快進撃見せる『ウルトラ怪獣モンスターファーム』 既存ファン向け作品、なぜ異例のヒット?

快進撃見せる『ウルトラ怪獣モンスターファーム』

ゲーム実況文化が加速度的ヒットの追い風に

 また、もうひとつ言及しておかなくてはならないのが、ゲーム実況の文化との相性についてだ。『ウルトラ怪獣モンスターファーム』でコラボレーションを果たしている『モンスターファーム』シリーズ、『ウルトラマン』シリーズのファン層は30代より上の年代が多く、現代のゲーム市場にとってのメインターゲット層と完全には重ならない。その意味で“時代錯誤”とも言えるこのコラボは、両シリーズを愛する人にこそ刺さっても、新規のファンを獲得するようなタイトルとはなりにくかったはず。実際に開発・発売が明らかとなったときには、どちらかを知る人たちが多く反応していた印象がある。

 一方、ニコニコ動画などのサービスによって醸成されてきたゲーム実況の文化では、30代以降、『モンスターファーム』や『ウルトラマン』を好きな世代の配信者が少なくない。たとえば、YouTubeにおける同タイトルの実況動画を視聴回数の順に並べると、上位には、加藤純一(1985年生まれ)、マフィア梶田と中村悠一(それぞれ1987年、1980年生まれ)、ドコムス(1987年生まれ)といった面々が並ぶ(※)。彼らにとって両シリーズは、青春時代から情熱を注いできたコンテンツであり、配信内では、それぞれの魅力を熱弁するようなシーンも見受けられた。そうした発信を通じて、両シリーズや、『ウルトラ怪獣モンスターファーム』の存在、その面白さを知ったフリークも少なくなかっただろう。年々盛り上がるゲーム実況の文化を媒介して、本来はコアなファンにしかリーチしにくいタイトルだったであろう『ウルトラ怪獣モンスターファーム』が、幅広いプレイヤーに訴求できた面があったのではないだろうか。そこには、同シリーズのわかりやすいゲーム性も影響したに違いない。

※ピックアップしたのは、短時間の動画ではなく、実況によるもの。年齢非公表の配信者を除く。

 元をたどれば、シリーズの主人公・ウルトラマンに倒される役割だったはずの怪獣。『ウルトラ怪獣モンスターファーム』では、原作において一面的にしか切り取られていなかった彼らの、愛くるしい姿・表情・仕草などを覗き見ることができる。そうしたシーンのなかには、筋金入りのシリーズファンがつい口元を緩めてしまうようなものもきっとあるのだろう。今回のコラボレーションに惹かれて同タイトルを手に取ったプレイヤーたちが怪獣と出会ったときの表情は、第1作『モンスターファーム』でCDからモンスターを誕生させたときのプレイヤーのそれと、同質のもののように感じられる。『モンスターファーム』の登場から25年。止まっていたシリーズの歴史が、いまようやく動き出した。

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