執筆AIの発展が開発者と作家にもたらした変化 『AI BunCho』大曽根宏幸と作家・葦沢かもめが語り合う"AI創作論"

AI小説家の"作家性"はどこにある?

 あなたはなぜAIを使って小説を書かないのだろうか? もしあなたが日常的にAI執筆支援サービスを使って小説を書いていないのだとしたら、その理由は何だろうか?

 あなたは何のために小説を書くのだろうか。有名になりたいから、伝えたいことがあるから、小説を書くことが好きだから……などなど。これらの小説を書く理由は、AIを使わない理由になるだろうか?

 創作支援アプリ「AI BunCho」の開発者である大曽根宏幸とAIを用いて多数の小説を執筆する葦沢かもめに、なぜ物語づくりにAIを用いるのかをお聞きする。お二人の話を聞いたなら、あなたも、AIで物語を書いてみたくなるかもしれない。あるいは、それでもなお、AIを使いたくないと思うとき、あなたにとっての「小説を書く意味」が明らかになるかもしれない。(難波優輝)

二人のAI執筆との出会い

ーー葦沢さんは、なぜAIを使って執筆を始められたんですか?

葦沢かもめ(以下、葦沢):もともとは生物学専攻でプログラミングには詳しくなかったのですが、就職のタイミングでプログラミングを勉強していて、自分でも執筆AIの制作を始めた、というのがまずひとつ目の理由です。それから、以前からTwitter小説を数百本書いており、AIに入力するデータセットがあった、というのも理由です。

ーー大曽根さんは『AI BunCho』を制作される前から物語を書くことに関心があったのでしょうか?

大曽根宏幸(以下、大曽根):そうなんです。でも、プロットをつくるのは好きだったのですが、描写を書くのは苦手だったんですね。そこで「プロットを入れればAIが本文を生成してくれないだろうか」と思いつき制作したのが『AI BunCho』です。そのため、現時点では、プロットから作品のアイデアを探索するためのクリエイターの方の発想支援として使ってもらいたいな、と思っています。もちろん、最終形態としては、プロットを入れるだけで小説やマンガが出力されるように目指しています。

ーー葦沢さんのプロフィールには「作家としての活動の全てをプログラム化することで、人間の体が無くなった後も作品を発表し続けることが目標です」とあります。これはどんなモチベーションなのでしょうか?

葦沢:私にとって、自分の足りないものを埋めていくことが執筆のモチベーションなんです。

ーー足りないもの、ですか?

葦沢:はい。私は普段あまり人と話さなかったり、Twitterでも人に絡むのは苦手だったりするんです。けれど、言いたいこと、表現したいものは自分のなかに溜まっていきます。そうしたものをどこかにアウトプットしたい。今振り返ってみると、そう思っていたことが物語を書き始めたきっかけでした。自分が物語を書き続けている動機は、その時々で、自分に足りないものを埋めようとして書いているのかもしれません。たとえば、自分には友だちが少ないと感じる時には、友だちを描いたり、といったことが多いかもしれません。数年前くらいに書いた小説では、転校生と仲良くなるのですが、物語の世界に帰っていってしまう。その転校生を追いかけるために物語を書く、という作品でした。

ーーなるほど。

葦沢:とはいえ、自分の生きている間に埋めることはできないでしょう。なので、私の意志をコピーした意識のあるAIがいて、私の持っている穴を埋めようとして書き継いでくれるとしたら、もしかしたらその穴がすべて埋まるんじゃないかと思っています。死んだ後に埋めても仕方ないんじゃないかと思いますが……(笑)。

大曽根:足りないところを埋めていく……考えたこともありませんでした。たしかに、物語のいちばんおもしろいところは、トラウマやコンプレックスが自然と物語の中で表現されることかもしれない、とも思います。

葦沢:穴を埋めたいから書いていますが、まだまだ埋まらない。どんな小説が埋めてくれるんだろう、どんな物語が埋めてくれるんだろう、といつも思いながら書いています。いつかそんな物語をAIが書いてくれたら読んでみたいですね。

ーー葦沢さんがAIに自分の願望を託すように、実際に私も『AI BunCho』を使っていると、自分の心が拡張していく感覚におもしろさを感じました。

大曽根:心が拡張されていく、という言葉はおもしろいですね。少し違う話かもしれませんが、私が執筆AIを作り始めた大きな理由は、「意識」の探求にあります。

ーーたしか、大曽根さんは「物語を紡げる機能があれば、それは意識なのだろうか」と問われていますね。これはどういう意味なのでしょうか?

大曽根:実際に物語を作るAIを作ることで、人間の心を理解してみたいと考えています。人間がどんなものに心揺さぶられるのか。人の心を動かすような物語を作れるAIが生まれたら、それはある種の意識をもった存在になるのではないか……? そう考えて研究を進めています。これまで、優れた物語を読むたび、どうやって作ったんだろうか、と疑問に思い、わかりませんでした。自分で作ってみることですこしずつわかっていきたい、というのが執筆AIを作っている動機ですね。現時点では、おもしろい物語には一定のパターンがあることが分かってきました。勧善懲悪的な構造であったり、古典でよくあるような勇者が悪者を退治するような物語類型が現代までアレンジされながら使われていると感じます。

葦沢:私も執筆の際には、物語の構造は意識していないわけではないですが、『AI BunCho』のプロットを見ると自分にはないアイデアだな、と感じることが多いので、『AI BunCho』の方がすでに私よりも物語に詳しいのかもしれないですね(笑)。

ーー『AI BunCho』にはすでに意識の萌芽があるのかもしれませんね……!

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