“AIキャッチャー”を開発した企業が語る、現代のデータ野球 データを可視化すると「意外な選手が投手に選ばれる」

“AIキャッチャー”開発企業が語る現代野球

球速以外の評価軸により、意外な選手がピッチャーに?

――実際にNPBやアマチュア野球界ではどれだけ導入されているのですか?

石田:球団名は出せませんが、NPBですとチャーリーズとピッチベースは9球団、ラプソードはほぼ全球団に導入されています。アマチュアチームも数を出すことは難しいですが、高校や大学、社会人のチームでも使ってもらっています。

――アマチュア野球界ではどのように使用されているのですか?

石田:プロと違ってアマチュアは試合数が少ないため、敵チームの分析というよりは、紅白戦や練習中を通しての自チームのデータ収集が主になります。集まったデータから弱点克服に活用したり、指導者側がメンバー選考のための判断材料にしたりなどに役立てるチームは少なくありません。

――メンバーから外れた選手も納得感を覚えやすそうですね。

石田:そうですね。また、ラプソードで収集したデータから「この球筋面白いな」「球速はないけど回転数がいい」ということがわかり、ピッチャーに抜擢されるケースもあります。データから適正ポジションを見つけ、あまり注目されていなかった選手が本来のポテンシャルを発揮できるように導くことも期待できます。

――怪我の予防にも活用できそうですね。

石田:はい。疲労の蓄積を球筋から、「調子いい時の球質とは明らかに違くないか?」といった異変をデータから把握できます。アマチュア野球界に限りませんが、ピッチャーの酷使問題は深刻です。データから“無理な連投はさせない”という難しい判断を、指導者側ができるようになるのではないでしょうか。

――これらのサービスを導入するのは強豪校が多いのですか?

石田:いえ、強豪校に限らず、タブレットに触れる機会を与えたり、生徒間でデータの活用方法を考えたりなど、教育の一環として導入する高校・大学は少なくありません。

荒れ球のピッチャーが活躍しやすい?

――データを重要視して活用する野球チームが増えてきたとのことですが、NPBなどの野球チームにおける戦術面などでどのような点に変化を感じましたか?

石田:近年は極端なシフトを敷くケースが増えましたが、データによる影響が大きいのではないでしょうか。また、打順を固定するよりも、143試合ほとんど打順が違う、というチームも珍しくなく、データが戦術を決める要素として定着したのかもしれません。

――データでは測れない選手、例えば荒れ球のピッチャーはデータ活用時代に活躍しそうですね。

石田:もちろん、一概には言い切れませんがその可能性もあります。一つだけでも突出した能力、短所と思われていた個性を持っている選手が活躍することも今後増えるかもしれないです。

――現在のNPBは投高打低ですが、テクノロジーの進歩によってこの傾向はどのように変化すると予想しますか?

石田:150キロ、160キロを平気で投げるピッチャーはどんどん出てきましたし、NPBでもピッチャーのほうの活躍が目立ちますよね。投高気味ではありますが、将来的にはVRを装着してバッティング練習できるサービスも普及するのでないかと考えています。より実践的な準備が可能になればバッターのレベルアップにもつながり、この傾向に変化をもたらすかもしれません。

AI審判はあくまでサポート

――MLBではAI審判の導入が検討されていますが、実際にテクノロジーが試合中に関与することは増えるのでしょうか?

石田:実際にAIが審判に代わって試合を裁くことは考えにくいです。そもそも、ストライクボールの判定には時間がかかると言われており、NPBでは試合時間の短縮が叫ばれているため、球審は人間の専門領域な気がします。今後の使われ方として、打球のインアウト、ハーフスイングなどの判定といった、あくまで審判をサポートする役割を担うと思います。

――あまり大きな変化はないのかもしれませんね。

石田:ただファン目線でいうと、“AIキャッチャー”のように、配球から勝敗まで予想できるサービスを展開しています。これまでとは違う楽しみ方も提供できるのではないでしょうか。

――ファン目線では意外な選手が代打で出てきたけど、データを見てみるとその選手である根拠が分かればテンション上がりそうですね。

石田:データはあくまでデータなので、そのデータに裏切られる体験も新しい価値になるかもしれません。

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