快進撃見せる『ウルトラ怪獣モンスターファーム』 既存ファン向け作品、なぜ異例のヒット?
10月20日に発売となった『ウルトラ怪獣モンスターファーム』が快進撃を見せている。シリーズの登場から25年という節目のタイミングでリリースされた同タイトル。高評価獲得の裏には、どのような背景があったのだろうか。ヒットの理由を紐解く。
育成シミュレーションと特撮の王道がコラボした『ウルトラ怪獣モンスターファーム』
『ウルトラ怪獣モンスターファーム』は、コーエーテクモゲームス開発・バンダイナムコエンターテインメント発売の育成シミュレーションゲーム。1997年に生まれた同ジャンルの金字塔『モンスターファーム』シリーズと、特撮作品『ウルトラマン』に登場する怪獣たちがコラボレーションした、異色の話題作だ。
プレイヤーは、CDのデータベースや手持ちのNFCなどから誕生させた怪獣を、トレーニングや修行などを通じて育成し、大会での勝利を目指していく。怪獣のパラメータには、数値で表される「ライフ」「ちから」「かしこさ」「命中」「回避」「丈夫さ」と、「速い」「やや遅い」といった形で表される「ガッツ回復」「移動速度」があり、それぞれに伸びやすさや程度が異なる。自身が育てている怪獣の個性を見極め、より強い怪獣へと育てていくことが、同タイトルの醍醐味となっている。
『ウルトラ怪獣モンスターファーム』は2022年6月、Nintendo Switchにおける新作情報を配信する番組『Nintendo Direct mini』内で発表され、それぞれのシリーズのファンを中心に注目を集めてきた。待望の発売日を迎え、少しずつ反響は彼ら以外にも広がりつつある現状だ。
シリーズファンが切望していた、原点回帰・正統進化の完全新作
今年2022年で登場から25周年を迎える『モンスターファーム』シリーズ。これまでに同シリーズからは、『モンスターファーム』『モンスターファーム2』『モンスターファーム(PS2版)』『モンスターファーム4』『モンスターファーム5 サーカスキャラバン』と、5つのナンバリング作品が発表されている。第1作の時点で、今作にも盛り込まれた「CDからモンスターを誕生させるシステム」が実装されており、その画期的な仕組み、当時トレンドだった育成シミュレーションというジャンルからの追い風、ゲームそのものの面白さなどから、一躍フリークなら誰もが知る人気のシリーズへと成長した。
ナンバリング作品のうち、評価が高いのは、第1作『モンスターファーム』と、第2作『モンスターファーム2』。このことからもわかるとおり、『モンスターファーム』シリーズは作品を重ねるうち、プレイヤーのニーズとは異なる方向に進化してしまった背景がある。2000年代以降も上述のナンバリングのほか、数多くのスピンオフがリリース・サービス開始となったが、2作を超える評価を獲得する作品は生まれていない。こうした状況を裏付けるように、2019年・2020年に両作がモバイル/Nintendo Switchに移植された際には、再び大きな話題を呼んだ。実際にプレイした経験を持たなくても、育成シミュレーションゲームの王道として『モンスターファーム』というシリーズが存在することを知っていたフリークは少なくなかったのではないか。
『ウルトラ怪獣モンスターファーム』が高評価を獲得している背景にあるのは、こうしたシリーズの歴史を踏まえたアップグレードだ。ゲーム史に残る名作と名高い『モンスターファーム2』をベースに、NFCからの怪獣の生成、怪獣に装備のようにセットできるクッキーのシステム、グラフィックやUIのリファインといった新要素を盛り込み、シリーズの最新作として期待のなか登場した同タイトル。そこにあったのは、コラボレーションを売りとした、ただの“イロモノ”作品ではなく、原点回帰・正統進化の一作だった。そこにきて、「ウルトラ怪獣」というすでに完成されたコンテンツが主役に据えられているのだから、今回のヒットはいわば必然だったと言えるのかもしれない。