「保存」のアイコンに現在も生きる、フロッピーディスクの今昔

フロッピーディスクの今昔を振り返る

・フロッピーディスクの仲間たち

 世間で普及した「フロッピーディスク」は8インチ、5.25インチ、3.5インチの3種類だけだが、実際にはフロッピーに似た技術、あるいは互換性のあるメディアというのも多数開発されていた。それらについても少し見ていこう。

コンパクト・フロッピーディスク

 1981年に日立製作所、松下電器産業(現パナソニック)、日立マクセルが開発・販売した小型のフロッピーディスク。円盤のサイズは3インチ。サイズ・形状ともに3.5インチ型フロッピーディスクに似ているが、やや縦長のフォルムで、少し厚みがある。金属製シャッターは付いていない。容量は片面160KB、両面320KB。日立ベーシックマスターやシャープのX1Dといったパソコンに採用されたものの、IBM PCやMacintoshがソニー製の3.5インチを採用したこともあり、メジャーになれずに消えていった。

クイックディスク

 1984年にミツミ電気(ドライブ)と日立マクセル(メディア)が開発した2.8インチの磁気記録メディア。容量は片面64KB、両面128KB。外見は3.5フロッピーディスクと似ているが、データ記憶領域がトラックとセクタに分かれておらず、1本のトラックがレコードのように渦巻き上に配置されているため、シーケンシャルなアクセスしかできない。シャープがMZ-1500などに採用したほか、MIDI楽器でも広く採用。また、ケースを変更したものが任天堂のファミコン用ディスクシステムに採用された。

ビデオフロッピーディスク

 1981年にソニーから登場した世界初のアナログ形式の電子スチルビデオカメラ「マビカ」用に開発された2インチのフロッピーディスク型メディア(参考:https://www.sony.jp/rec-media/history/index02.html)。メディアとしては「マビパック」の名前が付いていた。1984年に電子スチルカメラ懇談会によってフォーマットが定められた。50本のトラックがあり、1トラックに1画像を記録するため、1枚で50枚の画像を記録できた。その後1987年にデジタルデータ記録に対応。容量は1MB。マビパック規格のメディアは各社から発売され、電子スチルカメラも1988年のソウル五輪の際には活躍した。データ仕様のディスクはソニーのワープロ「プロデュース」に採用されたが、その他に広まることはなく普及しなかった。

ベルヌーイディスク

 米アイオメガ社が1983年に開発した磁気ディスクで、最初は8インチディスク以上に巨大で頑丈なカートリッジに入っていた。このディスクは1500〜3000rpm(フロッピーディスクの5〜10倍程度)という超高速で回転し、流速が上がるほど圧力が下がるという「ベルヌーイの定理」の原理を使って理論上ヘッドクラッシュを起こさない、というのがコア技術だった(実際にはそこそこクラッシュを起こしていたが)。ベルヌーイディスクは第1世代で5〜20MB、第2世代ではサイズが5インチ台になり、最大230MBとハードディスク並みになる。しかし1990年台に入ってハードディスクの低価格・大容量化が進むと販売が厳しくなり、やがて後進のZIPディスクにその座を譲って消えることになる。

ZIPディスク

 ベルヌーイディスクの販売が低迷したアイオメガ社が1994年に発売した低価格・大容量の磁気ディスク。3.7インチのカートリッジに入ったメディアを使用する。見た目は3.5インチフロッピーディスクに似ているが、互換性はない。容量は当初100MBからスタートし、最終的に750MBまで登場した。ベルヌーイディスクと比べて構造がシンプルで低価格化が実現できたことに加え、パラレルポートやSCSIポートに接続できる点も評価され、米国ではPowerMac G3シリーズにZIPドライブを(フロッピーディスクと並んで)標準搭載したモデルがあったほど人気が出た。日本ではMOディスクがすでにDTP業界を中心に普及していたことや、メディアがあまり安くなかったことなどもあり、あまり普及しなかった。またZIP自体もCD-Rなどのより低価格なメディアとの競争に敗れ、さらに1998年に発覚した致命的な不具合である「死のクリック(Click of Death)現象」がとどめを刺して、2000年代前半には姿を消していくことになる。

Super Disk

 松下寿電子工業とイメーションなどが1996年に開発した、3.5インチ型フロッピーディスク互換メディア。当初は「LS-120」という名称だった。容量は120MBと240MBがあったが、従来の3.5インチフロッピーディスクもSuper Diskと同じ読み書き(240MB対応ドライブでは読み込みのみ)できる。また240MB対応ドライブでは3.5インチフロッピーディスクに32MB記録できるモードも利用可能だった。1998年に登場して世界的な大ヒットを収めたアップルのiMacはフロッピーディスクドライブを搭載していなかったため、USB接続のフロッピーディスクドライブが人気を集めたが、SuperDiskはその需要をカバーしつつ、大容量のバックアップメディアとしても使えることをアピール。iMacカラーのドライブも販売された。またパナソニックのデジタルカメラの一部にも採用され、当時3.5インチフロッピーディスクを使用したソニーの「デジタルマビカ」よりも大容量であり、高画質な写真をたくさん保存できる点をアピールしていた。iMacブームなどに乗って商業的にはまあまあの成功を収めたが、最終的にはMOやCD-R/RWに押されて姿を消した。

HiFD

 ソニーと富士写真フィルムが1997年に開発した、3.5インチ型フロッピーディスク互換メディア(参考:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/News/Press_Archive/199710/97-1014/)。両面200MBという大容量で、転送速度も競合規格より高かったが、実際の製品発売が1999年冬(米国での出荷。日本では2000年春)と遅くなってしまった。すでに市場ではSuper Diskが先行していたことに加えて、CD-R/RWが安価で大容量なメディアとして普及が進んできたこともあり、大きな成果を挙げることなく消滅した。

UHC

 フロッピーディスクドライブの製造大手だったミツミ電機が1996年に開発した、128MBの3.5インチ型フロッピーディスク互換メディア(参考:Internet Archive https://web.archive.org/web/20050319082621/http://www.mitsumi.co.jp/News/NewTechnology/128MFDD.html)。転送速度が他の互換メディアより高速というような特徴もあった。製品は1997年ごろ登場する予定だったが、計画は遅れ、結局全くと言っていいほど製品を見かけることもなく消えていった。

UHD144

 米Caleb社が1998年に開発した144MBの3.5インチ型フロッピーディスク互換メディア(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Caleb_UHD144)。製品名としては「it」の名前で販売された。対応ドライブが100ドル前後、メディアも7ドル前後と比較的安かったが、先行するライバルに対抗できず、ほとんど普及しないで消えていった。

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