SDカードに保存した写真やセーブデータが消失する恐れも 確認しておきたい"メモリ"の仕組み

スマートフォンの「メモリ」って何?

 テクノロジーの世界で使われる言葉は日々変化するもの。近頃よく聞くようになった言葉や、すでに浸透しているけれど、意外とわかっていなかったりする言葉が、実はたくさんある。

 本連載はこうした用語の解説記事だ。第 21回はスマートフォンの「メモリ」について。コンピュータ、スマートフォンなどの世界においてスペック比較時の指標として重視される数値だが、実際にこの「メモリ容量」という数値が本体の性能にどのような影響を与えるのかは知らない人も多いだろう。今回は特に、スマートフォンにおけるメモリの役割とその重要性について解説しよう。

メモリとは、スマートフォンが同時にたくさんの処理をするときに必要な"作業台"

 メモリとはコンピュータやスマートフォンがデータを一時的に記憶したり、処理する際の作業場所として用意されている装置で、たとえばテキストをコピーした際などにそれを記憶しておくため、あるいはアプリケーションの動作や描画など、ありとあらゆる処理に利用されている。スマートフォンが作業する机、あるいは作業台のような装置なのだ。

Pixabayより Photo by Obsahovka

 スマートフォンはデータを処理するに際し、一度メモリにデータを読み込む必要がある。メモリに読み込まれたデータには番地が与えられ、プロセッサ(スマートフォンの主要処理を行う頭脳のような装置)はその番地を元にデータを演算し、結果を出力する。この構造はパソコンでもスーパーコンピュータでも、電卓でも変わらない。もちろんスマートフォンでも同様だ。

 現在のコンピュータでは、メモリには「RAM」(Random Access Memory)と呼ばれる半導体チップが使用される。RAMではメモリ上の番地に、任意の順で(ランダムに)アクセスできる。これに対して順番にしかアクセスできないメモリを「SAM」(Sequential Access Memory)と呼ぶが、こうしたアクセスが必要な機器としてはカセットテープやビデオテープのように「早送り」「巻き戻し」といった「シーク動作」が必要なものが挙げられる。幸いにしてSAMはコンピュータ用の半導体チップとしては利用されていない。

 もう少し詳しく解説すると、現在主にコンピュータに使われているRAMは、厳密には「DRAM」(Dynamic RAM)と呼ばれる種類のチップで、データを電荷として蓄えており、一定時間以上電力が供給されないと、放電して内容が消えてしまう。これを防ぐために1秒間に何回もデータを読み出し→再書き込み(リフレッシュ)する必要があるため、「Dynamic」(動的)なメモリとして分類されている。DRAMの対義語が「SRAM」(Static RAM)で、こちらは文字通り「Static」(静的)なメモリだ。リフレッシュが必要なく、DRAMと比べて高速だが、コストが高いという特徴がある。一般にSRAMはプロセッサのキャッシュメモリのような、高速だが容量が小さめの場所に、DRAMはコンピュータのメインメモリに使われる。

Wikipediaより Photo by PantheraLeo1359531(CC-BY4.0)

 RAMがメインメモリに使われるということは、その値が大きいほど作業用のスペースが大きい=大きなデータを読み込めるということである。パソコンやスマートフォンを選ぶ際にメモリ容量を見るのはこのためだ。

 一般に多くの作業を同時にこなしたり、高度な処理をする際にはより多くのメモリを搭載することで、快適な作業環境を得ることができる。とはいえ、RAMは比較的高価なパーツなので、無駄に多く積んでもコストパフォーマンスが悪くなる。必要な量を見極めることが肝心だ。

 最新のパソコンが最小限動作する(ウェブブラウザやOfficeアプリが動作する)ためには4GB、快適に使うには8〜16GB程度のメモリが必要とされているる(ただしビデオ編集や3D CGなど、扱うデータが大きい場合は、数十GBでも足りないケースがある)。

 スマートフォンの場合、パソコンほどメモリを消費するわけではないが、それでも快適な動作のためには、最小でも2GB程度は必要だ。搭載RAMが多ければ一つの作業に対してより多くのメモリを割り当てられるが、大量のメモリを割り当てたからと言ってプロセッサの能力を越えるほど高速化するわけではない。あくまでボトルネックが少なくなるというのが正確だ。

 現在、ハイエンドのAndroid端末では18GB(ROG Phone 5 Ultimate)というのが最大容量だが、これはゲーミング端末として最高性能を追求するため。その他のハイエンド端末では12GB、高級モデルでは8GB程度が主流となっている。ローエンドモデルでも4GB程度が増えてきているが、複数のアプリを切り替えてスマートフォンを使うならこのくらいの容量が最低ラインと言ったところだろう。2GBの端末では画面回転やアプリの切り替えなどでややストレスを感じる人も出てくるだろう(この辺りはプロセッサ自体の性能もあるが)。

18GBもの大容量メモリを搭載するASUS ROG Phone 5 Ultimate

 iOSの場合、アプリの作りなどがAndroidと異なるため、一概に比較は難しいが、全般的にAndroidよりもメモリ搭載量は少ない。最新のiPhone 13 Pro MAXでも6GB止まりだが、Androidのハイエンド端末と比べても快適さにはほとんど差はない。この辺りはプロセッサ(SoC)も含めてハードウェアとOSを自社開発しているAppleの強みと言えるだろう。複数アプリを同時作動させる機会が多く、また画面の解像度も高いiPad Proでは最大16GB(ストレージ容量による)搭載しているモデルがあるが、これはiPad OS自体がパソコンOS的な進化を続けており、また扱うデータが大きくなり続けていることも影響しているだろう。いずれにしても選択肢らしい選択肢はないが、上位モデルほどメモリ搭載量も大きいことは覚えておこう。

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