『ホグワーツ・レガシー』はなぜ多くの人から期待されているのか? 原作さながらの世界を”主人公として遊ぶ”楽しさ

『ホグワーツ・レガシー』注目ポイント解説

 来たる2月10日、ついに『ホグワーツ・レガシー』が発売される。本作はJ.K.ローリング原作の映画『ハリー・ポッター』や、映画『ファンタスティック・ビースト』などのシリーズを取りまとめるユニバースである「魔法ワールド」を舞台としたゲーム。プレイヤーがホグワーツ魔法魔術学校の生徒として学園生活を送るアクションRPGとなっており、2年前の公式アナウンストレーラー公開以降、注目を集めている。

『ホグワーツ・レガシー』 公式アナウンストレーラー

 本作に対するユーザーの期待度は高く、PlayStation JapanのYouTubeチャンネルに投稿された公式アナウンストレーラーは再生回数100万回、公式プレイ動画は120万回越え。ゲーム系のメディアでも「2023年期待のゲーム」に名前が挙げられることも多く、反響の大きさは「ハリー・ポッター」を題材にしたゲームシリーズのなかでも最大級といえる。この大きな期待の理由は、本作が過去作を上回るような高いクオリティと、まるで原作の世界に入ったかのような映像をトレーラーで見せたからではないだろうか。

 今回は、本作がほかの「ハリー・ポッター」ゲーム作品と何が違うのか、そしてどのようなゲーム体験ができるのかを、トレーラーや開発者エピソードなどから解説していく。

『ホグワーツ・レガシー』State of Play - 公式ゲームプレイが公開

原作付きゲームの進化と『ホグワーツ・レガシー』が作られるまで

 まず最初に、「ハリー・ポッター」シリーズのゲームの歴史と、どのように『ホグワーツ・レガシー』が作られることになったかを語っていきたい。

 「ハリーポッター」シリーズにおいては、一作目の映画『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開されて以降、映画作品が公開されるたびに同名タイトルのゲーム版がリリースされていた(日本版は『謎のプリンス』まで、海外では『死の秘宝Part2』まで発売された)。

 だが、上記はあくまでも映画のストーリーを後追いをするだけの作品となっており、映画ファンや子どもなどをメインターゲットにしたようなゲームが多かった。なお、こうした映画のゲーム化は「ハリー・ポッター」シリーズが公開された2000年代では珍しいことではなかった。たとえば「007」シリーズや、ディズニー・ピクサー作品などの大作においては、その公開と同時に同名タイトルのゲームがリリースされていたのである。

 そんななか、人気コミック「バットマン」を原作とし、2009年にリリースされた『バットマン:アーカムアサイラム』は、完全オリジナルストーリーを展開した結果、原作ファンだけでなく、コアゲーマーからも高く評価されることとなった。同作のリリース前年には、映画『ダークナイト』が大ヒットしていたにも関わらず、だ。

 そしてそれ以降、上記のような”原作付きゲーム”の在り方は少しずつ変容していった。また、ゲームエンジンの進化などによるグラフィックやクオリティの向上、めざましいゲーム産業の発展から、大手映画配給会社もゲーム業界への参入を一層本格化。成功例としては「ラチェット&クランク」シリーズの開発を手掛けたInsomniac GamesとMARVELが手を組んで制作した『Marvel’s Spider-Man』が全世界で3,300万本の売り上げを達成したことが挙げられるだろう。なお同作はその後もPS5、PCなどにも移植され、未だに愛されている作品となっている。

『Marvel’s Spider-Man』

 こうした事例もあってか、魔法ワールド作品の配給会社であるWarner Bros.は、2017年にPortkey Gamesという、魔法ワールドのゲームをリリースするレーベルを設立。そして、元々ディズニーの子会社であり、『Disney Infinity』などの作品を手掛けたAvalanche Softwareを買収し、Warner Bros.監修のもと、Avalanche Software主体による魔法ワールドを舞台とした完全新作ゲーム『ホグワーツ・レガシー』の開発に踏み切ったのである。

「主人公はあなた」。映画・小説の世界をプレイヤー中心に展開

 Avalanche Studiosは『ホグワーツ・レガシー』について、「自分だけの物語を体験してもらうことを目指してゲームをデザインした」とインタビューにて語っている。

 そんな本作の時代設定は、1800年代後半。これは映画シリーズの年代よりも昔であるため、ハリーはおろか、ヴォルデモートですら誕生していない。本作はあえて原作で活躍するキャラクターがいない時代を舞台にし、プレイヤーが魔法界を心ゆくまで楽しめるようにしたのである。こうした試みはシリーズでも初のことであり、この時点で本作が過去作とは一線を画していることがはっきりとわかる。

 特筆すべきは、やはりゲーム内世界の作りこみである。高画質のグラフィックで再現されたホグワーツ城の中には、おなじみの中庭や薬草学の教室だけでなく、ハッフルパフの講談室など、原作では見られなかったロケーションもあり、特定の面では映画以上のクオリティかもしれない。さらに城内には秘密のルートや隠し要素などがたくさん用意されており、プレイヤーの探究心をくすぐる。

 原作であこがれた箒や魔法動物に乗ってホグワーツを出てみれば、ホグズミード村や、禁じられた森、黒い湖などの映画にも登場したロケーションも散策できる。

 Avalanche Studiosは、「(ファンが)映画や小説で抱いたホグワーツを体験したいという気持ちを原動力に、細部にまでこだわり抜いて制作した」と語っている。ゆえにプレイヤーが原作にも登場した場所はもちろん、映画や小説だけでは理解しきれなかった場所を自らの手で探索することで、より深い感動を味わうことができるのである。

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