スイスと日本は共通点がいっぱい。実際に行ってみたら想像と違った
「スイスから来ました」
目の前の人からそう言われたら、あなたはどんな会話を展開させるだろうか。
「いいところですよね。日本では『ハイジ』やチーズや豊かな自然で有名ですよ」といったところだろうか。
実は筆者がそうだった。『アルプスの少女ハイジ』や救助犬で有名なセントバーナード、中立国であること、そして映画でおなじみの” スイス銀行”くらいしか知識がなかった。
だが、スイスの人はそれ以外の要素を思い浮かべるだろう。テクノロジーとサステナビリティとサイエンスの国でもある、と。
というのも、それらはスイスの人たちにとって、人々の生活だけでなく国としての価値を上げる大切な産業なのだ。そういった産業に携わりたくてスイスを目指す外国人も少なくない。
こう筆者が断言するのは、先日、スイス大使館が主催する「Vitality.Swiss」というコミュニケーション・プログラムのメディアツアーに参加して、実際に見てきたからだ。
自分の体力の限界を超える過密スケジュールで組まれた盛りだくさんのツアーでは、『アルプスの少女ハイジ』のテーマソングすら忘却の彼方に行ってしまうほど、テクノロジーやサイエンス、サステナビリティを感じてきた。
大自然やチーズはあくまで観光客向け
スイスのチューリッヒ空港のゲートとエアサイド・センターをつなぐスカイメトロに乗ると、『ハイジ』によるアナウンスが入り、トンネルに搭載されたディスプレイにスイスの牧歌的な景色が映し出された。まさに、昔ながらのスイスのイメージだ。
ホテルの朝食にはさまざまなチーズが並び、ルームサービスの一貫でスイスのチョコレートが配られる。乳製品が有名なだけあってヨーグルトの種類も豊富だ。
都市部と言われるチューリッヒですら、少し歩けば川と山と湖に突き当たるし、道中はチーズフォンデュの濃厚な香りを楽しめる。
水の都らしく、至る所に噴水もある。
観光目的にスイスを訪れれば、想像通り、イメージ通りのスイスを今でも楽しむことができるだろう。
少し郊外に行けば、羊や牛が見られる。
だが、そこに暮らす人々に目を向ければ違った世界が見えてくる。
人々の生活に目を向ければ見えてくる「テクノロジーやサイエンス」
スイスは小さい。国土の面積は41,285㎢で、世界で最も小さな国のひとつと数えられているし、人口は約850万人しかおらず、そのうちの25%が外国人だ(ちなみに日本の国土面積は378,000㎢で人口は約1億2,500万人)。出産率は低く、子どもをもつ家庭は1/3で、日本同様に高齢化社会の壁にぶつかっている。人口増加は外国人によるものだ。
そんなスイスの国内市場は限られている。だから、物品やサービスの輸出入が盛んにならざるをえなかった。
輸出品目でいうと、化学・薬品が最も高く45%、次に機械、電気製品で15%、時計は9%なのだそう。
つまり、サイエンスやテクノロジーは、スイスの経済を支える上で非常に重要であり、必然的に教育、研究、技術革新は国際競争力を維持するための戦略的な資源と考えられるようになった。
研究開発には、年間で国内総生産の3.4%弱の予算が割かれているという。
少子高齢化の手立てと輸出の強化するためには、わからない分野を研究するサイエンスと、わかったことを実生活に生かすテクノロジーが欠かせない。
今回のメディアツアーでは、チューリッヒ大学や隣接したチューリッヒ工科大学、スイス工科大学ローザンヌ校をはじめ、さまざまなテック企業や薬品企業、スタートアップを回ったのだが、大学と企業が連携されていたり、スタートアップがサポートを受けやすかったりというのを感じた。
学んだことを国のために使うリソースとして、教育がシームレスに生かされている印象を持った。