“AIキャッチャー”を開発した企業が語る、現代のデータ野球 データを可視化すると「意外な選手が投手に選ばれる」

“AIキャッチャー”開発企業が語る現代野球

 様々なシーンでテクノロジーが導入されているが、スポーツ界も例外ではない。とりわけ、現在の野球界ではこれまで“経験則”や“勘”といった感覚を、テクノロジーを活用することでデータとして可視化し、球界全体のレベルを引き上げようとしている。

 データスタジアム株式会社は野球やサッカーなどで使用できるテクノロジーを展開。日本テレビ系のプロ野球中継では、同社が開発した失点抑止に最適な配球を予想するAI を導入した“AIキャッチャー”の放送が大きな話題を集めた。

 プレイヤーや指導者だけでなく、視聴者にとっても新しい野球の楽しみ方を提供してくれそうなデータ。同社の顧客サービス営業本部 顧客サービス営業グループに在籍する石田隆哉氏に、データで今現在何ができるのか、またAIがどのように野球に関わっていくのかなど話を聞いた。

打球の質のデータ化によって打席内容を評価できる

――『Charlyze System』(以下、チャーリーズ)、『Pitch Base』(以下、ピッチベース)、『Rapsodo Baseball』(以下、ラプソード)と野球に関するサービスを提供していますが、各サービスについて教えてください。

石田:チャーリーズは試合中の1球1球のプレイデータを入力して、そのデータを基に分析するシステムです。具体的には1球ごとの配球や打球方向といったものから、カウント別、走者別の状況分析もできます。バッターであれば相手の配球、ピッチャーであれば相手打者の苦手な球種やコース、野手であれば飛んできそうな打球方向などの予測を助けます。

――詳細なデータ分析ができそうですね。

石田:他にも、打球の質もデータ化できます。例えば、同じライト前ヒットでもボテボテだったのか、痛烈なライナーだったのかなどで評価は大きく変わりますよね。そういった細かいデータを収集して分析に活かせます。なにより、撮影した映像を紐づけして、「このピッチャーのストレートを投げたシーンだけ見たい」というような、気になる映像シーンを検索して、そのプレイ映像を見ながらデータ分析ができます。

――使い勝手が良さそうですね。

石田:とはいえ、チャーリーズはパソコンのみでの閲覧になりますので、選手や監督が気軽に見られるシステムではなく、アナリストと呼ばれる方々が主に扱います。ただ、ピッチベースならチャーリーズと連動しているため、タブレットやスマホで入力されたデータを気軽に見られます。加えて、気になる試合だったり特定選手との対戦だったりなど、見たいシーンもチェックできたりします。

石田:映像で球筋を見るだけでなくピッチングフォームにもフォーカスできます。牽制のクセはもちろん、直球と変化球を投げる際のフォームを重ねて、「カーブを投げる時は肘が下がっていないか?」といった違いもチェック可能です。

――試合に特化した実践的なサービスですね。

“キャッチャーの感覚”に頼らず球筋の把握が可能に

石田:一方、ラプソードはバッテリー間に設置して、練習中のデータを収集できるシステムです。ピッチングとヒッティングの2種類に分かれており、ピッチングであれば投球の回転軸や回転数などの計測ができます。従来はピッチャーの球筋は“キャッチャーの感覚”に頼っていましたが、データ化されることによってピッチャー自身が自分のボールの質を客観的に捉えることができます。

――ピッチャーとしては喉から手が出るほどほしい情報ですね。

――ヒッティングではどのような使い方が有効ですか?

石田:ピッチングと違い、バッティングではフォームに関する課題や弱点を見つけることは難しいです。ただ、コース別の打球速度を計測できるため、自身の苦手なコースを知れるでしょう。苦手なコースがわかれば、「どう打ち返すか」を考えて練習したり、「このコースはファールで逃げよう」という発想を与えることなどができます。

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