽しいですね。
丸谷:そうですね。「このタイミングでこのアーティストが歌うから」みたいな感じとはまた違うので、やりやすさはあるかもしれないですね。個人的には、ここへ来て中村さんの代表曲となるような曲が多く出ている印象なのですが、なにかきっかけや心境の変化みたいなものはあったのでしょうか。
中村:単純に運と出会いですよね。そういうアーティストさんにそういうタイミングで使ってもらえた、というだけで、自分が変わったというわけではないかもしれません。
丸谷:続けてきたからこそですね。
中村:そうですね。でも本当に嬉しいです。僕、いろんな曲を出したいという気持ちが強くて。ヒップホップも好きですしアイドルに曲を書くのも好きですし、いろんなアウトプットができるとすごく幸せを感じられるんですけど、「Join Us!」は自分の出したかったところが出せたな、みたいな気持ちもあって。
丸谷:ご自身が歌ったりバンドを活動することは、「いろんな音楽性をアウトプットして嬉しい」という気持ちのうちの一つなんですか? それともまったく別軸の何かなんですか。
中村:前者ですね。「自分は好きだけどコンペじゃ通らないな」という曲ってあるじゃないですか。そうなったときに自分が歌えば世に出せる。ソロは特にその気持ちが強くて。お仕事のときは締め切りがあって「こういう人が歌うこういう目的の曲」と決まっているじゃないですか。でも自分で歌うものに関しては、ほとんど遊びのときに作ってる曲というか。自由時間になんとなく、作るつもりなかったけどできた好きな曲みたいな。
丸谷:すごいですね。それ、僕も言ってみたいなー(笑)。
中村:ソロはそんな感じで、THE BLACKBANDもまた遊びに近くて。作詞から先にやるんですけど、いしわたりさんがいま書きたい歌詞があって、陽一郎さんの家に集まって、その詞にメロディーを乗っけるというスタイルで。それも楽しんでやらせてもらってる感覚が強いですね。
――アーティストとしての活動も作家としての活動もあるなかで、そのバランス感を今後変えていきたいみたいな気持ちはあったりするんですか?
中村:ありますね。年によって違うんですけど、今年はTHE BLACKBANDとか自分の活動により重心を持っていきたいみたいな気持ちはあって。提供ではできない世界観のものを発信していきたい気持ちはあります。
丸谷:これも折角なので中村さんに聞いてみたかったんですけど……「良いシンガー」ってなんだと思いますか? 同じ曲でも歌う人によっていい曲度合いが違ったり、優劣でもなくて違いが生まれるじゃないですか。
中村:「良いシンガー」……。難しいですね。単純にピッチパーフェクトだからいい、というものでもないじゃないですか。究極的には声質というか、声に終始する気がするんですよね。でも素晴らしいシンガーの方と話して「いいな」と思う方は、詞をすごい読み込まれてきて、ちゃんと詞をストーリーのように歌ってくださる方ですかね。
丸谷:それはすごくわかる!
中村:逆に、丸谷さんは「良いシンガー」ってなんだと思いますか?
丸谷:僕が質問しておいてなんですが、わかりません(笑)。やればやるほどわからない。いまってすごい便利だけど残酷な時代で、YouTubeとかSNSとかで歌ってみたを出したとして、例えばもしいま誰もAdoさんを知らない状態でも、多分勝手に火がつきますよね。それでその逆も起こりうるじゃないですか。自分ではAdoレベルだと思って出しても、見せ方が悪かったりすると残酷にもまったく再生回数が伸びないとか。上手い人の中でも、なんとなく多くの人に評価されるんじゃなくて、飛び抜けてめちゃめちゃ売れたりする。それが残酷でもあり面白いところだなというか。それが、中村さんがいまおっしゃった声質というところでもあるのかなと思いました。持って生まれたものを超えることはできないですし。
中村:そうですね。たとえばさっき話してたmiletさんのように、最初に聴かせてもらって1秒ぐらいで一緒にやりたいなと思わせてくれるんですよね。だから声の成分はいろいろありますけど、測りきれない情報が入ってるのかなと思います。
■中村泰輔リリース情報
Digital single『MAGIC, LOVE』
リリース日:2月18日
https://orcd.co/magiclove
https://youtu.be/bPRpJoTkHAI
■丸谷マナブ提供曲リリース情報
中山優馬Best Album『THE BEST and BEYOND』アニバーサリー盤
リリース日:2023年2月1日
07.うたかたに踊る 作詞・共作曲:丸谷マナブ
KAT-TUN New Album『Fantasia』
リリース日:2023年2月15日
04. Love Lots Together 共作曲:丸谷マナブ
連載アーカイブ:Studio Bump presented by SMP
関連連載:Music Generators presented by SMP
■関連リンク
丸谷マナブ 公式Twitter:https://twitter.com/manabu_marutani
中村泰輔公式Twitter:https://twitter.com/NakamuraDaisuk6
中村泰輔公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCi7B5KjU2SQ5w4toDYdujlg
THE BLACKBAND YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@theblackband3898