「少年野球が抱える問題は多い」 日本一の野球YouTuber・トクサンTVが保護者や指導者に伝えたいこと

トクサンTVが野球界で担う役割

 たとえば、野球をやっている自分の子どもが「もっとうまくなりたい」と言い出したら、まず親としてなにをするだろうか。いい指導者のいるチームを探すか、両親が野球経験者であれば庭先で一緒に素振りをするのでもいいだろう。野球の指導書を複数冊読み込むという手もあるかもしれない。

 そこにいま、「YouTube」という選択肢があることをぜひ知ってほしい。今やYouTubeで「野球」と検索すれば、有名元プロ野球選手やNPB公式チャンネルなど、多種多様な動画が投稿されているのだ。

 競合ひしめく野球系YouTubeのなかで、ひときわ注目を集めるのが「トクサンTV」。チャンネル登録者数67万人、再生回数6億5000万回を突破した、「日本一の野球チャンネル」だ。

 今回はそんな「トクサンTV」からトクサンと、その相方であるライパチにインタビュー。この春発売された『マンガでわかる! トクサンTVが教える 超少年野球教室』(KADOKAWA刊)の話も含め、今後の野球界やYouTubeの未来を聞いた。

元ドラフト候補生、YouTuberになる

――リアルサウンドテックの読者のなかには、「トクサンTV」のことを知らない人もいるかと思います。まずは簡単な野球経歴から伺ってもよろしいでしょうか?

トクサン:ソフトボールから始め中学校から野球、帝京高校にて甲子園出場を経験しました。その後創価大学に進み、主将として全国ベスト4、リーグ首位打者、盗塁王に。ドラフト候補に名を挙げていただいたものの、残念ながら落選し今にいたります。

――ドラフト落選から現在にいたるまでをだいぶ省略されているような……?

トクサン:あっ、たしかに(笑)。大学卒業後は一般企業に就職し、転職もあわせて約5年間を過ごしていたのですが、心のどこかで「もう一度甲子園に行きたい」という希望があったんです。僕は高校時代甲子園に行っているわけですが、甲子園ってやっぱり特別な場所なんですよ。予選とは全く違うし、注目度も熱気もケタ違いで。

 でも、そのとき僕はもう30歳手前。どうやったら甲子園に行けるか考えたとき、「じゃあ教員になって野球の指導者になろう」と思ったんです。勤めていた会社を辞め、教員試験に向け、大学に通い始めました。

 ちょうどその頃、今も所属している草野球チーム「天晴(あっぱれ)」に加入し、相方となるライパチと出会ったんです。

ライパチ:「天晴」は当時、特に強くもなく「純粋に草野球を楽しむチーム」でした。そこに突如現れた元ドラフト候補。もちろん僕らはトクサンに教えを請いますよね。「こういう動きってどうすればうまくなりますか?」って。

トクサン:そうそう。その時に「僕がこれまでに強豪校で学んできたことって、ニーズがあるんだ」って気づいたんです。

――そのニーズに気づいてすぐの2016年、「トクサンTV」を始めるわけですね。

ライパチ:実ははじめは「トクサンTV」じゃなくて、「ライパチボーイTV」だったんですけどね……。

トクサン:「ライパチボーイTV」が開設から数週間で「トクサンTV」になったんです(笑)。しかも、当時僕らはそこまで動画配信に興味はなくて。「天晴」にはアニキと呼ばれるエースピッチャーがいるんですが、アニキはテレビ関連の仕事をしていて、当時から「YouTubeが来るで」って話していたんですね。

 僕らは誘われるがままに、アニキに教えてもらいながら毎日動画を投稿していった……というのが始まりです。

――とはいいつつ、現在は日本一の野球チャンネルになっているわけですが……。

トクサン:さすがにね、こうなるとは思ってなかったよね。

ライパチ:始めたころはぶっちゃけ趣味程度でしたから。アニキのいうように毎日投稿するけれど、最初は再生回数も伸びないし、カメラを向けられて流暢に話す技術もないし。2016年ごろって、「YouTuber」という職業はいまほど認知されていないわけです。だから僕自身、家族や友人の誰一人として「YouTubeに動画を投稿していて~」なんて話はしませんでした。

トクサン:でも次第に見てもらえるようになっちゃったんですよ。びっくりするほど順調に伸びてしまって。僕は30歳を過ぎていたし、なんなら周りは「教員試験のために頑張っている」と思っているわけです。YouTuberになってもいいものかは迷いましたが、ライパチやアニキと一緒に「トクサンTV」を本格的にやっていくことにしました。

対象は「野球が好きな人全員」。「トクサンTV」が掲げる大きな柱

――YouTubeには、野球をプレイする人向けのコンテンツにとどまらず、さまざまな角度から発信されている印象があります。

トクサン:「トクサンTV」で掲げている大きな柱として、「野球の魅力そのままを伝えたい」「野球を通して人生を豊かに」というものがあります。僕自身がそうだったのですが、“野球がそこそこできちゃう人”って野球以外の人生が考えられなくなっちゃうんですよね。高校や大学でやり切ったと思って野球を辞めても、なんか空回りしちゃうというか。プロ野球選手のセカンドキャリア問題もこの考え方だと思います。

 だから僕たちは技術的なところだけではなくて、考え方を伝えたい。例えばピッチングフォームのひとつをとっても、なぜそこに意識を向けるようになったのかを掘り下げれば、その人の失敗談や経験がある。掘り下げれば掘り下げるほどストーリーがあるんですよね。そのストーリーって、案外“野球はやっていないけど野球が好きな人”にも刺さるものだったりするんです。

――野球をやったことがない野球好きって、結構多いものなんでしょうか?

トクサン:そうですね、プロ野球が好きな方はもちろんですが、最近多いのは少年野球をするお子さんを持つ保護者。僕らは仲のいい少年野球チームに遊びに行くことがちょくちょくあるんですが、その際に保護者のかたから「いつも見てます」と声をかけていただくこともありますよ。

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